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ホラーシリーズ 『グアム出血大サービス!』



夏の暑さも引き、そろそろホラーシリーズの季節
も終わりとなるなと、あと三編程、私のホラー系
の実体験を書き納めておこうと思う。


とは言え、相当に前のお話であるので画像などは
全てネットからの拾い画像を添付してのものとし
ホラーとタイトルを打ちながら、オカルトなどの
ゴースト系のお話ではない。九死に一生レベルの
お話でもなく、もっとゆる〜いレベルのものだと
冒頭に注釈を付け加えておく。


それは今から四半世紀ほど前の話、当時に私が
所属してた映画サークルでグアム旅行に行った時
のお話。映画サークルは映画付きが毎月、課題の
必須鑑賞の映画を観た感想と、その他鑑賞後での
映画話を酒の肴にしてワイワイ語り合うサークル
であった。ローテーションで担当月が回ってくる
と月に映画を10本以上を劇場鑑賞してリポート
にまとめる順がやってくるのだが、何分にも多忙
な私だったのでそれが理由で途中で辞めたのだが
そんな映画サークルの面々とのグアム旅行に行き
ワイワイした時のお話である。



ハワイよりも近いグアム、みんなが行くから私も
行く、みたいな感じでの参加であった。この当時
の私と言えば、特に日記を書くでも記録を残す事
もなく、そして相当前の事でもあり、どのホテル
に泊まり、どんなビーチに行き、何を買ったのか
すらもほぼ覚えていないと言う体たらくである。




ただ唯一、覚えているのは、海の中で私が今から
述べる、アクシデントへの遭遇の話であり、その
場面だけは鮮明にリアルに思い出す事ができる。


グアムと言えば当たり前だが島国であり、マリン
スポーツと買い物を楽しめるリゾート地である。
我々のサークルでもガンシューティングの他には
やはりマリンスポーツアクティビティやろうよと
そのツアーに参加をすれば、ほぼぼぼ網羅出来る
ツアーに申し込む。マリンバイク、バナナボート、
パラセイリングを楽しんだ我々、その最後に体験
したのは、少しだけ沖へボートで運ばれた場での
シュノーケル体験である。


注)前述の通り、この時の写真はデータは残って
なく、全ては拾い画像によるものである。


洋上にしっかりとしたウッドデッキが円形にあり
その上で、シュノーケル付きのゴーグルとフィン
を装着して、それぞれが海へ次々に身を投じる。
私もそれらを装着してエメラルドグリーンの海へ
入った。


そんなには深くもなく、澄んだ透明な海は美しい
のだが、そこにあった珊瑚は死んで真っ白のもの
ばかりである。実際に波があると珊瑚は危険生物
にもなる。元気で鋭角な珊瑚礁の危険性は私とて
知っている。だから、これはこれを楽しめば良い
とそのレベルで海の中の魚を楽しんだ。もちろん
スキューバダイビングなど、身体全身プロテクト
しての装備なら危険な看護の中でもヘッチャラで
あるが、我々の今の装備はシュノーケルゴーグル
とフィン以外はほぼ裸に近い水着一枚のみなので
ある。だから、こんなエリアで楽しめば良い。


黒い小さな魚が、ナワバリ意識が強いのか果敢に
こちらを威嚇してくる。こんな小さいのに凄いな
と感心していたら、ウチのサークルのメンバーが
海の中でその魚に蹴りを入れようとしているのが
見える。もちろん海の中の蹴りなど威力も半減し
また届くわけもなく、海の中だけど私はゴーグル
越しに腹を抱えてケラケラと笑っていた。


と、その時である。


ガツンと何かものすごい衝撃を私は膝に受けた。


あまりの衝撃の強さと、その痛みにビックリした
私は海面へと浮上したのである。その時に私の頭
の中に過ったのは、ピーター ベンチリーが原作の
ジョーズを読んだ時の一節、真っ暗な海で女性が
泳いでいて同じ様に足に凄い衝撃を受けて、その
箇所を確かめようと探ったその指先には失われた
脚の切断面であったというシーンが蘇って、私は
その箇所を視認してみる。脚はちゃんと付いてた。
だが、ユラユラと血液が凄く流れている。何かが
当たったのだろうか?ダツ?、カマス?さっきの
ちびっこの黒い魚か?辺りには珊瑚はない事から
魚が犯人だと思われるが、その姿が確認できない。
海藻の様に赤いのをユラユラさせている私の血。
男の中には血液を見るとギャッとなる者もいるが
私は意外とヘッチャラである。縞蛇に噛まれた時
も大量に血が出たし、愛知県岡崎市の伊賀川では
亀やザリガニ目的で川に入った後に上がると足に
無数の吸血性ヒルが群がってて、そいつらをピン
ピンと跳ね飛ばすと脚には幾筋もの血が流れてて
オモロイなと楽しんだものである。



