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(サッカー)2022.11.23_地域CL_沖縄SV×ブリオベッカ浦安@熊谷陸

introduction

全国の地域リーグ優勝チームが集い、JFL昇格を争う「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ」は、1次ラウンドを勝ち抜いた4チームによる決勝ラウンドが11/23からスタートする。この決勝ラウンドで1回の総当たり戦を行い、上位2チームが、最終的に来季のJFL昇格の権利を手にするというレギュレーションだ。今年も決勝ラウンドは中1日を空けながら23,25,27日の3日間で消化する日程が組まれているが、自分は唯一都合のつく23日の第1日を観戦することとした。

決勝ラウンドの舞台は、埼玉県の熊谷スポーツ文化公園陸上競技場。決勝ラウンドで熊谷が使用されるのは、2007年大会以来で実に15年ぶりだ。ちなみにその2007年大会でJFL昇格を果たしたのは、ファジアーノ岡山・ニューウェーブ北九州(→ギラヴァンツ北九州)・FC Mi-OびわこKusatsu(→MIOびわこ滋賀)の3チーム。今は三者三様の運命を辿っているが、こうした大会の歴史を少し紐解いて振り返るだけでも面白い。

この競技場は熊谷駅から少々離れており、Jリーグ開催時にはシャトルバスがなかなか来ないなどの課題を抱える曰くつきの会場だ。とはいえ、今回はあくまで地域CL。自家用車での来場も可能であるし、路線バスで特に問題は無いだろう―。電車で熊谷駅到着後はそんな感じに高を括り、駅構内で悠々と朝食をとった。しかしいざ現地へ向かおうとすると、バス乗り場は部活のジャージに身を包んだ高校生たちが列をなしており、ちょっとしたカオスの様相だ。おそらく同じ公園内で別の競技大会でもあるのだろう。とても通常運行のバス1台に乗り切れる人数ではなく、これでは第1試合のキックオフに間に合うかは極めて怪しい。結局、即断即決でタクシーに切り替えた。

本日の天気は生憎の雨で、気温もかなり低い。最高気温が10℃前後までしか上がらないという予報も出ていた中、タクシーに揺られて会場到着。2,000円程度料金は掛かったが、防寒グッズで手荷物も少し多かったし、結果的にはタクシーを選択して正解であった。熊谷はメインスタンドの屋根が客席をほぼ最前列までカバーしており、多少の荒天でも雨に濡れる心配が全く無いのがありがたい。メインスタンドの売店も営業しており、意外すぎるほどホスピタリティは良かった。

第1試合はBグループ首位の沖縄SVと、Cグループ首位のブリオベッカ浦安の対戦。沖縄SVは、新潟での1次ラウンドを2勝1分で通過。初戦のアルティスタ浅間との試合を現地で観戦し、「これは強いな」と思っていたが、案の定の勝ち残りである。一方のブリオベッカ浦安は今季の関東1部リーグで6位という残念な成績であったが、10月に鹿児島で行われた全国社会人サッカー選手権大会で勝ち残り、全社枠での出場。Cグループでは2勝同士で迎えた第3日の福山シティとの一戦を1-0で制し、見事な3戦全勝で決勝ラウンド進出を決めている。「実力の沖縄」か、「勢いの浦安」かという構図の一戦だ。

1st half

沖縄のスタート時の並びは変則の3-4-2-1。新潟での1次ラウンドで観たときは4-2-3-1だったが、右サイドの一木が山田とほぼ2トップに近い立ち位置をとり、左サイドの選手(今日で言えば戸高)が攻め上がるレーンを空けておく非対称のシステムである点は、前回観戦時とほぼ変わらない。

立ち上がりに沖縄は開始1分でいきなり左サイドの戸高が裏のスペースを取り、FKのチャンスを得る場面はあったものの、それ以降はなかなかチャンスを得ることができない。浦安の守備の帰陣が早いためだ。スペースを埋める前にボールを奪われたらとにかく早い段階でファウルをしてでも潰すという徹底ぶりで、浦安がしっかり準備してきたことがよく窺える。

一方の浦安の並びは中盤がボックス型の4-4-2。2トップは二瓶翼と林容平のコンビである。二瓶はFC東京U-18出身だし、林もかつてFC東京に所属していたことがあるので、個人的には胸の熱くなる並びだ。守備の対応は前述の通りで、攻撃では手数を掛けずに2トップへ収めるか、あるいは中盤の峯を経由した組み立てが中心だ。沖縄も守備が手堅く、なかなかチャンスの訪れない浦安だが、17分に中盤での橋本のインターセプトから林を経由して冨樫がフィニッシュを狙うなど、カウンターの鋭さを覗かせる。

