見出し画像

クリスマスの思い出

トルーマン・カポーティ 村上春樹訳/山本容子銅版画 『クリスマスの思い出』(文藝春秋、1990年) 【*原作* A Christmas Memory  by Truman Capote in 1956】

画像1

「7歳の少年と老婆の友情物語」といってしまえば簡単だけれど、毎年ふたりがクリスマスの準備をする情景を描いた「イノセント・ストーリー」と呼ぶしかない独特の世界観にあてはめるにはあまりに乏しい表現でしかない。

フルーツケーキの材料を集め、クリスマスツリーの切り出しと運搬に伴う重労働、木の香りと手作りの飾り付け、その一つ一つをふたりで行ってきたことがどれほど尊いことだったのかは、後から振り返ってわかることだ。

世間的な価値観や常識とは異なるところで生きる人にこそ、本来のクリスマスの意味があるのだと思う。ふたりが最後に一緒に過ごしたクリスマスの老婆の言葉が胸を打つ。

私たちがいつも目にしていたもの、それがまさに神様のお姿だったんだよ。私はね、今日という日を胸に抱いたまま、今ここでぽっくりと死んでしまってもかまわないと思うよ。

詳しくは、NHKカルチャーラジオ文学の世界「文庫で味わうアメリカ短編小説」の都甲幸治さんの解説がすごくいい。2021/1/21までの聴き逃し配信をぜひ!