脇内高山

脇内圭介×高山実花―― 『ふくしゅうげき』出演者インタビュー

2018年9月13日(木)開幕ブルーエゴナク「ふくしゅうげき」インタビューシリーズ第2弾。

今回はブルーエゴナクや穴迫演出作品に数多く出演する俳優:脇内圭介(飛ぶ劇場)・高山実花の2人にインタビュー。旗揚げ当初から劇団に関わり続ける2人から、エゴナクの作風や演出において『変化したもの/変わらないもの』について話を聞いた。


―ブルーエゴナクで最初に出た作品はなんですか?

(脇内) 僕は劇団になる前から穴迫さんのコント作品に出てました。ライブハウスでやっていたコントシリーズで呼んでもらったのが初めてです。そこからエゴナク作品には何本出てるのかな…分からないですね。きっと男性では僕が最多、女性では高山さんが最多です。

(高山) 私が最初に出演したのは『サヴァリー ナトロメイド(2013)』です。その作品もライブハウスで上演しました。『ふくしゅうげき』にも出演してる田崎小春ちゃんも出てて、かつエゴナク初のツアー公演でした。

―2人から見てエゴナクの変化したところを教えてください。
(脇内)昔の方が迷いがない感じでした。突き抜けてるというか、穴迫くんが「こうやりたい」というのがあって周りはとにかくその通りやってみるイメージ。なので、その枠にハマるのが難しかった人もいるし、勢いで一緒に"ばっ"と波に乗れちゃう人もいるし、でしたね。

今はかなり悩みながら作ってるなと思います。例えば今作の『ふくしゅうげき』は再演なのもあると思うんですけど、初演の時は目指す形が最初から彼の頭の中で決まってたんだろうなと思います。今回は、完成系を稽古の中で崩して、また新しく構築しようとしてます。単純に初演の再現は目指してないなという感じを受けます。

僕は京都版も見たんですが、それも北九州公演と随分違う印象でした。今回の東京公演は、その京都版ともまた違うものにして行きたいのかなぁって。今回の作品を作る過程を稽古場で見てても思いますね。正解があるというよりはどうしようって悩んでるなぁってすごく感じます。

「ふくしゅうげき」北九州初演 (2017.1月)

「ふくしゅうげき」京都ver. (2017.4月)

(高山)私はそうですね、稽古の仕方と稽古で使う言葉が変わったなと思います。昔も今も内容的には同じことを言ってるけど、特にここ2年くらいはちゃんと伝わるようにすごい言葉を選んでるなぁっていう部分がありますね。作品自体も最近は伝わる作品になってきている気がします。私が初めてエゴナクを観たのが一番訳わかんない『悪者とオプマジカリアルテクノ』っていう作品で、もうタイトルからして分かんないですよね(笑)。脇内くんも出てたんですけど、本当に「なんじゃこりゃ?全然わからんぞ」っていう….あれ、なんて言うんだろうね…カオス?

(脇内)カオスですね(笑)。2時間40分くらいを4人でやってるんですけど、全員が持ち寄った小ネタをずっとやる作品でした。本当にやりたいことを全部詰め込みました、みたいな。物語なんてなかったですね。

(高山)そういう作品は最近はない気がします。洗練されてる…というか選んでるのかな。そういう意味でも悩んでるのかなーって思います。

ー何故悩みながら作るようになったと思いますか?
(高山)昔から悩みながら作っていたんだとは思います。それが今の稽古でも顕著ですけど、試して、やめて、また試して、やっぱりやめてっていうのを繰り返してる。最近はそういう作り方が多いのかなって。

(脇内)しかも今回は再再演だから余計そういう気持ちもあると思います。初演の通りに作れば楽だけど、穴迫くんの感覚も変わってきてるしそうはいかない。それに俳優としてもそういう作り方の方が楽しいです。

最近はモノレール公演だったり外部での仕事も多い中、エゴナクでやる時は徹底して自分が今作りたい物を具現化したいんだと思う。その時に、じゃあ今の自分ってどうなんだろう?ってことを沢山考えてるんだろうと思います。だからこそ悩んでいる様子も隠さずに色々試しながらゆっくり進んでいくというか。

―反対に変わらないところは?
(脇内)音楽的なとこはブレないです。エゴナクは全体的に台詞よりも、音楽が聞こえてる印象が強い作品が多い。昔はもっと本当に「むしろ台詞全く聞こえなくていい」みたいな使い方もやってたんですけど、さすがに最近はそこまでないですね(笑)。きっと今は「台詞もわりと聞こえた方がいい」って感覚で作ってると思います(笑)。

昔は本当に芝居をやってる側も「これ、音楽しか聞こえないけど観客の人、何言ってるのか全然わかんないんだろうな〜」ということが多かったですね。その大音量の中で「聞こえんのやろうな〜」と思いながら喋るんです。会話は意外と成立するんですよ、頑張ってかすかに聞こえる声を拾います(笑)。

あと"独白"は昔から多かったですね。その独白のときに後ろで音楽をガンガン流す(笑)。今回の『ふくしゅうげき』も独白ありますしね。最初の頃から結構多いな…そう言えば全部の作品にあるって言ってもいいくらい。

―演じる登場人物のキャラクターの印象は?
(脇内)最初の頃は僕に寄せて描いてる感じがしてましたけど、最近はそうでもないです。例えば今作でいうと僕が演じるのは常に不機嫌な人物。基本、僕にはあんまりそういう部分がないんですけど、そこを逆に引っ張り出してきてるというか。他にも京都に行った作品だと、変なおじさんの役とか、それもまた自分に全然ない要素でしたし。

(高山)私も同じ感覚です。例えば他の劇団や作品に呼ばれたときに私はコメディ的な部分を担当させてもらうことが多いのですが、それをエゴナクでは求められていない感じがします。封じられてる?

(脇内)そう、"封じられてる感"あります。例えばいつもの僕だったら、ギャグのようなおちゃらけた感じでやったりすることもあって。そしたら「ふっ」って止められるんです。「そこ抑えてやってみて」みたいな感じで。それは穴迫くんの中で、俯瞰的に見る意識を前よりも強く持っているというか。だからと言って分かりやすさを求めているわけではないと思うけど。

(高山)その人の「癖」とかを削ぎたいのかなって思いますね。
(脇内)それはあると思いますね。役者のエゴみたいな部分は一旦端に寄せてみようという感じ。端に寄せっぱなしのことも多いけど、時々「あ、それ採用」みたいなこともあります。「あ、これはOKなんだ」みたいな(笑)。

―エゴナクに何を求められていると思いますか?
(高山)わっきーは穴迫さんの中で"いると安心できる存在"なんだと思う(笑)。
(脇内)僕はエゴナクでは、そんなメインになる役はないんですけど、なるべくいろんな人達をつなげるというか、そういう役割はしなきゃいけないなと意識してる部分はあります。目立ち過ぎてもという部分はあるかなー、でも役者として印象薄いのも嫌だしどうしようみたいな。自分の中で葛藤はある気がしますね(笑)。

―エゴナクの作品で信用しているところは?
(高山)客観的目線。
(脇内)うん。
(高山)お客さんの目線をすごく意識している気がします、特に最近は。お客さんが作品を観ていて"ストレスを感じないか"を意識している気がします。さっきも言った「癖」を削ぐのもそれと同じ意味合いなのかも。余計なことに気を取られなくてすんで、純粋に作品に集中できるみたいな。そこを信用しています。


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