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2020年12月の記事一覧

クリスマスの思い出

クリスマスの思い出

トルーマン・カポーティ 村上春樹訳/山本容子銅版画 『クリスマスの思い出』(文藝春秋、1990年) 【*原作* A Christmas Memory by Truman Capote in 1956】

「7歳の少年と老婆の友情物語」といってしまえば簡単だけれど、毎年ふたりがクリスマスの準備をする情景を描いた「イノセント・ストーリー」と呼ぶしかない独特の世界観にあてはめるにはあまりに乏しい表現で

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ファンタジーへの誘い

ファンタジーへの誘い

斉藤洋 作・小澤摩純 絵 『ジーク』(偕成社、1992年)

あまりにも素敵な表紙だったので「自分にはハードルが高いかも」と長らく積ん読状態だった1冊。斉藤洋さんは大好きな作家さんだから、挫折したくなくて身構えすぎたんだと思う。

もっと早くに読むべきだった! 私でも読めたんだから、未読の方はぜひ!

たとえていうなら、「なん者ひなた丸シリーズ」の西洋版青少年部門(笑)ちょっとこわそうだけど安心し

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空を見上げるとき

空を見上げるとき

工藤純子著『セカイの空がみえるまち』(講談社、2016年)

異国の地に降り立つと言語や風習のみならず空気の匂いも違う気がして、ふと空を見上げたものだった。この空は同じはずなのに、と。

久しく東京を離れている私は、新大久保がコリアンタウンのある「明るい街」へと変貌を遂げたことを今回初めて知ったのだが、読み進めるにつれ「明るさ」とは裏腹に外国人にたいする差別や偏見のうごめく闇の深さをも思い知ること

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