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2022.11.12 - 地域CL:栃木C×延岡

introduction

昨日から開幕した全国地域サッカーチャンピオンズリーグ。1次ラウンドの第1日はBグループをチェックしに新潟市陸上競技場へ急遽日帰りで行ってきたが、本日・第2日はAグループを観るため、群馬県は前橋へ向かうことにした。当初は本日のAグループ観戦は予定していなかったのだが、第1日の結果が少し予想外のものとなり急に興味が湧いてきたことと、家庭の都合がつけられたことが重なっての僥倖である。

大宮から連日の利用となる新幹線で高崎に向かい、両毛線に乗り換えて前橋へ。もう少し試合開始が遅ければ在来線で前橋まで行くことも検討しただろうが、何しろ最近の生活は完全にタイムパフォーマンス優先となってしまっているため、大宮〜高崎間くらいであれば問答無用で新幹線をチョイスである。前橋からは路線バスを下小出で下車し、徒歩で敷島公園へ。陸上競技場(正田醤油スタジアム群馬)にはそこそこの頻度で訪問しているが、球技場(アースケア敷島サッカー・ラグビー場)での観戦はかなり久しぶり。第1試合は、関東1部王者の栃木シティFCと、全社枠での出場となる九州リーグのFC延岡AGATAの対戦だ。

栃木はこの大会は3年連続での出場。関東ではほぼ盤石といって差し支えない成績で連覇を続けているが、この大会ではなかなか勝てておらず、栃木ウーヴァFC時代以来となるJFL復帰からは遠ざかっている。今季も地域リーグとは思えない強力な補強で戦力を維持し、関東1部を制覇。本日対戦する延岡に、FC刈谷とBTOPサンクくりやまを加えたこの1次ラウンドの顔ぶれの中でも一歩抜きん出ているのではないかというのが戦前の下馬評だった。しかし昨日の第1日では、戦力的に劣ると見られていたFC刈谷に先制を許し、終盤に追いついてどうにかドローという結果。残り2試合は必勝体制で臨まなければならなくなった。

一方、今回が大会初出場となる延岡は、大卒の若手選手を主体とした新進気鋭のチーム。メンバー表を見て知っている名前は畏れながら皆無だが、連戦となるこの大会では多少無理の効く若いチームのほうが優位になるケースも往々にして有り得る。昨日の第1日でも北海道リーグ王者のBTOPサンクくりやまを2-1で破っており、チームに勢いがありそうだ。

1st half

下小出までの路線バスが少し遅延した関係で、現地着は前半5分頃。少し出遅れたが、この時点ではまだスコアは0-0だ。そして、この時点で既に試合は圧倒的な栃木ペースとなっている。席に腰を落ち着けるやいなや、左サイドからのクロスに3トップの頂点を張る戸島が頭で合わせるが、これはGKの正面。8分には左CKにファーサイドの内田が頭で折り返すが、中で誰にも合わず。12分の吉田のフィニッシュも枠を捉えられない。自分が着席して10分と少しの間に、1点もののチャンスが3度もあった。

守勢に回る延岡は前線で2トップが待つが、ここにボールがなかなか収められず、クリアされたボールは8割がた栃木が回収している状況。これでは一方的な展開にならざるを得ない。栃木は戸島のトップを頂点に、右に吉田、左に岡庭という強力なアタッカーを揃えているだけでなく、4-1-2-3のインサイドにはドリブル突破が持ち味の表原がいて、ドリブルでゴリゴリと中央をこじ開けてくる。だがしかし、延岡の守備が堅い。29分には右サイドを抜け出した戸島のハーフスペースからの折り返しに中央で完全フリーの表原が頭で合わせるが、これもGKの田渕が足に当てて掻き出すスーパーセーブ。お手本のようなフィニッシュだったが、これも決まらない。

その後も栃木の攻勢が続き、33分の表原のシュートなど度重なるチャンスを得るが、どれもほんの僅かにゴールマウスを捉えられずに外れていく。いい加減1点くらい決まっていてもおかしくない流れだが、ここまで決まらないとさすがに気の毒にすら思えてくるくらいだ。しかし、それだけ延岡の選手たちが最後の局面で身体を張っているともいえるだろう。

結局、前半は0-0のまま終了。栃木のワンサイドゲームだったが、それだけに延岡の粘りが際立つ前半だった。ピッチを引き上げる延岡イレブンの中には溌剌とした笑顔を浮かべる選手もおり、守勢なりに手応えのある内容だったことを窺わせる。栃木はこのまま終盤まで0-0の状況が続くと一発が怖くなってくる展開だ。

2nd half

栃木はHT明けから2枚替え。最前線には戸島に代わって曺永哲が入る。一昨年の地域CLではFCティアモ枚方のJFL昇格に大きく貢献した、元韓国代表のストライカーだ。後半は栃木ボールでのキックオフとなるが、この最初のプレイで栃木がまたも仕掛ける。表原のドリブルでの持ち運びからゴール前へ攻め込み、曺永哲のシュートは延岡ゴールのクロスバーを直撃。跳ね返りのこぼれ球を押し込もうとするがこれも決まらない。

