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映画瓦版|インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

ジョーンズ教授は本作で定年退職

6月30日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 第二次大戦末期。ドイツ軍が略奪したロンギヌスの槍を奪い取るためドイツ軍基地に乗り込んだインディは、ドイツ軍に見とがめられて身柄拘束。辛くも窮地を脱出したものの、槍は真っ赤な偽物。だがかわりに手に入れたのは、かのアルキメデスが作ったという「アンティキティラのダイヤル」の、二分割された一方の断片だった。

 それから四半世紀。アポロ11号乗組員の凱旋パレードで街が沸き立つ中、インディ・ジョーンズは大学の考古学教授を定年退職。そこに現れたのは、かつてアンティキティラを巡る冒険で共に死線をくぐり抜けた親友バジル・ショウの娘ヘレナだった。

 彼女に乞われるまま、インディは大学収蔵庫に保管されているアンティキティラを見せるが、彼女はそれを奪って逃走。彼女を追う謎の男たちは大学職員たちを次々に射殺し、インディは殺人事件の容疑者になってしまった。

 インディはアンティキティラの謎を解くため、ヘレナの後を追った。

■感想・レビュー

 前作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)以来15年ぶりとなるシリーズ第5作。前作はラストで主人公の座がインディから息子のマットにバトンタッチされる素振りを見せたが、息子を演じていたシャイア・ラブーフの素行不良が祟ったためか、マットはシリーズから早々に離脱してしまった。

 結果として映画は過去の『インディ・ジョーンズ』シリーズをなぞる形になったのだが、正直僕には退屈な映画だった。どの場面も過去のシリーズの焼き直しに見えてしまうし、実際にそうなのだ。このシリーズは人気があったので数々の模倣作品を生み出しているが、シリーズ5作目になって本家シリーズが過去の自作を模倣するようになっている。

 もちろんそれはそれで楽しいのだ。白髪頭のハリソン・フォードがフェドーラハットをかぶって鞭を振り回してくれるだけで、シリーズのファンは大喜びだろう。でもそこに新鮮な驚きはない。新しいワクワクもドキドキもない。完全な予定調和の世界だ。

 そもそもこのシリーズは、1980年代のVFX技術を使って、1930年代を舞台にした、1930年代風の冒険活劇映画を作るのが基本コンセプトだった。だから1作目は1936年、2作目は1935年、3作目は1938年が舞台になっている。そうしないと、映画の演出スタイルと齟齬が生まれるからだ。1950年代を舞台にした4作目がギクシャクしたのはそのせいだろう。

 今回の映画は1969年が舞台だ。にもかかわらず、映画の演出スタイルは過去のシリーズと同じ形式を踏襲している。つまり1930年代の冒険活劇映画の形式で、米ソ冷戦や宇宙開発競争、黒人公民権運動やヒッピームーブメント、反戦運動などの、混沌とした1960年代末のアメリカを描こうとするのだ。これはもうギクシャクどころではない。はっきり言って時代錯誤だ。

 敵役がナチスというのも、ノスタルジーが過ぎるだろ……。

(原題:Indiana Jones and the Dial of Destiny)

ユナイテッド・シネマ豊洲(スクリーン10)にて
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
2023年|2時間34分|アメリカ|カラー
公式HP: https://www.disney.co.jp/movie/indianajones-dial
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt1462764/

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