本の虫

「発信は幼児にもできる。読むことは、文章だけの独擅場だ」と言ったのは、先日亡くなった劇作家の山崎正和さんである。俳句然り、音楽然り、作ることより味わうことの方が難しい。

最近、サルトル「嘔吐」を読んでいる。じつは購入したのはずっと以前なのだが、そのときは途中で挫折してしまった。細かな筆致が遅く感じられ、存在や実存という語になじめなかった。それが今、ようやく読める。

文章には、何かそれを一つ読みさえすればすべてが分かるような、真理のようなものがあると思っていた。でも違った。文章は、世界は果てなき問の連続なのだ。だからこそ難しい。だからこそ面白い。

 秋 過 ぎ て 冬 来 た れ ど も 本 の 虫

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