木蘭

ラヴィット!とスターダスト☆レビューへの著しく偏った愛情によって成り立っている人間です…

木蘭

ラヴィット!とスターダスト☆レビューへの著しく偏った愛情によって成り立っている人間です。 ホントのこともそうでないことも色々書いてますので、よかったらどうぞ。

最近の記事

2023年を振り返る

今年はねぇ、正直なところあまり良い年とは思えなくて。長年携わっていた愛着のある仕事、小さい頃から可愛がってくれた優しい親戚、敬愛するミュージシャンの方々…数々の失ったものがあまりにも偉大すぎて、未だ喪失感の中から抜け出せずにいる感覚です。 ただ、今年出会ったスマホアプリ「書く習慣」によって2023年が本当に大切な1年になったのも事実です。テーマに沿って文章を考えるのも創作モノにチャレンジするのも、どちらも苦手でず〜っと避けてきたこと。でも、読んでくれた皆さんが❤︎をつけてく

    • 【創作】良いお年を

      「それでは皆さん、良いお年を〜」 そう言って、僕は今年最後の配信を終えた。 「う〜さん、ありがと〜」 「今年もお世話になりました!」 「来年もよろしくです」 「う〜さんも良いお年をね〜」. みんなの温かいメッセージがタブレットの画面に次々浮かび上がる。1年前には考えられなかった光景が今、僕の目の前に広がっていた。 年が明けてからすぐに、最も大切な人と最も大切な仕事を何とも納得いかない形で失った。来るべき時が来たんだと冷静に受け止められたのは最初だけで、日を追うごとに喪

      • 【創作】おうち時間でやりたいこと

        「へー、『人気作家がおうち時間でやりたいこと』ですか。そりゃあ原稿を書くこと、ですよねぇ?先生」 「俺がやりたいことを勝手に決めるな。だいたい、お前が俺のことを先生って呼ぶときはロクなことがないときだぞ、柏木」 「ロクなことがないって、それは締め切りを守らない河野君のせいじゃないですか。今回だって、ギリギリのギリまで待ってるんですからね、セ〜ンセ♪」 高校の同級生だった柏木と俺が、編集者と作家という立場でつきあうようになって数年が経った。学生のころから提出期限を守れない

        • 【創作】風に身をまかせ

          「ええか、コウキ。風に身を任せていれば、人生何とかなる。それでええ」 それが親父の口ぐせだった。 「人生には何度も何度も風が吹く。追い風のときもあれば、向かい風のときもある。そよ風みたいに爽やかに吹くこともあれば、台風みたいに強く激しく吹くこともある。そのときそのときで風の強さや方向を見極めて、自分の身を任せれば無駄な力を使わず生きられる」 その方が、無理することなく楽に楽しく生きられるというのが親父の主張だった。おかげで俺は、10代の前半で受賞した文学賞という「風に身

        2023年を振り返る

          【創作】後悔

          あっ、やべっ。傘忘れた。 いつものカバンになら、小さめの折り畳み傘が入ってたはずなのに。何で今日にかぎって、別のカバンを持ってきちゃったんだろう。 いわゆるゲリラ豪雨の最中、俺は己の行いを激しく後悔していた。そもそも、今朝の占いでラッキーアイテムが「日常使ってるものとは違うモノ」だなんて言うからだ。もっとも、そんな占いを鵜呑みにして以前使っていたカバンを久々に出してきた俺も俺だけど。 「あの、もしかして傘ないんですか?」 そう声をかけてきたのは、同僚の井上ちゃんだ。い

          【創作】後悔

          【創作】愛があれば何でもできる?

          愛があれば、何でもできる。 少なくとも、今の私はそう思っている。愛する我が子のためならば、たとえ家庭科の成績が万年芳しくなかったこの私でも、幼稚園に持っていくお弁当袋くらいは手作りで用意してあげたい。 できるはずだ。いや、できなきゃいけない。なぜなら、私に残された時間はもうあまり長くはないから。 この子がおなかの中にいるとわかったとき、同時に判明したのは悪性の腫瘍があることだった。出産まで治療を止めたら、確実に病気は進行する。が、治療を優先させれば子どもは諦めなければな

          【創作】愛があれば何でもできる?

          【創作】真夜中

          「かぁしゃ〜〜〜〜〜ん‼︎」 真夜中、眠っているはずの息子が大きな声で叫ぶ。夢でも見ていたんだろうか。幼稚園に通うようになってから、時々こういう夜がある。 「ハヤト、どうした?」 俺は、息子の背中をさすりながら名前を呼ぶ。   「かぁしゃんは? かぁしゃんはどこ?」 息子は真っ暗な部屋の中、手探りで自分の母の行方を探そうとする。でも、彼の探す「かぁしゃん」はここにはいない。 ハヤトが生まれる前から闘病を続けていた妻のチハヤは、2年前にこの世を去った。幼稚園に通う我

          【創作】真夜中

          【創作】愛情

          もう永遠に君とは会えない その事実を受け入れられないまま、 時間だけが過ぎていく あれから随分経ったのに、僕が目にする SNSのタイムラインは今も賑やかで 君が愛した人たちと君を愛する人たちが 今日も楽しい想い出を語っている 君からの愛情は今も誰かに届いていて 君への愛情も誰かが届け続けている 君からの言葉と君への言葉が交差するのを 僕は幸せな気持ちで眺めている 時々、すきま風が吹き込んでくるように 君がいない寂しさを感じてしまうけど そんなときも君と君を愛する人たちの

          【創作】愛情

          【創作】どうすればいいの?

