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師匠の教えを松山でまもる 西村啓志

こんにちは!note更新担当のたぬ子です。

今回は、柳井町商店街に弦楽器工房”La chiave di bassoラ キアーヴェ ディ バッソ”をかまえる、弦楽器製作家の西村啓志にしむらけいじさんにお話を伺いました。

1台のコントラバス製作に必要な木材は、表板が約15kg、裏板が約25kg。
丸ノミ20本、やすり30本、カンナ10個を使用し
木材の8~9割を削ることで完成品は10㎏前後に。

[プロフィール]
■氏名
 西村 啓志(にしむら けいじ) 
■ジャンル
 弦楽器製作家
■連絡先
 住所:〒790-0014 愛媛県松山市柳井町1-11-1 ステクルビル3F-C
 Tel:090-6886-4309 Mail:liuteriabasso@gmail.com
■経歴
 1989年9月6日 愛媛県松山市出身。
 幼少よりピアノや木工に触れ、県立松山西高校吹奏楽部でコントラバスを担当したことから弦楽器職人を目指す。
 2010年 国内の弦楽器修理製作専門学校入学。
 2012年 専門学校卒業後、渡伊、地元松山で開業できるだけの技術を身に着けるため、また、日本には少ないイタリア派のコントラバス製作を学ぶためイタリア・クレモナ留学、国立クレモナ国際弦楽器製作学校入学。
 在学中コントラバス製作を得意とするクレモナの弦楽器製作家、マエストロMarco Nolliに弟子入りし、マエストロの工房で弦楽器製作、修理、調整の研鑽を積む。
 2019年12月 マエストロより独り立ちの許しを得て日本帰国。
 2020年4月 愛媛県松山市の柳井町商店街で弦楽器工房“La chiave di basso"開業。
 コントラバスを主に、チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンなどの製作、修理、調整を行う。
■SNS
 ・Facebook
 ・Instagram

楽器と工作が好きな少年

ー弦楽器製作家になろうと思ったきっかけを教えてください。

 母がフルートやピアノを教えている影響で、2~3歳ぐらいからピアノをやっていて音楽や楽器が好きだったこと。
 建築士だった祖父のノコギリやトンカチを使って、工作するのが好きだったこと。
 この2つが重なって、「弦楽器を作ろう!」と決めました。

ー弦楽器以外の楽器を作ろうとは思わなかったんですか。

 元々低音パートが好きで、小学校でチューバ、中学校でバリトンサックスをやっていました。
 もうそのころから、「楽器を直す仕事をしよう!」と思っていたんです。
 そこから、「もっと低い音、低音らしい低音はないんだろうか」って探していた時に高校でコントラバスを始めて、コントラバスのバスらしい理想ど真ん中の低音に魅了されました。

ーコントラバスの音に惹かれたんですね。

 そうですね。普通の感想になっちゃうんですけれども、太くて全てを包み込むような音に惹かれました。
 それに、低音パートって動きのない旋律を演奏するイメージですけど、コントラバスは意外と動きの激しいベースラインもあって、ただの伴奏楽器だけではないところに、いろんな可能性を感じます

要望とこだわりのバランス

ー弦楽器の製作、修理、調整をされていますが、内容によって気をつけることは違いますか。

 基本的にはどれも一緒で、「お客さんの要望にできるだけ添えるように」ということを一番に考え、そこに「自分のこだわりやスタイルをどう組み込むか」ということをプラスして作業しています。

 ただ修理の場合は、より良い修理方法が考案された時に、再修理や再調整が可能なよう、できるだけ古典的な方法を使うようにしています。
 だから、自分が入り込む余地はないですね。

第一歩は渦巻きから

ークレモナ(イタリア)では、どのような修行をされたんですか。

 弟子として最初に任されたのは、渦巻きを作るところですね。
 それができたらその続きのパーツ。その次は別のパーツ、更に別のパーツというふうにいろんな箇所を部分ごとに任されていくうちに、全部作れるようになります。

 そういった技術的なことも教えてもらいながら、工房の掃除や買い出し、お客さんが来た時のお茶汲みなどの、下働き全般をやってました。
 あとは師匠が修理してる時の助手もやりましたね。
 手術なんかでお医者さんに助手が道具を渡すように、お客さんが持ってきた楽器の状態から、師匠が求める道具をある程度予測して言われたらすぐに出せるようにしたり。