ここまで防戦一方だった延岡だが、遂にチャンスが巡ってくる。57分、こぼれ球を回収した田中が右サイドをドリブルで駆け上がる。クロスをアーリー気味に中へ入れると、ニアで伊集院が潰れ、中央に詰めてきた天川が完全フリーの状態。しかしシュートは上手くミートしきれず枠外へ。延岡の選手たちがピッチに倒れ込む。これは決めたいチャンスだった。

そして、延岡が先制点の絶好のチャンスを逃した直後にエアポケットが待っていた。59分、右サイドに開いた鈴木のクロスにゴール正面で待っていた曺永哲がヘディングシュート。シュート自体はそれほど勢いのあるものではなかったが、GKの田渕が見送ったシュートは左ポストに跳ね返りながらもゴールイン。これまでの苦戦が嘘のような実にあっさりとした得点だが、とにもかくにも栃木にとっては待望の先制点となり1-0。喜びを爆発させた栃木の選手たちによる歓喜の輪ができる。

リードを奪って勢いづく栃木は、更にチャンスを掴む。65分、ゴール正面でボールを持った鈴木がミドルシュートを放つと、これがペナルティエリア内で守っていた延岡の深澤の手に当たり、主審はPKの判定。延岡にとっては不運な判定だが、栃木の勢いに飲まれた感も否めない。PKを蹴った表原のシュートは一度はGKの田渕がコースを読み切って弾くものの、ボールが正面にこぼれたところを表原がすかさず押し込み2-0。短時間で栃木が一気にリードを2点に広げる。

この時間帯まで無失点で耐えながらも、一気に2失点を許してしまった延岡としては、このまま守備がガタガタと崩れていってもおかしくないような流れだが、ここで彼らは諦めない。DFの深澤を前線に上げ、パワープレイ要員として残す。延岡が前に出てきたこともあって栃木には何度もカウンターからのシュートチャンスが訪れるが、撃てども撃てどもシュートコースに延岡の守備のブロックが入る。延岡の守備が実にしぶとい。

試合終盤の86分には、途中出場した大坪の左サイドの縦の突破から、中で待つ深澤のスルーパスに大坪が抜け出してGKと1vs1の場面を作るものの、渾身シュートはGKの原田がキャッチ。この試合2度目となる延岡の決定機でもゴールを割らせなかった。結局これが延岡にとって最後のチャンスとなり、2-0のまま試合終了。栃木が2日目で大会初勝利を挙げ、勝点を「4」に伸ばしている。

impressions

運に見放されながらも我慢強く攻め続けた栃木が、勝利を手繰り寄せた試合だった。前半から一方的に攻撃を仕掛けながら、詰めの部分が上手く行かずにゴールだけが入らない展開。こういう展開においては、後半に相手にワンチャンスを決められてしまうことが良くあり、地域CLでは「よく見られる光景」であるが、その難しい状況で勝ちきったのは自力がある証拠といえるだろう。

栃木の攻撃力は端的にいって強かった。両翼の吉田と岡庭は、サイドで縦に仕掛けるだけでなくカットインで中に対して圧力をかけていたし、表原のドリブル突破はこのカテゴリではかなり凶悪で、複数人で対応しない限り止めるのはほぼ不可能なレベル。3トップの頂点に構える戸島は体躯の割にサイドに流れるプレイが多いため、迫力という点では個人的にどうかなと思うが、その分中に割っていく選手が多いため、バランスという点ではこれで良いのかもしれない。後半から曺永哲を起用するという、地域リーグとしては贅沢すぎるベンチワークも勝利を呼び込む重要な一手だった。

守備に関してはほぼ盤石で、延岡の攻撃をほぼパーフェクトに抑えきった。特にディフェンスリーダーの内田の存在感は大きく、対人の守備ではほぼ負けなしだったのではないか。守備が集中を切らしやすい展開の中でもきっちり無失点で締めることができたのは、明日の試合に向けて収穫と言えるだろう。

延岡は、敗れはしたものの見ごたえのある試合を見せてくれた。前半の早い時間帯から栃木の猛攻に晒され、幾度となく決定機を作られたが、ハーフタイムまでは無失点で耐えた。シュートが僅かに枠を外れるなどの運が味方した部分もあったが、シュートを撃たれるその瞬間までボールにアタックする意識が栃木の選手のシュート精度に影響した部分もあったと思う。また、GKの田渕のセービングも素晴らしかった。

後半も立ち上がりの栃木の猛攻を耐え、その後でチャンスを作る時間帯を作ったが、絶好機で決めきれず、逆にその後の時間帯で鈴木に安易にクロスを入れさせてしまったのが先制点に繋がった。立て続けにPKを許してしまったのも痛かった。バタバタしてしまうところは課題なのかもしれない。しかし、この立て続けの失点で集中を切らしてしまうことなく、その後もシュートコースを塞ぐ粘り強い守備を続け、90分間最後まで戦い抜いたのは感服した。

この勝利をもって栃木は暫定ながらグループ首位に立ち、これから第2試合を戦うFC刈谷にプレッシャーをかけることに成功。明日の第3日で勝てば勝点は7まで伸びることになり、決勝ラウンド進出は濃厚となる。敗れた延岡も、まだ決勝ラウンド進出の可能性がなくなったわけではない。グループAは最終日まで見どころ満載となりそうだ。

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