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第37回絵本まるごと研究会

令和5年8月27日(日)の第37回絵本まるごと研究会のテーマは、「認定絵本士養成講座について学ぶ~講座の様子と学生の学び~」でした。今回は、第5期絵本専門士であり、保育者養成校にて認定絵本士養成講座の講座担当を務めております野見山直子と小屋美香が担当させて頂きました。研究会では、認定絵本士養成講座の概要とそれぞれの養成校での講座の様子、そして講座から学生がどのような学びをしているかについてをお話致しました。

■認定絵本士養成講座とは

 「認定絵本士養成講座」制度は"子どもの読書活動をより力強く進める為には絵本専門士だけでは不十分であり、若い人にもっと関心をもってもらい、活動に参画し、牽引してもらうことを目的"に2019(令和元)年度にスタートした制度です。大学や短期大学および専門学校等において絵本専門士養成カリキュラムを授業中に受けられる制度であり、2023(令和5)年度現在49校の大学・短大・専門学校が講座を開設しています。認定絵本士は講座で学んだことを活かし、保育の現場や様々な場所における読み聞かせやおはなし会の運営等、一定の実務・実践経験を積み、資質、能力がふさわしいと絵本専門士委員会から認められることにより、絵本専門士にステップアップすることができます。2023年に初めて、5名の認定絵本士が絵本専門士として認定されました。

参考;絵本専門士委員会独立行政法人国立青少年教育振興機構 
認定絵本士養成講座テキスト 2020  
   

■認定絵本士養成講座について~講座の様子と学生の学び~(野見山)

<講座概要>
・彰栄保育福祉専門学校では、2022年度より「国語表現法」(通年・30コマ)において認定絵本士養成講座を開講している。
・担当教員は、本学教員3名と講座内容に合わせて招聘したゲストスピーカー15名。ゲストスピーカー15名の内、11名が絵本専門士。全30コマの授業をオムニバス形式で実施。

<講座開設準備の道のり>
・講座を開設したい旨、校長・学科長、教員会等に講座の概要・講座の意義やメリットを書面で作成し伝えるもなかなか承認されず。(民間資格の導入に対する不信感、開設費・謝金等の金銭面の負担)しかし、絵本専門士の活躍が新聞などで周知されてきたことが後押しとなり講座開設の許可が下りる。
・講座を開設に向けて、講座に合った講師を選定・依頼。講師の都合に沿って講義日程の調整。厳しい講師要件があるため人選はなかなか難しく、依頼した講師に引き受けてもらえないことも度々あった。多くの絵本専門士仲間(11名)に助けて頂きなんとか無事講座を開設するに至る。
 
<受講の様子と学生の学び>

1.絵本にまつわる多彩な講師からの学び
 絵本にまつわる講師の現場や仕事で得た生きた話が聴ける為、絵本の知識はもちろんのこと、多彩生き方についても刺激を受けている。

   その道のスペシャリストによる講義に興味津々
   (写真は絵本専門士5期生の矢阪さん)  

2.絵本の世界への興味・関心の広がり    
  様々な絵本を読むことに対する興味の広がりはもちろん、図書館や絵本展に行ったり、絵本に関するテレビ番組を視聴し教員や友達同士で話題にするなど絵本の世界への興味・関心を広げている。

講師が持参した絵本を実際手に取って作品の良さを味わっています

3.選書の視点の広がり
 様々な講師や友人からの絵本の紹介により、今までは手に取る事のなかったような絵本に興味を持つようになる。

様々な講師方がおすすめ絵本の読み聞かせをしてくれます
事前課題で出されたテーマの絵本を持参し、仲間と紹介し合う機会も多くあります

4.1冊の絵本を楽しむ際の視点の広がり
 作家の思い、絵本を創る工程やこだわりなどを知り、絵本の楽しみ方が深くなった。

絵本作家きうちかつ先生の講義の様子

5.読み聞かせの技術・紹介する技術の高まり
 読み聞かせ経験豊富な講師の読み聞かせに多数触れる機会や授業内で読み聞かせの機会が多数あったことから、絵本を魅力的に読む技術を磨くことが出来る。また、自分の選んだ絵本を他者に紹介する機会が多い為、表現力、コミュニケーション力も磨かれた。

