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#30【インターステラー】 前編 編集後記
どうも、毎日映画トリビアです。
映画トーク系ポッドキャスト番組「深めるシネマ」のクリストファー・ノーラン監督のSF映画「インターステラー」について語る前編、編集後記です。
今回はお便りで「運命論と自由意志に関する映画について語ってほしい」と頂いたリクエストに答える形で決定した課題作品です。(お便りを頂いた砂糖さん、ありがとうございます)
今回のエピソードは、そろばんさんのざっくりな映画の感想と僕による監督クリストファー・ノーランの作風の解説や作品説明がメインとなっていますが、運命論と自由意志に関しては次週公開の後編でガッツリ議論してます。
それでは、決して花粉症ではない僕による個人的な補足と言い訳、行ってみましょう。
とうもろこし栽培の誤解と真相
クリストファー・ノーラン監督ファンの間ではわりと有名な「CGを使うのが嫌すぎてとうもろこし畑を一から栽培」というトリビア。
今回のエピソード中にも触れましたが、このトリビア、日本では少し誤解されて伝わってることが多く、重要な部分が抜けて広まっているのをよく目にするのでここで補足。(色々と神格化されがちなノーラン作品にありがち)
実際に監督は、映画の中に登場する主人公クーパーの農場のために350+500エーカーのとうもろこし畑をカナダ西部にあるアルバータ州の都市カルガリー郊外に栽培しています。
この理由は日本のインターネット上で広まっている、単に「CGでとうもろこし畑を描きたくない」ということではなく、監督の「山脈の近くにとうもろこし畑がほしいけど、CGで山脈を描きたくない」という理由によるもの。
本来とうもろこし畑は山脈のない平地に作られるものらしく(山からの吹き下ろしの風によってとうもろこしが死んでしまうとか)、深刻な食糧危機に直面した人類は、ついにそんな過酷な場所でさえもとうもろこしを植えなくてはならなくなった、という危機的状況を表現するために、どうしても「山ととうもろこし畑」が必要と考えた監督。(そんな不自然さ、一体誰が気づくの!)
そんなノーラン監督は、ちょうど自身が原案と製作も務めた2013年のスーパーマン映画「マン・オブ・スティール」の撮影時に、監督ザック・スナイダーが100エーカーほどのとうもろこし畑(地球に到着したクラーク・ケントが幼少期を過ごす農場)を栽培した事例を思い出し、スナイダー監督に「あれ、どうやったの?」と相談。
さらにこのことを相談したスタジオの担当部署や実際のとうもろこし農家から「いや、山の近くは期待通りの大きく育ったとうもろこし畑はむりっすよ!」と止められながらも、「良いからやるんだ!」と巨大なとうもろこし畑を作ったノーラン。
この「とうもろこしを植える」という、映画作りとはあんまり関係なさそうな費用にスタジオは約10万ドルも費やしたそうですが、最終的にはこのとうもろこし畑は専門家も驚くほどよく育ち、きちんと収穫したものを売ったことにより、ある計算では少なく見積もっても約16万2千ドルもの金額を稼いだとされています。
ちなみに劇中で、このとうもろこし畑の一部はマーフによって火が点けられますが、実は水分の多いとうもろこしの緑色の葉や茎はどんなことをしても燃えないことで有名なんだとか。
脚本上のこの「畑を燃やすシーン」を確認した専門スタッフは、すぐに監督にこのことを指摘したそうですが、帰ってきた返答は「俺の映画では燃える」というものだったらしく、スタッフは大量のプロパンガスや軽油を投入し、なんとか燃やす(というか燃やしているように見せる)という方法で乗り切ったそうです。
「山の近くにあるとうもろこし畑という異様な光景」という現地味にはこだわるのに、「とうもろこしは映画だからなんとかして燃やす」というダブルスタンダードな感じが、リアルに対する異常なこだわりを持ちながらも興味ないところはあっさりと「映画だから」と諦められるノーラン監督らしいエピソードです。やっぱりジャイアンなのでは?
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