一人称単数
8作からなる短編小説集。雑誌『文學界』に掲載時に7作は読んでいたので、書き下ろしの「一人称単数」について思ったことを。
新作短編集の中で、もっとも印象が深いのは「ウィズ・ザ・ビートルズ With The Beatles」だと多くの読者が挙げると思います。村上春樹の短編らしいツイストが効いてるからです。
このレコードジャケットから導き出される物語の不思議さを深い真理へと導く筆致はさすがだと思います。
ところが、「一人称単数」は、今まで読んだどの短編にも似ていなくて、物語も閉じられてはいません。今の時代に上梓されるわけですから、何らかのメッセージが込められていることは間違いないです。SNSの時代における過去の「一人称単数」からのしっぺ返しというのが今のところの私なりの理解です。ここへきて村上春樹がこのストーリーを出して来たのは、来るべき長編小説への布石なのではと思います。
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