読み聞かせの発表を通して多様な読み方や留意点に気付きます

6.絵本に関する活動の視点の広がり
 おはなし会の企画書の作成・発表、自分の地域のおはなし会の調査・発表から絵本にまつわる活動のアイデアや知識を広がった。

地域のおはなし会の調査の発表の様子

<今後の課題>
1.講座で得た学びを深める実践的な機会をつくる
 隣接の幼稚園や近隣の保育園・幼稚園等に出張おはなし会に行ったり、文化祭や学校内でおはなし会を開くなど、学生自身がイベントを企画・運営できる機会をつくる。(企画力、コーディネート力を実践で育成)            
2.近隣の施設と連携し、絵本体験を充実させる
 近隣には多数出版社や本屋、図書館があるもののそれらを活かせていない。学生が生きた学びを得られるよう、今後つながりを作っていきたい。3.認定絵本士養成講座における取り組みの情報発信 
 本校の様子については広報課に任せていたが、認定絵本士養成講座の受講の様子や学生の成長などを発信し、学校の魅力としてアピールしていきたい。
4.他の養成校の取り組みから学ぶ
 さらなる講座内容の充実に向けて、他の養成校の取り組みの工夫について情報収集をしたい。

<メッセージ>
 認定絵本士養成講座を運営し、本講座が絵本に関する知識・技術・感性を豊かにし、「企画力」「コミュニケーション力」「表現力」「指導力」「選択力」「コーディネート力」と様々な力を伸ばす講座であることを改めて実感しています。それらは保育者の質の向上にもつながっていくため,
この講座を本校で取り入れて良かったと感じています。絵本専門士の皆様に講師依頼が来た際には、学生の豊かな学びの為に是非お力をお貸し頂けましたら幸いです。

■認定絵本士養成講座について~講座の様子と絵本からの広がり~(小屋)


 今回のまる研では、先述の野見山さんに続いて、絵本専門士5期で保育者養成短大勤務の小屋美香より「認定絵本士養成講座について~講座の様子と絵本からの広がり~」と題して発表をさせていただきました。ここではお話しした内容の要点をご報告させていただきます。

<講座概要>
・育英短期大学保育学科では、2020年度より「絵本学」(通年・30コマ)という科目を新設し、認定絵本士養成講座を開講している。
・2023年8月現在、認定校は全国に49校(50学科)。地域差はあるが、その数は年々増加中。
・2023年9月から4期目の講座が始まる。2023年度は、専任教員6名(講座責任者1名含む)とゲストスピーカー15名(絵本専門士養成講座講師や絵本専門士を含む)で全30コマの授業をオムニバス形式で実施。担当教員の講座に関する共通認識も重要なポイント。

<講座開設準備の道のり>
・講座責任者として開設準備のために行ったことは、講座の意義について学内で理解を得ることに始まり、科目新設に伴うカリキュラム変更、絵本専門士委員会が提示するガイドラインの要件に沿ったゲストスピーカーの人選や依頼など様々あり、なかなか大変であった。

<講座の様子と絵本からの広がり>
・講座のテーマごとに様々な専門家から話を聞くことができる貴重な機会。学生の学びの広がり、気づきや感性の深まりにつながっている。
・とにかくたくさんの絵本に触れて、仲間と共有するので、絵本に関する知識が増えるだけでなく、コミュニケーションの向上にも。
・大学図書館の絵本や本の活用が増えただけでなく、県立図書館や地元の書店との連携強化にもなっている。
・県内で開催される絵本原画展などで学生がお手伝いをさせていただくことも増えた。原画の並べ方、会場設営の仕方から、環境構成について考え学ぶ機会にもなっている。
・コロナ禍でもできることは何かと考えて、学内外でおはなし会を開催。学生の考える力や実行する力が少しずつ育ってきている。
・講座開設から4年目。絵本に関する活動は学外へ、地域とつながり、その可能性は広がりをみせている。講座責任者はコーディネーター的役割が大きい。

<今後の課題>
・課題としては講座後のフォローアップや他の養成校との情報共有などがある。

<最後に>
・資格の質の担保を鑑みると、絵本専門士養成講座を受講した絵本専門士の皆さんになるべく授業を担当していただきたい。協力がなくては講座が成り立たないとも言える。
・学生にとっても保育以外の他(多)分野の方と関わりを持てる貴重な機会!
・絵本について学ぶことは決して絵本についてだけ学ぶことではない。絵本から広がる大きな可能性を感じている。

 皆さんの豊富な経験や知識は未来の保育者を育てる大きな力となります。近隣の養成校からゲストスピーカーのお話があった際には、ぜひご協力をよろしくお願いいたします。

絵本専門士(5期の増田さん)によるブックトークの授業 (実習前で大変参考になりました)
認定証交付式の様子
(保育者としての自信につながっていきます)
絵本専門士による絵本まるごと研究会は、絵本・応援プロジェクトに参加しています。

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