30分、浦安は右CKを林が頭で合わせ、GK・花田がこぼしたところを詰めようとするがファウル。得点には至らないが、気象条件を考えればこういったデザインは有効そうだ。一方の沖縄も時折サイドの深いスペースにボールを入れてクロスからチャンスを窺うが、決定機は生まれないまま前半終了。どちらかといえば沖縄が攻める場面が多かったが、全体的には両者共に堅実な守備を見せた前半だった。

2nd half

後半は浦安が攻勢。立ち上がりから二瓶が右サイドに張って縦に仕掛ける場面が何度かあり、ここを取り掛かりにしようとしているのかなと思いきや、その二瓶は59分で交代。すると二瓶に代わって入った村上が存在感を見せる。ゴール前に張ってのポストプレイが良く収まり、それまでポストプレイに関しては林だけをケアしていれば良かった沖縄の守備は対応に手を焼くようになる。

66分、沖縄は2列目の高橋と一木を下げ、髙原と儀保を投入。経験のある髙原を組み込んだ3人のアタッカー陣で攻撃のてこ入れを図った形だが、その前線にボールが入らない。かたや浦安は69分に村上のポストプレイから加藤が強烈なシュート。これは枠の上に大きく外れるが、攻撃の意図どおりの攻撃ができている。

74分、浦安は再びアタッキングゾーンにボールを入れて林が収め、左サイドからサポートした平野とのパス交換からフィニッシュに持ち込むが、これは僅かに枠の左。崩し切ってはいないものの、ほぼ狙った形でのフィニッシュだっただけに惜しまれる逸機だ。

そしてこの74分のチャンスが、試合の盛り上がりのピークだった。この後は沖縄も守備にやや落ち着きを取り戻し、反撃を窺う姿勢こそ見せるが、浦安の守備も依然として安定さを保っており、崩れる気配がない。90分には浦安が再び攻め込み、伊川のワンタイミング早い右からの折り返しにゴール前が混戦となるが、沖縄もシュートまで持ちこませなかった。

結局、両者決定機の生まれないままタイムアップのホイッスル。浦安の一部の選手が膝をつき、悔しそうなリアクションを見せていたのが、この試合の内容を物語っていた。両者共にリスクを最小限にくいとどめながらの試合運びとなった試合は、0-0のスコアレスドローで終わっている。

impressions

決勝ラウンドの初戦らしい、非常に緊張感の高い試合だった。原則として1位通過が求められる1次ラウンドとは異なり、決勝ラウンドは2位でもJFL昇格できるため、初戦は「勝つ」よりも「負けない」に比重を置いたプランを採用することは充分に考えられる。そして、そのことを両チームが理解し、保守的な90分間をしっかりと戦いきったというのが総合的な印象だ。これといった見せ場がほとんど無かったため消化不良の感は否めないが、まずは両チームの守備を褒めるべき試合なのだと思う。

沖縄はチャンスといえそうな形をほとんど作らせてもらえないまま90分を過ごした。安在がベンチスタートという中で攻撃の形をどれだけ作れるかが個人的な注目ポイントだったが、相手のカウンターにも警戒しなければならない中、右サイドの一木だけでは崩しきれなかった印象がある。守備に関しては後半に浦安のポストプレイ中心の攻撃に少し手を焼いた感があるが、最後は人数をかけてゴール前を固め、無失点で凌ぐことに成功。悪くない結果だったように思う。

上手く試合を運んでいたように見えたのは浦安の方だった。前半から攻守の切り替えの速さを見せ、特に守備ではピンチの芽を早めに摘む意識が見て取れた。攻撃ではシンプルに前線に収める感じで、あまり成功率が高いとはいえないものだったが、後半に村上を投入してポストプレイを強化してきたのを見るに、おそらく前半はスコアレス狙いのプランを立てていたのではと推測する。だとしたら、浦安にとって目論見通りの試合展開だったのではないか。終盤は何度かチャンスを作り、ゴールまであと一歩に迫りながら決めきれなかったので悔しさは残るかもしれないが、負けるよりはずっと良い。浦安にとっても、次の試合に繋がる悪くない結果だったと見る。

決勝ラウンド最初のカードは痛み分けとなり、両チーム共に理想的なスタートとはならなかったが、この結果は想定の範囲内という感じに淡々と受け入れているように見えた。明後日に行われる第2日の試合では、沖縄は栃木シティFC、浦安はFC刈谷とそれぞれ対戦する。この後に行われる第2試合の結果によって、次戦の戦い方も変わってくるはずだ。

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