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#2 暗号資産は希少性の乗り物になりえる?


前回書いたコラムでは暗号資産はあらゆる資産の表現方法になるというbalajiのtweetを紹介しました。今回は「それほんまっすか?」という点を考えてみたいと思います。

情報はそれ自体で成立するが、希少性は相対的に成立する

<前回の引用>
・programmable information:全ての情報の表現がパケットに変換され、ネットワークに送られる
・programmable money:全ての希少性の表現が分散台帳の記入に変換され、チェーン上で操作される

「情報とインターネット」と「希少性とブロックチェーン(=分散台帳)」という対比を用いた主張ですが、情報はそれ自体で成立するので規格化されたフォーマットがあればOKという話に対して、希少性は相対的にしか成立できないのに情報のように表現を統一すればOKという話なのでしょうか。希少性を表現するにはどういう条件が必要でしょうか。

「りんごが赤い」という情報はそれ自体で意味をなします。受け取り手がこの情報をどう解釈するかは様々だと思いますが、情報の意味するところは「りんごが赤い」以上でも以下でもないです。なのであとは情報がどれだけスムーズに伝達されるかで情報の活用の幅が広がると考えると、インターネットによって情報の価値がぐんと引き上がられたことは納得だと思います。

一方で1コインという資産があるとして、この希少性は1コインだけを眺めていてもわかりません。全体で100あるうちの1コインなのか、1億あるうちの1コインなのかで希少性が変わってきます。なのでブロックチェーンによって全体の数量とそれぞれの資産の所有者が、関与者が納得できる形で明らかにできれば、暗号資産は希少性の乗り物として成立しそうです。

そして(技術的な話は省きますが)ブロックチェーンはまさしくこれを実現できる技術(というかエコシステム)と言えます。Bitcoinを例にすると次の2つがこの性質に大きく寄与しています。

1) BTCがいつどれくらい発行されたか、どのアドレスからどのアドレスに移ったかを最初からすべて確認することが可能
2) 過去の状態を特定の誰かが変更することが極めて困難

この2つの性質により、少なくともBitcoinに関してはBitcoin上で表現される数値が希少性を表している、つまり希少性の表現方法として成立していると言えます。

Bitcoinのような価値そのものが暗号資産で表現されているものと価値のシンボルになっているものとで様子が違うのでは?

BitcoinのBTCやEthereumのETHはそこで表現されている数値が直接価値の大きさを表しています。

一方でNFTのような、実態はコントラクト上の識別子で、ブロックチェーン外に存在するデジタルデータを指し示しているようなものはどうでしょうか。NFTとデータ(Metadataと言う)の関連性については、NFTの規格であるERC-721で決められていて、JSONフォーマットのMetadataを配信するURIを持つことができます。

↓がMetadataの例

{
 "description": "Friendly OpenSea Creature that enjoys long swims in the ocean.", 
 "external_url": "https://openseacreatures.io/3", 
 "image": "https://storage.googleapis.com/opensea-prod.appspot.com/puffs/3.png", 
 "name": "Dave Starbelly",
 "attributes": [ ... ], 
}

この中のimageプロパティでさらにデジタルコンテンツの配信元を指定しています。

ところで、ブロックチェーン外のデータの不変性は何も担保されていませんので、配信サーバーで内容を変更したらNFTの中身変わってしまうのではと思いましたが、そこは例えばこういう対応策が考えられているようです


Metadataのダイジェストをブロックチェーンに刻むのであれば、ブロックチェーン上で表現されるNFTとブロックチェーン外のデジタルコンテンツは強く紐づいているとみなせます。なのであるNFTが唯一であるならば、それが指し示すデジタルコンテンツもただ一つのみ存在すると言えるでしょう。

まとめ

BitcoinのBTCのようなブロックチェーン上で表現される数量やNFTで表現されるデジタルデータであれば、全体のうちどれだけの数量なのかやそれに誤りがない事などが確認できるので、暗号資産は希少性の表現方法として十分成立していると言えます。

で、それ以外は?

balajiが言っているのはあらゆる資産クラスでした。証券とか不動産とかリアルなアセットはどうなるのでしょうか。これは考えることが多そうなのでこの話はまだまだ続きそうです・・。

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