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今日、聴きたいジャズ(#1)

こんにちは。18歳の時に、大学のジャズ研でテナーサックスに触れて、どっぷりジャズにハマり、32歳の今日まで、ほぼ毎日ジャズを聴き続けているエッチョと申します。

それだけ長くジャズを聴いてきたからこそ、「ジャズってなんか難しい?」と感じている人にも、ジャズの良さ、美しさ、奥深さに親しんでもらいたいと、これまでいくつかの記事を更新してきました。

基本的に一つの記事でおすすめの曲を5曲ずつ紹介するというスタイルでやってきたのですが、これからもう少し更新頻度を上げて、長く続けていきたいという思いがあり、今回から「今日、聴きたいジャズ」シリーズということで、私から今日聴きたい1曲をご紹介させていただきます。


今日、聴きたい1曲
「Stan Getz / On A Slow Boat To China」

さて、記念すべき第1回目に紹介する曲は、テナーサックス奏者スタンゲッツによる「On A Slow Boat To China」です。ここからの解説は、ぜひ上の動画を再生しながら、読んでみてください。

スタンゲッツは「ダブルリップ奏法」と呼ばれる独特の方法により、暖かく、ソフトで、洗練された音色を操る天才プレーヤーです。彼の演奏は常にウィットに富んでいて、同じ楽器の奏者からも憧れの存在でした。

この動画は、彼が亡くなる約1年前、1990年のライブ映像であり、この頃、すでに膵臓がんを患っていたと言われています。

元々、ゲッツのスタイルは「クールジャズ」と呼ばれ、クールでリラックスした演奏だったのですが、この動画を含め、晩年期の演奏はエネルギーに溢れています。もしかしたら、自分の死期が近いことを悟っていた彼の心情が演奏スタイルを変えさせたのかもしれません。通常、最盛期にどれだけ素晴らしい演奏をしていたプレーヤーでも、老いには勝てず、技術は衰えていくものですが、ゲッツは、完全にその例外として圧巻の演奏を聴かせます。

ただし、私がこの動画で一番感動したのは、実は、ゲッツに引き続きソロをとるピアノの「ケニーバロン」の演奏です。膵臓がんを患っていたゲッツは、ツアー中いつ倒れてもおかしくない状態であり、演奏中の彼の休憩時間を確保するために、ピアノが長めのソロをとる必要があり、かつほとんどゲッツ目当てで集まっている客を満足させなければならないという、とんでもないプレッシャーの中の演奏でした。

今やすっかりジャズレジェンドとなったケニーバロンですが、まだ若き日にそのような状況下で披露したプレイは、まさに圧巻の出来でした。
そのアドリブが良かったかどうか、絶対的な評価はできないものですが、ピアノソロが終わった後の拍手を聴けば、この日の観客がいかに彼のプレイに感動したか伝わってきます。私ももう何回聴いたか分かりませんが、いまだにこのソロを聴いたあとは「イエイ!」と声を上げてしまいますね。

曲名を訳すると「中国行きの小舟の上で」。
昨日の北京オリンピックの開会式が素晴らしく、今日は「China」が含まれるこの曲を選んでみました。ジャズを聴くことでみなさんの毎日に少しでも彩りを加えられたら嬉しいです。

それでは、また次回。

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