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【メルマガ絵本沼】vol.24:私小説のような性教育絵本『ぼくのはなし』(和歌山静子)

絵本を読み、愉しみ、考えて、ハマる、【メルマガ絵本沼】。
当メルマガも今号で創刊二周年となりました。
みなさまに感謝です(^^)/

今回のお題は性教育絵本の名作「おかあさんとみる性の本(全3巻)」(山本直英/和歌山静子/1992/童心社)から、『ぼくのはなし』を取り上げます。ひとときお付き合い願えれば幸いです。


【お知らせ】
■第二期絵本沼読書会#2『わたしのワンピース』(こぐま社)を開催します。
今期は同じ内容の2回開催です。が、顔ぶれ変わると内容も変わるのでびっくりです(笑)。日程と募集人数は下記となります。あっという間に満席になりますので、お早目にお申込みくださいー。

・一回目(受付了)
・二回目:
3/16(土)21時~22時半 参加者6席&見学者3席

※以前告知しました【絵本沼ゼミ連続講座】ですが諸事情で延期となりました…。申し訳ございません。


【メルマガ絵本沼】
-私小説のような性教育絵本-『ぼくのはなし』(和歌山静子)

■前振りその1:絵本のふたつの捉え方
絵本沼ゼミに何度か参加された方は「またその話か」と思うかもしれないが、絵本の捉え方は、

A)作品としての絵本
B)商品としての絵本

と、ざっくりふたつに分けることができる。

これは絵本って商業出版なので作品性と商品性の両方で捉えないといけないよねという話であって、どっちの捉え方が上だとか下だとかって話ではない。
ただ、出版社はこのバランスを常に考えていて、こう、おかしな作品は出せないし、といって売れないとビジネスにならんし、みたいに、時にそれはジレンマにもなったりする。
で、昨今は絵本を売るのがどんどん難しくなっているので、商品性のウェイトが増しているようにも感じるのだった。

じゃあ、絵本をどうやって売っていくか?となると、これもまたざっくりふたつに分けることができる。

■前置き②絵本のふたつの売り方
絵本を含めた児童書の売り方は、ざっくり分けると下記のふたつになる。

1)店売(てんばい)
ひとつめは書店(リアル・ネット)で商品を並べて売る、いわゆる「店売」というものだ。
大半の人が思い浮かべる「本の売り方」はこれになるだろう。

ただ、ご存じのとおり出版業界はすごい勢いでスポイルしているので、店売の売上もほんまにきびしくなっている状況だ…。

2)外商(がいしょう)
もうひとつは「外商」と呼ばれるもので、店頭でお客さんが来るのを待つのでなく、法人客などへこちらから営業を仕掛けていくスタイル。
百貨店などは今も「外商部」の存在が大きい。

で、店売にくらべると外商はめっちゃコストがかかるけど、その分、店売みたいにひどい売上減にはならない安定感がある(ずっと縮小トレンドではあるけれど)。
店売はほんとに水ものだから。

反面、客層を絞るので商材の自由度は低くなる。
外商ってのは「固くて硬い商い」だと言えるように思う。

ここで想像してもらいたいのは、店売と外商って、出版社にとってはどっちの売上が大きいのだろうか…?

実は、昔っから多くの児童書出版社は店売よりも外商の方が売上が大きいのだった。
これは児童書の商品としての性質であるとも言え、私なんかは「児童書の売り方の王道は外商」とすら思っていたりする。

■性教育絵本という分野
で、児童書の外商にもいろいろルートがあり、その中で存在感がでかいのが「学校図書館」になる。

ここに買ってもらえれば太い商いになる。
なので、年度前の3月には多くの出版社が学校図書館向けの新刊を大量に発行し、店頭を介さずに巡回販売や児童図書展示会などでセールスするのが、児童書界の季節の風物詩なのだった。

じゃあ、学校図書館に相性がよいのってどんな本なのだろうか?
それはズバリ、学校の教育課程に合致したものや、教科書掲載、それに親和性の高い本になるかと思う。
国語教科書なんかはシンプルにそうだし。

さて、ここからが本題。
学校の教育課程には「性の指導」というのがあって、
小学校だと四年生くらいかな、なのでここに合わせた本もやっぱりいろんな出版社が昔からつくって売り続けている。
で、ここをターゲットにした学習絵本の中に、えらくユニークなロングセラーがあるのだった。

©童心社

それが、32年前に刊行されて今も生き続ける「おかあさんとみる性の本(全3巻)」(1992/童心社)という絵本だ。

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