見出し画像

❝NO DOG,NO LIFE❞ 犬がおうちにいるだけで #いい部屋ペット

昨今、コロナ禍のステイホームのためかペットブーム。だけど本来、犬は一時的な「ブーム」で飼っちゃいけません。10年や15年、ひとつ屋根の下で暮らす相手なんだから。ニンゲンでいうところの結婚相手を選ぶのと同じくらい、よぉく熟考して、自分の性格やライフスタイルなどとマッチする犬を選ばねばなりません。それだけの覚悟をもって迎えた四本足の家族は、ときに二足歩行の家族以上(!)に、ハッピーを与えてくれます。すごいよね、犬って。犬のいない暮らしなんて、もう考えられない。

そんな私ですが、今年2月、11年半以上ともに生きた大事な犬が、全身に転移したT-リンパ腫というガンであっと言う間に死にました。頭が真っ白になりました。そのうえ残されたもう1頭の老ボクサーがガックリし、歩くことすら嫌がるようになってしまいました。このままでは本当に後追いで死んでしまうかもしれない。そんなのイヤです!

そこへ救世主現る。3月、元保護犬のウシちゃんがやってきました。

画像1

お誕生日はわからないけど、推定1歳弱のウシちゃん。ホルスタイン牛みたいでしょ

幸せなときも辛いときも。いつか死はやってくる

犬歴35年、猫歴32年の雑文家兼犬学研究家の白石かえです。犬なしに私の人生はもはや語れない、公私にわたりどっぷり犬漬けの毎日を過ごしています。

画像2

腹部エコー検査中のクーパー。努力もむなしく、治療法のないガンでした

しかし今年2月、私のジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパーが享年11歳8か月で死にました。先代のワイマラナーは享年16歳8か月まで生きたから、まさかこんなに早くお別れがくるなんてこれっぽっちも思っていませんでした。1月中旬のある朝、クーパーがごはんを「いらない」といいました。こんなことは初めてだったので仕事を休んですぐ病院へ連れていきましたが、1週間後には「余命1週間」と言われ、その3週間後に亡くなりました。食欲不振になった日から、たった1か月。あまりにも急なお別れです。ただ、泣いてばかりもいられないので犬ライターのはしくれとして獣医療に貢献できればと思い、仲のいい獣医さんに献体を申し出ました。解剖にも立ち会いました。クーパーの臓器は、未来の犬たちの病気の早期発見のためにきっと役に立ってくれるはずです。

画像3

2020年の春。1年前は、クーパー、メル、黒猫まめちゃんと平和に暮らしていました

昨年7月には黒猫も16歳で亡くなっており、動物と死別する悲しさ、闘病中の辛さも身に染みたばかりです。動物と暮らすということは、ハッピーなことばかりではありません。

でも、こういう現実もきちんと伝えていくべきだと思って、この仕事をしています。いいときもあれば、悪いときもある。幸せなときもあれば、辛いときもある。

だけど、それでも私は犬と暮らします。それは、辛いことや悲しいことをはるかに上回る幸せをいっぱい与えてくれ、いっしょに共有できるからだと思います。

生きる力を与えてくれる相棒を探そう

クーパーが亡くなると、10歳半で心臓に持病があるボクサーのメルがガックリしてしまいました。メルは生まれてこの方、常に四つ足の仲間と暮らしてきました。クーパーがいないと散歩で歩くのを拒みます。膀胱炎もすぐひどくなりました。目もしょぼしょぼして元気がない。しかも彼女の犬実家(ブリーダー)のもとにいた同い年の従姉妹犬も「先月1頭が亡くなったら残された1頭が5日後に亡くなった」と聞きました。これは本当に危機的状況。どこかにメルの群れになってくれる犬はいないだろうか。

画像4

昨年秋に車椅子をオーダーメイドしたメル。クーパーと一緒ならよく歩いたのに

後ろ足も弱くなって車椅子利用のメル。でも精神的には気丈。そんな彼女のプライドをへし折らず、かといって頑固なボクサーの一喝にもへこたれない脳天気な性格のコがいたらなぁ……と思って探していたら、たまたま見つけてしまった飼い主募集中の白黒のポインターミックス。保護犬から探した理由は、メルとの相性を考えて、子犬ではなく性格がある程度想定できる年齢の犬がよいと思ったからです。

けれどもクーパーの死から日が浅すぎる。これは裏切り行為ではないか。そしてペットロスのダメージで、正しい判断ができていないのではないかとも考えました。衝動買いならぬ衝動飼いはいけない。よく、よく考えて。本当にいいの!? メルのためだけでなく、このコも一生幸せにできる?

