見出し画像

第26回絵本まるごと研究会

はじめに

第26回絵本専門士による「まるごと研究会」で、小学校の国語授業について報告させていただいた、第5期絵本専門士の村田純子です。私は、現在、京都の小学校で教員をしております。小学校では、絵本は様々な場面で活用されています。国語の教科書には、絵本として出版されている作品が幾つも取り上げられています。また、道徳の授業で、児童に種々の考えを促すきっかけを与えたり、作品そのものについて話し合ったりすることもあります。日々の読み聞かせや学級づくりにおいても、絵本が児童の心を育むことについて一役を担っていると考えますと、全国の多くの小学校で絵本が大切な役割を果たしているといってもよいのではないでしょうか。
今回は、国語の授業を通して読解力を育てるにあたり、どのように授業づくりをすすめ、また、絵本をどのように活かそうとしているかということについて、取り組んできたことを報告させていただきました。

⒈ 「読解力」をどう捉えるか

情報化、多様化、グローバル化といった社会の変化に伴い、これまでの「文章の内容を正確に読み取る力」つまり「理解」を重きに置いた「読解力」から、「解釈し熟考する能力」「テキストを利用する能力」「自分の意見を論じる能力」への変換(「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する力」OECDの定義より)が求められるようになりました。学校においても「自分で判断する力」「他者と協調・協働する能力」を育むことを念頭に、「主体的・対話的で深い学び」に重きを置く授業が進められています。
  私自身は、「主体的・対話的で深い学び」を通して 子どもが幸せに生きるための基礎となる部分をつくることを目標に、「ことばを通して、感じ表現しつながる」授業づくりを目指しています。

⒉授業と絵本 “絵本”をどう活かすか(物語作品の場合)

⑴授業づくり 
絵本がある・ないに関わらず、指標となる「読解の視点」に沿い、授業づくり(教材となる作品の分析と実際の授業デザイン作成)を行います。
将来 一つの作品に出会った時に、自分で読み解くことができるようになってほしい…。そのためには、どのように作品を読めば作品理解につながるかということを、児童自身がつかんでいることが大切です。「読解の視点」は、教師にとって「主体的・対話的な授業にするための鍵」であると同時に、児童にとっても「読解のための鍵」になります。
具体的に幾つかを挙げてみます。一つ目は、「物語の設定」が挙げられます。これは、その作品が、「いつ(時)」「どこ(場)」を舞台にした」ものなのかを指します。また、「誰(登場人物)」が登場して、「どのような出来事(事件)」が起こったお話なのかということも、「物語の設定」に当たります。
次に、「場面」や「構造(起承転結はこれに当たります)」、「粗筋」「人物同士の関係」、そして何より「主題」は何なのかということについて考えることも、読解する上で大変重要な「視点」になります。
これらの視点の基づき、表現方法や話者がどの視点から物語を語っているのか、対比や類比、一文に要約する活動や主題にせまる問いについて考え話し合う活動を通して、作品を読み取っていきます。

⑵もともと「お話」だった作品について
「教科書会社による挿絵の違いが、子どもの読解に何らかの影響を与えるのではないか」という考えから、他の教科書や 挿絵のもととなる絵本から同じ場面の絵を読み比べるという活動を行いました。挿絵だけではなく本文の叙述も提示し、叙述のどの表現に重きをおいて絵が描かれているのかを見直すことで、挿絵が 読み手である自分たちに与えるイメージについて、話し合うことができました。

⑶ブック・クラブで読む
作品の主題に関わる大きなテーマのもと、次のような学習活動を行います。
  ・作品の背景(書かれた時代や社会情勢・作者について等)を知る。
  ・粗筋を理解する。←大きな出来事を時系列に並べていく。
  ・キャラクターマップを作成し、人物像を捉える。
  ・作品全体を貫く問い(主題にせまる問い)について考え、話し合う。

⑷もともと「絵本」だった作品について
教科書という枠の中で紹介されている作品は、すべての絵が掲載されているわけではなかったり、ページをめくるときに絵の進行と合わないことがあったりします。必ず、もととなる絵本に出会わせたいと思います。

現在、海外の取り組みも含め、多くの「読み方」が紹介されています。授業で“絵本”を取り上げることも、その「活かし方」の一つだと考えます。“絵本”そのものを楽しみ読み浸ることを忘れず、授業にも活用することができれば…と思っています。

絵本専門士による絵本まるごと研究会は、絵本・応援プロジェクトに参加しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?