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お楽しみの最高潮は後編へと続く 『キングダム 運命の炎』

7月28日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 蛇甘平原での戦いで初陣をかざった信は、王騎将軍のもとでの修行を終えて帰還。だが今度は秦に、趙の大軍が迫る。中核都市の馬陽を落とされれば、秦中心部に敵が迫ることになる。何としても馬陽を守らねばならない。

 他の戦いで軍の指揮官を欠いている秦は、右丞相の呂不韋に軍の全権を委ねようとするが、そこに長く現役を退いていた王騎が戻ってくる。王騎は王の政に中華統一の決意を確認すると、謹んで全軍総指揮官の任を受けるのだった。

 かくして伝説の大将軍・王騎が率いる秦軍と、勢いに乗る趙の大軍が馬陽郊外で激突する。信は前回の武勲を評価されて百人隊長に昇進。他の隊に組み込まれない、王騎直属の遊撃隊として出撃の機会を待つ。

 だが戦端が開かれた後も、信の百人対には出撃の命令が下らない。目の前で繰り広げられる戦いを観ているしかない信たちだが、そこに現れた王騎自らが、信にある任務を命じるのだった。「飛信隊」の戦いが始まる。

■感想・レビュー

 2006年から「ヤングジャンプ」で連載されている人気コミック「キングダム」の実写版第3弾。実写化第1弾の『キングダム』(2019)、続編『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022)までは1作ごとに物語に区切りがあり、ストーリーが完結する連作だったが、今回の映画は物語が戦いの途中で終わってしまう。原作の「馬陽編」を、おそらくは前後編に分けて映画化したのだろう。

 2時間を超える大作だが、前半1時間ぐらいは、趙の人質だった秦王・嬴政の少年時代のエピソードが描かれる。ひょっとすると原作読者には愛着のあるエピソードなのかもしれないが、目の前に趙の大軍が迫る国家存亡の危機というサスペンスが、ここで勢いを削がれてしまうと思う。

 主人公・信の修業時代のエピソードを丸ごと割愛してしまったのに、このエピソードに長い時間をかける意味はよくわからない。物語上の必然、キャラクター造形上の必然があったのだとしても、ここはもう少しコンパクトにまとめて良かったと思うのだが……。

 だが序盤から前半にかけてのゆったりしたペースが、物語の舞台が戦場に移った中盤以降のスピード感を強調しているのだと好意的に解釈することもできる。それまで「伝説の大将軍」としての外部評価やカリスマ性だけで描写されてきた王騎将軍が、ついに自ら動き始めるのだから目が離せない。演じている大沢たかおも、副官・騰を演じる要潤も最高だ。今回の映画では山﨑賢人が演じる信の大活躍も見られるが、物語の主役は王騎将軍なのだ。

 映画は秦と趙の大軍が激突する戦いの序盤でいったん幕を引き、続く第二幕で活躍するであろう幾人かのキャラクターをちらちら見せるだけにとどめる。「怪しい者ではありません」の小栗旬がいきなり怪しいし、最後に登場する吉川晃司がほとんど仮面ライダースカルばりの凶悪凶暴な強さを見せる。

 おそらく続編の公開は来年だろうが、今から楽しみでならない。

TOHOシネマズ日比谷(スクリーン4/IMAX)にて 
配給:東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 
2023年|2時間10分|日本|カラー 
公式HP: https://kingdom-the-movie.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt25406052/

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