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父の行きつけだったという、立ち飲みに行ってみた。

酒場放浪記というテレビ番組で立ち飲みのお店が紹介されていた。父が若い頃、この界隈の製鉄所に勤めていたので、実家へ帰省した際に知っているか聞いてみた。80歳を過ぎ、身体も不自由になった父に動画を見せるととても驚き、懐かしそうに見入っている。あぁ、まだ、あるんか、、と言った。

数か月後の平日休み。ふと、このお店に行ってみようと思った。自宅から行けない距離ではない。酒場は好きなのだが、腰痛持ちのため、立ち飲みはあまり行くことがなかった。場所は、南武支線の終点にある浜川崎。駅前にある小さなお店、浜川崎商店。昔の駄菓子屋みたいな外観だ。

駄菓子屋みたい

開店の16時30分過ぎ、お店に入るとすでに年配の常連さん数人が飲んでいる。テレビで見たままのママさん2人で切り盛り。とりあえず、瓶ビール大と、壁の短冊をみて、ハムレタスを注文する。競馬新聞やテレビを見ながら、日本酒を静かに飲んでいる人、ママさんと会話している賑やかな人。

どうにも間がもたない感じなので、ママさんと江戸っ子風のオヤジさんとの世間話に混ざってみる。聞くとオヤジさんは種子島の出身だそう。奇遇にも父も鹿児島なので、話が盛り上がった。鹿児島のオヤジさんなら、相当厳しいでしょう。はい。そうですね。

小綺麗な店内

父が若い頃、このお店に来ていたらしいこと。自分の故郷は広島の福山であることを話した。するとママさんが、昔はここから福山に移り住んだ人が多かったんですよと。50年以上前。当時、世界最大規模の製鉄所が川崎と福山にあった。聞くと今は規模が縮小し、年内にも高炉の火を落とすらしい。

オヤジさんは、うちは早くに亡くなったけど、長生きして子供孝行してくれてるねぇ。と言った。普通は親孝行だが、子供孝行。初めて聞いた言葉。
そう。たしかにそうだなと思った。

量がたっぷり

徹夜明け、工場から帰る父のような人達が帰り際、ここで一杯やって、一息ついていたんだろう様子が目に浮かぶ。ハムレタスを食べ終わったので、今日のオススメ、らっきょうと野沢菜150円を頼む。美味しいお酒とお料理、しばしの会話を楽しんで、お会計してもらった。

おー、電車の時間だな。ママさんから遠くから来てくれたお礼を頂き、常連のオヤジさんからは、父さんによろしく!と言われた。はい、ありがとうございました。父に伝えなくちゃ。

30分に1本しかない電車の座席に座ると、何故だか分からないが泣けてきた。今年の夏も帰省して、父と一杯やろうと思う。