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【メルマガ絵本沼】vol.23:『魔女宅』…からの『ちいさな木』を読む

絵本を読み、愉しみ、考えて、ハマる、【メルマガ絵本沼】。
本年最初の【メルマガ絵本沼】ですが、お題は角野栄子さんの最新絵本『ちいさな木』(2023/偕成社)です。
長文ですがひとときお付き合い願えれば幸いです。


【お知らせ】
(1)【絵本沼ゼミ連続講座】を開催します!
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(2)【第二期絵本沼読書会#1『かいじゅうたちのいるところ』】追加開催します!
・受付開始後あっという間に満席となった2/10(土)の【第二期絵本沼読書会#1】ですが、2/11(日)に追加開催いたします。気になる方は迷わずサクっとお申込みくださいー。
【好評につき追加開催!】第二期絵本沼読書会:ロングセラー絵本に浸る#1

(3)1/6開催の新春イベントのダイジェストを絵本沼チャンネルにアップしました。
・子どもの本の編集者のほそえさちよさんとの対談企画「絵本沼新春企画 2023年の絵本業界を子どもの本の編集者と絵本オタクがゆる~く振り返る」のダイジェストをYoutubeの絵本沼チャンネルにアップしました。ぜひご覧くださいー。
Youtubeの動画


【メルマガ絵本沼】
『魔女宅』…からの『ちいさな木』を読む。

■『ちいさな木』という絵本
昨年11月、東京都江戸川区に角野栄子児童文学館が開館した。
御年89歳ながら隠居感ゼロ・現役感バリバリで、新刊も続々と出て、テレビでもお顔をしょっちゅう拝見する。

その角野先生の最新作が『ちいさな木』(2023/偕成社)という絵本で、その内容はこのようなものだった。

  • 町のはずれに小さな木(キッコ)が一本立っていた。

  • ある日、町から犬のゴッチが走ってきて「自分の好きなところへ行く」と言った。

  • キッコもその場で決意し、ゴッチと一緒に行くことにした。

  • 道中、岩のイワオ、沼のイッテキも合流。4人は好きな所を求めて旅する。

  • 希望の地に着くも、3人は残り、ゴッチは別の地へ旅立った。

木と、犬と、岩と、沼。
こう、村山籌子(1903-1946)を彷彿させる「モダンな御伽噺」といった体で、そこに「ここではないどこかを求める」という角野先生の原点となるテーマが横たわり、ラストはチームの起点となった者が終点には居ないという渋みを利かせつつ、それでいてハッピーエンドで幕を閉じる。
子どもにはいささかビターかもしれないが、大人にはストンと落ちる。

読後、角野先生は書いていてとても楽しかったんじゃなかろうか、と素朴に思った。
控え目に言って名作。

で、この「絵本の絵」を担当したのは、佐竹美保さんなのだった。

■『魔女宅』の3人の挿絵画家
同一レーベル・同一シリーズの巻数ものの挿絵はたいていひとりの絵描きが担当するが、角野先生の代表作『魔女の宅急便』(福音館書店、以下『魔女宅』)シリーズ9冊(6巻+別館3冊)には、実に3人も挿絵画家がいる。

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