【LIFE IS SPICY】溝端裕子が行く!|廣川農園訪問記
「LIFE IS SPICY」をコンセプトに世界を旅する料理人、溝端裕子さん。
昨年、愛媛を訪れた時に、スパイス料理イベントを開催したのですが、その時に出会ったのが、「ethnic green farm 廣川農園」さんのパクチー。その美味しさに感動して、「この農家さんに会いたい!」と目を輝かせていました。
ということで、廣川さんに畑見学をお願いしたところ、快くOKのお返事が。溝端さんの愛媛再来の時に、念願の畑訪問が実現しました。
廣川農園は、愛媛県東温市にあります。パクチーや、長粒米・プリンセスサリー、唐辛子のプリッキーヌやインドジンウソツカナイなど、エスニック料理に重宝する食材を中心に、今は、サラダケールやビーツなど、ユニークな野菜の栽培にも取り組んでいます。
愛媛産のエスニック食材に出会う
最初に案内いただいたのは唐辛子の畑。約4aほどの広さに、プリッキーヌやインドジンウソツカナイが栽培されています。前日まで雨が降っていたので、雨露に光が当たり、キラキラと輝いていました。青々とした緑に赤い実が一面になっていて、きれいだなあと見とれてしまいましたが、この光景、1月に見られるのは異例なのだそうです。通常、冬は枯れてしまうのですが、今年は採っても採っても収穫できて、こんなところにも暖冬の影響が現れているようです。
この唐辛子栽培ですが、初めからずっと順調だった訳ではなく、風雨がひどい時には、倒れる被害が出たことも。今は、支柱を立てて、そこから張ったネットで作物を支えています。これは、ユリ農家さんの知恵を取り入れたものだそうで、そうしたお話から、栽培方法を試行錯誤して編み出している様子が伝わってきました。
「食べてみる?」と言って、廣川さんが、インドジンウソツカナイを手に。
恐る恐る齧ったところ、意外だったのは、パプリカのような甘みがあること。その後に、しっかりと辛さがやってきました。辛い!
こちら、しっかり収穫させていただきました。ありがとうございます!
隣には、種取り用のカー(タイ生姜)。トムヤムクンなどに使われる生姜で、本格的なエスニック料理には欠かせない材料が、国産で手に入るのは重宝されます。
プリンセスサリーの田んぼも案内していただきました。広さは20a。プリンセスサリーとは、南アジアで最高級米と言われているインディカ米「バスマティ」を、日本で栽培できるように改良した品種。独特の香りがエスニック料理にピッタリで、このお米を使うだけで、いつものカレーがぐっと本格的な味になります。
収穫後の田んぼなので、写真のような風景ですが、稲刈りシーズンの様子が廣川農園さんのInstagramで紹介されています。
ニンニク畑も。一万株を植えているそうです。飲食店では、皮を剥く手間から乾燥させた方が好まれるそうですが、断然生の方が美味しいので、家庭で使うなら生ニンニクがオススメです。
エスニック食材の他、栄養価の高い野菜にも挑戦
そして、サラダケールの畑に。青汁の原料などで聞いたことがある栄養豊富な野菜ですが、実際の畑に植えられた、もさもさした姿を見るのは初めて。それが畝に連なっていて、小さな森のような光景。アート作品のようです。
こちらもパクリ。苦味のある野菜ですが、冬は甘みが増すそうで、生でも十分甘みを感じました。
赤のケールも。栄養価はグリーンの方が高いそうですが、彩りに便利です。
ケールの他にも、ビーツや渦巻きビーツなど、少しマニアックな、でもこれから需要な伸びそうなそんな野菜の栽培にもチャレンジしています。その理由の一つとして、「自分にも子どもがいるので、子どもたちに栄養のある野菜を食べてほしいと思ったから」と語る廣川さん。実際に、お子さんは、廣川さんの野菜をもりもり食べてくれるそうです。
愛媛から、エスニック文化をつくる
そして、いよいよ、パクチー畑に。
こちらも葉っぱをパクリ。力強い香りと味が口の中に広がります。
廣川農園のパクチーは、全て露地栽培。通年通して、飲食店に安定的に供給することを考えると、ハウス栽培の方が有利ですが、それでも露地栽培にこだわります。「やっぱり美味しいんですよね。野菜は美味しくないと意味がない」(廣川さん)。「安定供給」よりも「美味しい」を第一に。だから力のある味がする訳です。
しかし、決して安定供給をないがしろにしている訳ではありません。それは、廣川さんに飲食店で働いていた経験もあり、使う側の気持ちも知っているから。
実は、パクチーは暑さに弱い繊細な面もあり、そこが露地栽培で安定供給することが難しい面でもありますが、涼しい場所に畑を借りるなど、1年を通して出荷できる努力をしています。
そして、パクチーといえば、香りが特徴的ですが、成長の過程で香りが変わるのだそうです。廣川さんは、その段階を見極めて収穫しています。そして、葉の色で、栄養を必要としているか、そうでないかが分かるそうです。まるでパクチーと会話しているかのよう。
無農薬栽培というのも安心できますが、パクチーに使用できる農薬が農薬取締法で定められていないので、そもそも農薬を使えない作物。そのため、病気にならないよう、最大の注意を払っていて、土づくりと微生物環境を整えることに力を入れています。「土づくりを大切にしないと美味しくはできない」と語る廣川さん。味とも直結する肥料のタイミングと量は、パクチーの様子をよく観察しながら決めていきます。かといって、自然栽培や有機栽培など、一つの農法にこだわらず、いろんな農法の良いところを組み合わせているので、廣川流農法なのでしょうか。「いいとこ取りですね」と笑います。
今でこそ、首都圏や県内のエスニック料理店と取引したり、産直などで販売しているパクチーですが、栽培を始めた当初は、県内にエスニック料理店がほとんどなく苦戦したそうです。そのため、自ら、週末にイベント出店をして、パクチーカレーやパクチー料理を販売し、PRに大忙し。「家でパクチーを使ってくれる人が増えれば、エスニック料理店の美味しさもわかる。そんな人を増やし、エスニック文化をつくっていきたい」と、奔走しながらも、なんだか楽しそう。エスニック文化が醸成すれば、他のエスニック食材もニーズが高まりますが、ほとんどが輸入している状況です。まだまだ農家としてつくれる余地があると目を輝かせていました。
エスニック料理って、愛媛とは無縁な気がしますが、実は、美味しさを目指して食材をつくっている人がいます。そんな新鮮なエスニック食材が手に入る愛媛から、独自のエスニック文化をつくっていく、なんだかワクワクしませんか? 今後も、廣川さんのエスニック食材に注目したいと思います。
さて、廣川さんのいろんな野菜を試食した溝端さん。
「本当に美味しい野菜を目指してつくっていて、そして、その食べ方も伝えられる農家さんっていい!」と移動の車の中で熱く語っていて、後日、こんな感想をいただきました。
ハウス栽培が多い中、太陽を浴びまくってイキイキしている野菜達が輝いていてワクワクする畑でした。
太陽の下で食べた新鮮なパクチーは香りが口の中で広がってめちゃくちゃ美味しかったです。
プリンセスサリーを炊いた時も廣川農園で見学させて頂いた田んぼの光景が目に浮かびました。
誰がどんな想いや気持ちをもって野菜を育てているか、その現場を知ることがとても大切だなと改めて思ったと同時に、また遊びに行きたいと思わせてもらえる農園に出会えて幸せだなぁと噛み締めております。
さあ、どう料理しようと、頭の中がフル回転していたはずです。どんな料理になったのかお楽しみに。(イベントレポートに続く)
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えひめの暮らし編集室
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