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大人は楽しい

私が中高時代を過ごした90年代後半は、コギャルブーム真っ只中だった。

あの頃、人生のピークは高校生で、大学生以降は社会というネガティブなものに入っていかなければいけないのだ、と思っていた。
1998年、私は14歳だった。SPEEDなど自分と同年代の中学生が活躍しており、アイドルがどんどん低年齢化していた頃だ。自分も早く何者かにならなければピークが過ぎてしまう、と焦っていたように思う。

エヴァンゲリオンが社会現象となり、援助交際やいじめが問題になっていた。「キレる17歳」世代でもある私たちは、確かに何か言いようのない空気がパンパンになって今にも破裂しそうだった。それが世代によるものなのか、14歳という年齢がそうさせるのかは当時の自分にはわからなかった。

ノストラダムスによると、1999年に世界は終わるまであと一年。世紀末の空気感と相まって、大人にならないまま、このまま世界は終わるんじゃないかと思っていたし、うっすらと絶望感がずっとどこかにあった。

「仕事なんてみんな嫌だしやりたくないんだよ」「大人は辛い、子供のうちに楽しんでおきな」
みんな、そのうち死んだ目をした大人になる。仕事の愚痴を言いながら、ただ消化試合を過ごす人になる。

そんな折、ラジオから「大人は楽しい!yeah~」という曲が流れてきた。
「楽しくないなら 早く大人に 楽しくないのは 子供だから」
一度聴いただけだったけど、妙にインパクトがあった。

この世界が苦しく生きにくいのは子供だからで、大人になったらさらに自由がなくなるわけじゃない。それがわからないのは、大人が子供に世の中の秘密を隠しているから。早くこっちにおいでよ、と歌う。

キラキラした楽しさではなく、「パワー」「お金」「メイクラブ」とやや不穏ながら子供の世界にはないもの、そういう部分こそが楽しいんだよ?と舌を出しているような感じだ。

閉塞感でパンパンだった空気が抜けていく感じがした。

そんなことを何となく思い出して、調べたらアーティストは「エレファント ラブ」メンバーにYO-KINGがいるグループだった。
聞き直したら結構細部まで覚えてる。底抜けに自由を肯定してる、いい歌詞だ。
大人の楽しいことに「携帯」が入っているのが時代を感じて笑える。


結果、世界は滅亡しなかったし私は大人になった。

私は勉強を頑張って希望の大学に進学し、念願の上京を果たした。どこにでも行ける自由と自分の足を手に入れた。

今から思うと14歳のあの時期が一番生きづらかった。確かに子供だったし、行動も思考も自分で選べず、そこから抜け出そうともがいている時期でもあった。

結論から言うと、大人は超楽しい。



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