見出し画像

#5 there構文(存在構文)と情報構造

前回は、第一文型[#4(第一文型)]について解説いたしました。
今回は、さらに第一文型の中でもよく使われる”there構文”に焦点を当てたいと思います。

さて、まず "there構文”が第一文型ということ自体に驚いたのでは、ないでしょうか?
(There構文を知らない方もイチから解説するので安心してください!)

これを第一文型って知らなかったな〜という方!
あなたは「文型」について誤った認識をしているか、
「文型」について全く分かっていない・知らないのどれかだと断言できます。

文型の学習・英語の文のそのものの理解に大いに役立つと思います。
ぜひ、最後まで頑張ってついてきてください。


there構文とは?

there構文は、there is / are 〜 の形で「〜がある、いる」という意味です。

例えば、
There is a cat on the desk.「猫が机の上にいる。」
There are some toys in the box.「箱の中におもちゃが入っている。」
などがよく教科書に書かれています。

さて、文の作り方は、

thereの後にbe動詞のisかareを置きます。
このとき、isかareを判断するのは、be動詞を置いた後の名詞です。

その名詞が単数形ならisで、
複数形ならareを置かなければなりません。

注意が必要なのは、
文頭のthereに「そこに」というような意味はありません。
発音も弱くの / ðɚ / と読みます。

つまり、具体的な場所を示す「そこに」を追加して言いたい場合は、
thereをさらに追加してやる必要があります。

「そこに1つのリンゴがある」と言いたければ、
There is an apple there.
としなければいけません。

ちなみに、there の発音は、
文頭が弱く/ ðɚ /で、文末は / ðɛ́ər / になります。

there構文が第一文型とはどういうこと?

この構文が第一文型だと言えるのは、

前項で解説した

thereの後にbe動詞のisかareを置きます。
このとき、isかareを判断するのは、be動詞を置いた後の名詞です。
その名詞が単数形ならisで、
複数形ならareを置かなければなりません。

という部分です。

(述語)動詞というのは、
主語によって単数か複数かを決定するわけですね。

He is happy.
We are happy.

いずれの動詞も、HeやWeといった主語で、変化しています。

今回も例外ではなく、
thereの後のbe動詞を判断しているのは、
(位置が違えど) その後に続く名詞(主語)という訳です。

There are some toys in the box. では、
Some toysの部分が主語ということになります。

さて、ではなぜ「there」と「主語」をひっくり返している(倒置している)のでしょうか?
そのヒントは「情報構造」にあります。

there構文に学ぶ情報構造

まず、「情報構造」について学ぶ前に、
一つthere構文の”最も重要”なルールを追加しておきましょう。

それは、there is/areの後の名詞(主語)は、
「新情報」でなければならないということです。

「新情報」というのは、
「相手が知らないであろう新しい初めての情報」のことです。

例をあげれば、
There is your child at the supermarket.「あなたの子供がスーパーにいるよ。」なんかは使えないということです。

your childは、「相手も自分も知っている情報(=旧情報)」なので、普通この構文で主語にすることはできません。

もし、こんな時に、「〜が・・・にいるよ!」と言いたければ、
Your child is at the supermarket. などと言っておけば大丈夫です。

前置きはさておき、
ここからは「情報構造」について学習しておきましょう。

まず、「新情報」と「旧情報」という言葉が出ました。

「新情報」とは、書いて字のごとく、
「相手が知らないであろう新しい初めての情報」のことでしたね。

「旧情報」とは、古い情報という意味ではなく、
英語ではgiven information(与えられた情報)といい、
「相手も自分も知っている情報」のことです。

この言葉の定義がわかったところで、
英語の情報のルールを確認します。

英語の情報のルールは、
「古いものから新しいもの」に流れる傾向があります。
言い換えれば、旧情報を先に、新情報は後に置くということです。

その主な理由は、旧情報を先に言う方が、聞き手の「情報処理が楽」だからです。

この図を見てください。



この図が表しているのは、人が「どの順番で話される」と都合が良いのかを可視化したものです。

新情報、つまりは「知らないこと」を先に言われてしまうと、
① 聞き取れない可能性がある
② 「知らないこと[新情報]」を「相手が話してもらえるまで(=知っている状態にするまで[旧情報])」覚えておく必要がある
という2つの大きな問題が出てきます。