          父親が大のジャイアンツファンだった俺は、小さい頃から野球が大好きだった。大学でも野球部に所属し、パワーヒッターとしてチームメイトからも信頼されていた。 2年下の志摩谷は、俺が打撃練習のときには必ずバッティングピッチャーを買って出てくれた。お互い呼吸が合うのか、練習のパートナーとして彼は最適だった。 ところが、今シーズン最初の練習でアクシデントが起きた。運悪く、志摩谷の投球が脇腹に当たってしまった。 その後の診断で、肋骨にヒビが入っていることがわかった。この事実をそのまま

          【創作】どうすればいいの?

          【創作】宝物

          一回り以上歳の離れた彼とは、知人からの紹介で知り合った。初めて会うことになったとき、彼はニコッと笑って自分の職業を「音楽屋です」と言った。このとき、既に彼の作った音楽はCMやドラマの主題歌として起用され、広く世に知られていた。私は世間に疎くてまったく知らなかったのだが、かえってそれが彼にしてみれば新鮮だったらしい。 「僕と家族になりませんか?」 お付き合いを重ねて3年目の誕生日に、彼からプロポーズされた。目の前でひざまずいてバラの花束を差し出す彼は、ものすごくキザでカッコ

          【創作】宝物

          【side B】はなればなれ〜KANさんのこと

          私が利用している「書く習慣」アプリは、毎日夜7時にお題が更新され、ユーザーはそのお題をもとに小説や詩、エッセイなどさまざまな作品を生み出しています。 【はなればなれ】というお題が出たのは、一昨日の夜7時のことでした。当日には書けなかった私は翌朝、つまり昨日の朝から創作するべく設定をあれこれ考えていました。 普段は離れて暮らす家族と会うとか、同窓会で久々に仲間が集まるとか、そんなシチュエーションが浮かびはじめたころ、突然耳に入ってきたのがKANさんの訃報でした。 はるか遠

          【side B】はなればなれ〜KANさんのこと

          はなればなれ

          たとえはなればなれになっても いつかはまた会えると思ってた それなのにどうしてあなたは 早すぎるほどのスピードで 手の届かない遠い遠いところへ 誰にも告げずたったひとりで 旅立ってしまったんだろう 今はもう痛みとか苦しみとか 悲しいことすべてにさよならして 穏やかな気持ちになっているのかな そうであってほしい  たとえはなればなれになっても あなたの音楽はずっとここにある 歌も 言葉も メロディも 声も  もう新作が聴けないのは残念だけど 手を伸ばせばあの時のあなたに会え

          はなればなれ

          【創作】恋物語

          恋をしたから小説家になった、 なんて言ったらあなたは笑うでしょうか。 なかなか眠りにつけない10代の頃、私の傍にはいつもラジオがありました。ボリュームは、いつも絞り気味。流れてくる声も音楽も、微かに耳に入る程度で聴くうちに、いつの間にか眠ってしまうのが日常でした。 その日もやっぱり眠れなくて、いろんな番組をちょっとずつ聴いていた午前2時。 「はじめまして。今日から始まるこの番組、よかったら最後までおつきあいください!」 それから午前5時までの3時間、私はいつもよりボリ

          【創作】恋物語

          突然の別れ

          いつかこんな日が来ることはわかっていた。でも、それはもうちょっと先のことだと思っていた。さよならも告げず、急に旅立ってしまうなんて。 いつの間にか、一番近い存在になっていた。手を伸ばせば、いつでも触れることができた。そばにいるのが当たり前になって、ほんの少しの間でも姿が見えないと、また会えるのだろうかとたまらなく不安になった。 きみがいなくなったこれからの日々を、どう過ごせばいいんだろう。まだしばらくは、きみと過ごしたあの場所で、よく似た面影を探してしまうだろう。季節が巡

          突然の別れ

          【創作】子猫

          コハルちゃん 初めて会ったどしゃ降りの日、あなたは私をこう呼んだ。そして、小さかった私を拾い上げ、部屋に招き入れてくれた。濡れた身体を丁寧に丁寧に拭いてくれた、優しいあなた。もしも私が子猫じゃなくて、あなたと同じ姿だったら迷わずハグしていたと思う。 コハルちゃん 日を追うごとに、あなた以外の人から呼ばれることが増えた。あなたの友達、お仕事の仲間、離れて暮らすご家族や親しくしてくれるお隣さん…みんなあなたのことが大好きだった。だから、私にもすごくすごく優しい人たちばかりだ

          【創作】子猫

          【創作】また会いましょう

          いつもよりは、少し静かだな… 病院の待合にいた私は、こういうときならと、読みかけの文庫本をバッグから取り出した。会計にはまだまだ時間がかかりそうだ。挟んでおいた栞を外し、本文に目を落としたその時だった。 「Hello!」 どこからか、とても発音のいい挨拶が聞こえた。ここは総合病院だから、外国人の患者さんが訪れることも少なくない。あまり気にも留めずに本を読み進めようとすると 「Hello!」 また同じ声が聞こえた。近くにいるんだろうかと顔を上げてみると、すぐ横に小柄な

          【創作】また会いましょう