夜中、自問自答。冷静になろう。客観視してみよう。ふむ、たぶんこのコは実猟系のポインターだな。こりゃ運動量も猟欲も激しいぞ。でも私は今まで猟犬を4頭飼養してきたし、そのほかコーギー2頭、ボクサー1頭の経験もあるから、体力的、トレーニング的なことはたぶん大丈夫(生き物なので「絶対大丈夫」とは言わない)。

それにしても、なぜ保健所に収容されたんだろう? 猟犬不適格とされたのかな。脱走癖があるのかな。いろいろなことをシミュレーションしました。迎えてから「想定外だった」は避けねばなりません。

もちろん家族の意見も聞きました。迎えるのは家族全員です。誤解を恐れずに言うならば、赤ちゃんがひとり増えるくらいの協力体制が欠かせませんし、全員の賛成なくして迎えることはできません。

数日後、家族会議の末GOサインがでたので、ドキドキしながら団体さんに連絡しました。自分が拾った犬猫は飼ったことがありますが、愛護団体から譲り受ける保護動物は、そういえば初めての体験です。

密に連絡を取り合い、実際に毎日お世話をしている「一時預かりさん」にそのコの性格、運動量、ほかの犬に対する態度、注意点などを詳しく教えてもらいました。またこちらの住環境、家族構成、職業、犬の飼育経験などを伝えました。とことん情報交換することは、彼の将来にとってベストは何かを考える上で有意義な時間だったと思います。

そしてついに、彼はわが家にやってきました。牛柄なので「ウシちゃん」と命名!

画像5

九州っ子のウシちゃん、代々木公園(東京都渋谷区)に初めて立つ!

大事なことはぜんぶ犬から教わった

わが家に慣れてくると、ウシちゃんはだんだん本領を発揮するように。イタズラや自己主張も激しくなってきました。

画像6

ウシちゃんが家族に加わってから、メルの目の輝きが違う。覇気が戻った!

けれども、メルにはものすごくいい効果がありました。ヤンチャな小坊主といっしょなら、散歩でシャンシャンよく歩くのです。しょぼしょぼしていた目も、パキーンとキラキラ大きく見開き、目力が戻りました。ウシちゃんがバタバタとリビングで走り回って、ドンとぶつかったりすると、メルはバウと一喝して教育的指導をします。ウシちゃんは「えへへ〜」とおなかをだして、謝っているのかごまかしているのかわかりませんが、犬同士うまく上下をつけたようです。

画像7

リビングのベッドで、なぜかよくシンクロしているおふたりさん

ふと見ると、ベッドの上で体の一部分をくっつけて寝ていて微笑ましい。なんだかんだと言って仲良くやっています。その姿を見ると、ウシちゃんを迎えて本当によかったなぁと思います。やはり犬は群れの動物なので、お互いの心の安定にひと役買っているのは間違いありません。メルちゃんにとっても、ウシちゃんにとっても、お互いがかけがえのない存在。この選択は正解だったとしみじみ思います。

画像8

いつの間にか和解。体の一部をくっつけて眠る姿は本当に可愛い

文頭の方で「動物と暮らすということは、ハッピーなことばかりではない」と書きました。たしかに、手間もお金も時間もとられます。しつけで悩むことも少なくありません。そして死別は、とてつもなく悲しいです。世界がモノクロームになったかと思うほど、心がクラッシュする日がいつかは来ます。

でも。
それでも、私はまた犬と暮らします。犬は、命の儚さとともに、命の尊さ、輝きを教えてくれます。1日1日の、ありふれた平穏な日常が、どんなに儚く尊く幸せなことなのか。そして嘘のない信頼関係、生涯変わることのない愛情が確実に存在するという安心感と悦び。ニンゲンより短い10数年という犬生を通じ、強烈なメッセージをくれます。文字通り、命を賭けて。

画像9

ボクサーのメルちゃんは、ムスメの犬。いつだってムスメのことが大好き

私は、今日もとなりにメルとウシちゃんがいることが本当に幸せです。犬がおうちにいるだけで、家の中も、心の中も、明るくキラキラするみたい。生きてるって素晴らしい。相棒がいるって嬉しい。クーパーもきっと空の上から安心して見てくれていると思います。

画像10

天国のクーパー。白石家は、クーパーのことを忘れない。見守っていてね


プロフィール
白石かえ
広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。
その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。現在、ボクサーのメルちゃん(メス)、ポインターミックスのウシちゃん(オス)、ニンゲン2と暮らしている。趣味は、犬と野山へ行くこと。
▶執筆サイト:dogplus.me 犬種図鑑
▶ブログ:バドバドサーカス
▶主な著書:
東京犬散歩ガイド
東京犬散歩ガイド武蔵野編
ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)
うちの犬—あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本

*  *  *

ペットも人も、お互いに、幸せに。いい部屋ネットは、それぞれの暮らしのレベルアップを応援しています。「#いい部屋ペット 」のハッシュタグでは、本記事へのご感想や、皆様のペットへの想いを集めていきたいと思っています。どうぞ宜しくお願いいたします。

いい部屋ネットのペット可物件特集

画像11