この図でいうところの、
1つ目がそれに当たるわけです。

新情報で「え?」と困惑しているのに、
ずいぶん先で答えを言われているために、「え?」と困惑した「新情報」を忘れてしまった。という状況です。

しかし、旧情報を先に言えば、
この二つの問題が解決します。

まず、知っていることから話されるので、
納得しながら話が聞けます。

その後に、新しい情報がきて、
「え?」とはなりますが、その次にすぐ「その情報の説明[旧情報]」がくるので、
覚えておく必要はなく、納得もすぐさまできます。

説明だけでは分かりづらいこともあると思いますので、
例を見ていきましょう。

先ほどは、「情報構造は英語のルール」と言いましたが、
今の頭の処理のことを考えれば、かなりの言語にも同様の構造がなりたつと思います。

なので、まずは「日本語」でいくつか例をあげます。

若者同士の会話をイメージしてください。
ひまり:「ねぇ、こないだ言ってた男子いるじゃん?」
りん:「あー、気になってるって言ってた人?」
ひまり:「そう、れんっていう人なんだけど。彼女いたんだ。」
りん:「え?まじ。」
ひまり:「まじ!こないだ、れんと女の子が渋谷で歩いてるのを見たの!」

この二人の会話を分析してみると、
以下のような形になります。

この会話の中でも、
やはり新情報から旧情報の流れになってますね!

急に「れんに彼氏ができた」と言われても、
「誰だよそれ、彼氏ってなんの話だよ」ってな感じになることも予想できそうです。

(ちなみに「ひまり」「りん」「れん」は、2023年で子供につけたい名前ランキング上位のものです!)

次の例を見てみましょう。

次は、日本昔ばなし「桃太郎」からです。
「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。」

ここです!

まさに旧情報と新情報の関係です。
「昔々あるところに」は定番文句ですね、
その後は「新しいことが始まりますよ(新情報がきますよ)」という合図です。

その「新情報」が「おじいさんとおばあさん」です。
後から「おじいさんとおばあさん」のことについて説明しています。

また、新情報をどうしても先に置きたい時は、
あらかじめ「新情報がくる合図(目印)」を置いておけば、
新情報を文末に置くことができ、相手に「新情報を聞く」準備をしてもらうことができます。

さて、最後に(日本語の)練習問題です。
「昔、国のはずれに、病気で両親を亡くした女の子がいました。」
この後に続くのはどっちでしょう?
① その女の子は、女の子の新しいお母さんによくいじめられていました。
② 女の子の新しいお母さんは、その女の子をよくいじめていました。

人それぞれの好みはあるものの、
①の方が自然だと思う人が多数派なのではないでしょうか?

それはやはり情報構造のおかげです。

さらに、「病気で両親を亡くした女の子が国のはずれにいました。」のように語順を入れ替えてみると、
「なぜ、国のはずれにいたかというと…」といったような、「国のはずれ」についての文章が続きそうな雰囲気があります。

兎にも角にも、日本語でも、
この「情報構造」があり、それを我々は自然に身につけてしまっているわけです。

さて、ここからやっと英語です。

英語では、この情報構造はより厳密だと言えます。
英語は、日本語と違い語順がある程度決まっています。
(日本語の場合、助詞があるので簡単に文を組み替えられる。)
この語順に合わせていこうと思えば、どの順番で何を話すかが重要になります。

さて、英語で1つ例をあげましょう。

Once upon a time, there was a beautiful princess.
She loved cooking.

これは、昔話やおとぎ話の最初の部分です。

Once upon a timeは、「昔々」です。
a beautiful princess.が、「美しいお姫様」になります。
これが新情報ですね。その後に、She loved cooking. という旧情報がきます。

この文章では、
新情報が初めに来ています。

日本語でも言いましたが、
新情報をどうしても先に置きたい時は、
あらかじめ「新情報がくる合図(目印)」を置いておけば、
新情報を文末に置くことができ、相手に「新情報を聞く」準備をしてもらうことができます。

その合図となるのが、there構文のthereになります。

新情報を後ろにしたいがために、
thereをとりあえず置いているわけです。

こうすることで、
「新情報」を後ろに置くことができ、「相手にも新情報がくる準備」をさせることができるわけです。

もう少し付け加えれば、
この「旧情報→新情報」という順番は、1つの文だけでなく、段落や長い文章全体についても同様に働くことが多いです。
なので、少しでも気を配っておけば、読解の時にも役立ちます。
逆に、自分が発信するライティングやスピーキングでも、意識しておけば、論理的な文章を作りやすくなります。

さて、以上の知識を踏まえ、この構文の解説をまとめれば、
結果的に「there is/are 主語」の「主語」になる名詞は「新情報」でなければならない。となるわけですね。

また、新情報ということは、
「不定冠詞(a/an)+単数名詞」や「some・any+複数名詞」などが置かれることが“多い”と言えるわけです。

発展知識①新情報の文でthere構文を使わないとどうなる?

ということで、there構文の主語には新情報がくると分かりましたね。

でも逆に、there構文を使わずに、
「不定冠詞(a/an)+単数名詞」や「some・any+複数名詞」を主語として使うと、
どのような意味になるか気になりませんか?

例えば、

① There is an apple on the desk.
② An apple is on the desk.

