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日本人とカーテン<1>

これはあくまでも20年以上カーテン業界で仕事をしてきた私個人の考えていることです。


私は旅行が好きで年に数回出かけます。その時に素敵なホテルに泊まったり、ビジネスホテルに泊まったりするのですが、仕事柄ついつい客室のカーテンを見てしまいます。さすが非日常を過ごすにふさわしいお部屋に吊っているだけあって完璧なカーテン納品されてますね!という時もあれば、あれあれ残念だなと思う時もあります。(感覚的には残念な事が多い印象です)

多くの残念は形態安定加工がかかっていない為裾が暴れて(広がって)しまっていること。カーテンのプリーツがぐちゃぐちゃに。

写真のホテルはスタンダードな客室がツインベッドルームプラス畳スペース、バスもセパレートで洗面ボールも2個(これって嬉しいですよね)、全室広めのバルコニー付き。決してリーズナブルを売りにしているホテルではなくて、日頃の慌ただしさを忘れる為のホテル。

チェックインの時はカーテンが開いていてレースだけ。ドレープの畳み代も左側はちゃんと袖壁の裏に収納出来るように工夫されています。お部屋に入った時は広めの玄関、バルコニーからの眺めにワクワク、気持ちも高ぶったのですがカーテンを閉めてみると「わぁ、裾暴れてるなー」と少し興醒めです。

私がカーテンの仕事をしているから気になるだけかも知れませんが。

プリーツが綺麗だとこの様な納まりです。

地厚な生地に遮光裏地を付けたのでこれでも少し広がり気味
ベルベットの生地 形態安定加工してなくても綺麗なプリーツ

上の3ツ山のつまみから裾まで綺麗にプリーツが出ています。形態安定加工もかけていますので、誰がカーテンを開け閉めしてもほぼこの形状は保たれます。

普段多くの従業員さんが開け閉めしてもです。

カーテンってこのプリーツが美しいと思うのです。(プリーツについて掘り下げるとこれまた深くなるのでまたの機会に)

部屋の動線、余計な物は隠せてしまう設計、壁、床の仕上げ材の選定、とてもよく考えられた事が随所に感じられます。またそれを施工する工務店側の苦労も想像するのは容易いです。こだわりの内装材ってカットも難しいし、熟練の職人さんが必要だし、作業スピードも量産的なデザインの現場ほど伸びないですし。

携わる皆さんが大変な想いで完成させた客室に最後設置されたのが綺麗でないカーテンだとしたら、、とても残念です。例えるなら高級オーダーメイドのスーツ、ネクタイ、革靴、時計で揃えているのにシャツだけシワシワ、、な状態でしょうか。カーテン屋の私が思うには。

設計士やデザイナーの想いはそこに反映されているのでしょうか。そのホテルに来られるお客様の中にはご自宅のカーテンを何度もオーダーで作られている方もおられるでしょうし、ヨーロッパや中東、本場の室内装飾を十分見てこられている方もおられると思います。ほんの少しのお客様が違和感を持たれるかもしれません。その時その違和感はおもてなしされるホテルの方々のマイナスポイントにはなってはいないのでしょうか。

この様な状況になっているのには大体想像がつくのですが、それは次のコンテンツで。

とにかく日々私は、少しでも多く、日本に素敵なカーテンが広まればいいなと思っています。


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