ー1台作れるようになるには、どのぐらい期間がかかるんですか。

 どんだけかかったかな。
 師匠に「もうお前は全部分かってるから、帰っていいよ」って言われたのは、確か2019年の最初の方なので4年かな。

ー修行の終わりは突然やってくるんですか。

 人によって違うんですけど、僕は「啓志、お前はもう大丈夫だろ」とポロっと言われましたね。

イタリアの様式と音を守る

ー西村さんのこだわりを教えていただけますか。

 師匠の教えを守ることですね。

ー教えとは。

 弦楽器製作におけるイタリア派の様式です。

 弦楽器にはドイツ派とイタリア派があって、寸法やスタイルが違うんですよ。
 ドイツ派はどことなく角ばっていたり丸みが堅く。
 イタリア派はとにかく丸く、かつ全体のプロポーションは良く。

 ドイツ派のように角ばっていた方が音響的にはいいんですけれども、イタリア派は全体的なバランスを上手に取って、良い音と形を両立させている。

 結局、それぞれのスタイルがドイツらしい、イタリアらしい音を作っているので、師匠から習ったスタイルや縁の処理などをできるだけ守っていくようにしています。

ーどのような音を目指して、弦楽器を製作されていますか。

 製作方法にイタリア派とドイツ派があるように、演奏方法にもヴァイオリンと同じように上から弓を持つフレンチ式と、下から弓を持つドイツ式の2種類あります。
 日本のコントラバス奏者はドイツ式で演奏することが多く、”コントラバスと言えばドイツ”という考えが日本には根強くあるんですよね。

 でも、イタリア派の低音の中にも軽やかさや華やかさがある明るい低音を、好むプロ奏者の方もいるので、そういう方に向けてイタリア派の弦楽器を作り続けていきたいと思っています。

好きな街で一生を終える

ーなぜ、松山で工房を開きたいと思われたんですか。

 明確な理由はないんですけど、
 松山がとにかく好きで、松山で生活して、松山で死にたかった

 なので、最初は海外に留学する気は無かったですね。
 でも、花園町で弦楽器の修理をしている仲田さんに「東京で10年勉強するよりも、海外で2~3年勉強した方がためになるから留学した方がいいんじゃないか」というアドバイスをもらい、留学を決めました。

 実は、師匠に「イタリアで開業しろ!松山に帰ったって仕事は無いんだからやめておけ!」って止められたんですけど、「僕は、松山が好きだから帰ります!」って帰ってきたんですよ(笑)

弦楽器を広める環境づくり

ー今後、愛媛でやっていきたいことをありますか。

 弦楽器のコンディションを整えたいですね。

 愛媛の人は大阪や東京で楽器の修理することが多く、運賃や修理費用が高いからって滅多に調整に出さなかったり、修理せず壊れたら放っておくことが多いです。
 問題を抱えながら演奏している人も、結構見受けられますね。

 今の環境は、県内の演奏者にとっても良くないし、演奏を聴きに来てくださるお客さんにとっても良くない。
 なので僕は、この状況を打破したいんです。
 愛媛に楽器の状態を相談できる環境があれば、定期的なメンテナンスもできるし、常に楽器を良い状態で保つことができますよね。
 そのためにまず、工房の存在を皆さんに知ってもらって、気軽に訪れてもらいたいです。

 そして、良い状態の楽器を演奏し良い音を聴いてもらうことで、県内で弦楽器をやりたい人や続けたい人が増えるといいですね。

絵しりとり くま ⇒ ま○○○○

 イタリア語で「もう、どうでもいい!!」って言葉が、”ま”から始まるんですが、それを描くのは難しいんですよね…(笑)

 ちょっと、工房にあるもので考えてみます。


ということでゆかりアーティスト14人目にして、初の外国語です!
スペルを左上に書いていただきましたが、たぬ子は読み方をもう忘れてしまいました(笑)
しりとりで重要な最後の文字だけは、しっかり覚えてますので安心してくださいね。

\南海放送のNEWS CHANNEL 4でも特集されてました!/

【公式】南海放送NEWS(チャン4)より


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