のような違いです。

「机の上に一つのリンゴがある。」と言いたい場合は、
通常、①のようにthere構文を使いますが、②でも完全な間違いであるとまでは言い切れません。

しかし、英語話者の頭の中では、
「新情報」の名詞は、there構文の後に置かれるものだと認識しているので、
②のような文を聞けば、別の意味と解釈してしまうかもしれません。

一般的に、「不定冠詞(a/an)+単数名詞」は「一般論」を表す時に使用されます。
例をあげてみると、
A cube has six surfaces. 「立方体には、6つの面がある。」などです。

つまり、今回の文では、
An apple is on the desk. は「リンゴというのは、机の上にあるものである。」と解釈されてしまいます。

しかし、当然、そんな一般論はありません。
ですから、「リンゴが1つ机の上にある」と ”言いたいのだろう”と理解してくれることでしょう。
しかし、 “違和感を感じる” ために、不自然だと聞き手は思ってしまいます。

someでも同じことが言えます。
① There are some apples on the desk.
② Some apples are on the desk.

やはり聞き手としては、
「机の上にいくつかリンゴがある。」と伝えるときは、①を使ってくると予測しています。

なので、もし②のように、
someを初めに見かけると、やはり別の用法と勘違いします。

someが文頭に出る時と言えば、
「〜というものもある/いる」という表現ですね。
英語の資格試験のライティングセクションでよく、
Some people say that this is a problem.「これが問題だという人もいる。」などが出てきますが、
そのsomeの使い方になってしまいます。これは、someが来たら(the)other「他」がいる(ある)ことを示唆する表現です。

今回ので当てはめれば、
Some apples are on the desk.「机にあるリンゴもある。(そうでないリンゴもある。)」というような意味が先に浮かんできます。

このような印象が生じてしまうのは、英語が持つ、ある種のクセです。
繰り返しますが、英語は、「旧情報」から「新情報」に流れるという順序が最も自然だと思われているのです。

なので、何の前後や文脈もないのに、
唐突に「新情報(An apple)」から始められると、「どのリンゴのことを」 を述べているのかについての「事前の枠組み」がないので、別の用法である「リンゴというもの(全般)」を考えざるを得なくなってしまうのです。

発展知識② there構文で使える動詞は「be動詞」だけではない!

there構文で使える動詞は結構あります。
there構文は、第一文型を取りますので、
第一文型でよく使われる「存在」「移動」は、there構文でも同じように使える場合が多いです。
(第一文型を詳しく知りたい方は、#4(第一文型)をご覧ください。)

さて、よく使われる動詞をいくつか例とともにあげておきましょう。

注意が必要なのは、
通常のthere構文と同様に、主語に合わせて単数や複数を変えたり、時間に合わせて時制を変えたりする必要があります。動詞を適切な形で置けているかどうか注意しましょう!

発展知識③ there構文の主語には「何が」おけるの?

there構文の主語には、
「不定冠詞(a/an)+単数名詞」や「some・any+複数名詞」が置かれることが多いと書きました。

では、それ以外は置けないのか、と聞かれれば、
答えは、Noです。

多いというだけで、他を置いてはいけないという意味ではありません。
「固有名詞」や「定冠詞(the)+名詞」だって新情報を含んでいれば置いても構いません。

A: I'm bored. Is there something to play with in your house?「ひまだ。お前の家に何か遊ぼものはないのか?」
B: Ummm. there's my Nintendo Switch.「んー。スイッチならあるぞ!」

there構文は、(特に会話等で)
聞き手が未知の情報だと確信している場合には、このように使用できるわけです。

ちなみに、there構文としての意味ではなく、
「普通のthere(そこに)を伴った”倒置”」も存在します。
その場合は、なんでもthereの後ろに置くことができます。

例えば、
There goes the train.「あー、電車があそこにいっちゃた。」
なんかは、The train goes there. を倒置しただけです。
(発展知識なので「倒置」がわからない方は、学習を進めてから戻ってくるとよくわかると思います。)

あれ?there構文自体が倒置なのでは?と思った方!鋭いですね。
there構文は、ある種「構文化」してしまっているので、thereの「そこに」の意味が残っていないと前半戦でお話しました。
つまり、there構文は、通常の倒置とは異なっているということです。

元々は、ただの倒置だったのが、使い方が発展し、
現在では、構文的に「〜がある」という意味しかありません、
なので、「あそこに」という意味を付けようと思うと、There is an apple there.のように、
追加してthereを使わないといけないわけです。

最後に

さて、今回は「第一文型」の応用でもある「there構文」について解説しました。
次回は、いよいよ「第二文型」です。

「第二文型」は I amやYou areといった表現から丁寧に解説していきます。
乞うご期待!!

と、その前に、今のうちにフォロー!しておいてください!!

また、YouTubeもしています。
YouTubeでは、みなさんの英文法や英語学習法等について、リクエストに応じながら動画を作成しています。
ぜひ、ご活用くださいね!!


この記事が参加している募集

#QOLあげてみた

6,386件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?