説得するのではなく、自分が思いついたと誤解させる
人々が幸福になるためにすべきことが、今後行う研究によって明らかになったとしても、その時点では机上の空論に過ぎません。幸福工学を名乗るのであれば、それを人々が活用し実行する手法までを開発しなければなりません。
他人に言われても行動はできない
研究成果に基づいて「こうすると良いですよ」「こうしていきましょう」と自己啓発本のような文章を書いたところで、それを読んでくれる人がどれだけいるか心許ないですし、さらにそれを実行してくれる人がどれだけいるかを考えると、ほとんど絶望的に思えます。
正直なところ、他人からなにか説教じみたことを言われても、根本は変わらない。「うるさいなー」とか「そんなものか」と思うだけではないでしょうか。
私は人々に幸福になって欲しい(し、それが自分の幸せでもある)との思いで幸福工学を真剣に考えているわけですが、その対象である人々は、幸福になりたいと心の奥底では思っていたとしても、意識的に理解し行動に移すのは、とても難しいことだと思います。
では、1人でも多くの人に幸福になってもらうにはどういう方法があるのか、なんらかの行動を実行してもらうために、どんなやり方があるのか。それが、前回の最後に述べた、3つのすべき研究のうちの2つ目と3つ目、行動経済学の知見が活かせる分野だと思っています。
気づきとは、これまでの前提を壊すこと
他人からなにか言われて納得し行動できる人は稀です。相当に謙虚で理解力があり聡明な人でしょう。今までの自分の常識を疑い、他人からの説得を純真な心で受け止めて理解し納得しなければならないからです。しかしそんな人はなかなか多くはありませんし、もしそんな人がいたら、他人から言われずとも自分で様々なことを学び、自分から既に行動しているでしょう。
私たちが対象としなければならないのは、そういう稀な人々ではなく、むしろ、何かを言われたら腹を立たせて「なぜあなたにそんなことを言われなければならないのか」「あなたに私のなにがわかるというのだ」という反応を示す人たちです。
無意識に選択構造が変化し、行動が変化する
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