膝はジンジンと痛みはあり、血液は一向に止まる
様子はない。海の中を私の赤い血がユラユラして
何となく綺麗である。

GSHOCKを見る。30分のシュノーケルタイム
のたったの5分しか経っていない。後の25分が
勿体無い。いいわ、このままシュノーケルを続行
しようぞ。男が小さなことを気にしててはいかん
とそう思って再び、下へ潜る。こんな傷を付けて
くれた犯人探しもしたいと思ったのである。だが
しかし再び潜った美しい南国の海のエメラルドは
ウキウキ感が半端ない。この幸せな時間は、一体
なんなのだろう。このまま永遠にこの世界の中で
過ごしたい気持ちにもなる。と出血しながら南国
のオアシスに浸る。


サークル仲間が近くに来て『足から血が出てる』
のジェスチャーをしてくる。そうか、他の人から
見てもそんなにもこの出血が目立つものなのか。
私は『いいのいいの、こんなのヘッチャラだよ』
とジェスチャーした記憶があるが果たしてどんな
ジェスチャーだったかは覚えてはいない。


ノコギリザメも、小魚の大群の中へと突進しては
傷ついたのを捕食するのだったな、あのノコギリ
ならこのキズはありあるがあんなのは見てない。
ハリセンボンは膨らめば鋭利な棘が凶器にはなる。
あれは自己防衛の為に鱗が変形したものであるが
やはりこの辺りにその姿は見られない。


後ろを見て、私はギョッとした。さっきよりも魚
の数がもの凄く増えている。なんでこんなに魚が
増えているのだろうか。なんなのだろう、こちら
に多くの魚が寄ってきているな。自分の足元へと
視点をずらすと、小魚達が沢山群がってツンツン
と私の出血してる膝の辺りを次々と啄んでいる。
成程と感心する。この出血を餌だと思っての事か
と妙に納得をした。膝の傷の辺りを魚がツンツン
つついてくすぐったい。いや、ほんの少し痛い。


後ろから肩を叩かれて、上へ上がれと仲間からの
ジェスチャーがあり、強引に上へと上げられる。
ウッドデッキの上でゴッツイ黒人のオッサンから
『ヘイ、ボーイ、即刻、上がれ!』と言われる。
何だよ、まだ時間が残ってるのに仕方がないなと
ウッドデッキに上がり、ゴーグルとフィンを外す。
そのウッドデッキの上は見る見るうちに私の血で
真っ赤に染まっていく。えっ、こんなにも出血を
してたのかと驚いてる私をマリンバイクの後ろへ
と乗っけると、黒人のオッサンは凄いスピードで
ビーチへと向かう。


波打ち際にマリンバイクを停めると、オッサンの
後をついていくと、真っ白な砂浜を私の血が赤く
染めていき、映画プライベートライアンの海辺が
血で染まったあの上陸シーンと同じだと思った。
そのビーチにいた白人達のリゾートバカンス集団
からは『ワオ!』『オーマイガ』などのいつもの
耳に馴染みのある定番のフレーズが湧きおこる。


医務室の中(ほったて小屋レベル)に入ると、
黒人のオッサンは見た事もないくらいにでかい
絆創膏を何枚も私の膝にペタペタと貼り付ける。
バンドエイドに黒人用の色のものがあるのだなと
感心した。大きな黒い絆創膏をチマキの皮みたい
にペタペタと貼るだけの大雑把な治療(?)も
なんだか面白かった。とてもおおらかである。

程なくして、サークル仲間達が戻ってきて大丈夫
かと聞く。『多分、大丈夫でしょ』と私も返す。
私は基本的には楽観主義の超O型なのである。
脚は茶色の絆創膏がペタペタ貼られて滑稽である。


マリンアクティビティが終わり、みんなでバスに
乗り込む。これからジャグラーショーがあるので
ホテルへと戻るのである。バスは意外と右へ左へ
クネクネと曲がるのだが、私のバンドエイドから
溢れ出た血液はカーブの度にバスの木製床の上を
右へ左へと広がっていく。他の客があまりいなく
良かった。到着した頃にはバスの床は血まみれで
スプラッタ映画かと思う光景だった。


海の中でどの位、出血したのかわからないけれど
相当に血を失った気がする。目的の停留所に付き
そそくさとバスを降りてジャグラーショー会場へ
到着する。ショーを小一時間、楽しんみながらも
少し気が遠のいたりもする。出血し過ぎた事にも
影響しているのかな。そんなこんなでショー会場
に灯りが点いたので立ちあがろうとしたら、足腰
が立たなくなっていた。どんなに踏ん張ろうとも
立てなかった。ホテルの関係者がやってきたので
事情を話した。車椅子が持ち込まれて初めて乗る。


そこから先のグアムは車椅子バケーションとなり
他のメンバーが色々と遊んでる間、私は車椅子で
行ける範囲を転がして過ごしたのである。


カリオストロの城で出血し過ぎたルパンを思い出し
肉とチーズをメインに食べた。エレベーターなど
移動の時に西洋人はプライオリティ対応をするが
日本人を始め東南アジア人はその手の意識が低い
事も知った。帰国後の私は一週間は松葉杖生活を
余儀なくされたのである。


そして、あの時に私の膝に深い傷を与えた犯人は
いまだに正体は不明のままである。



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