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知ってる名前を増やす。見える景色をあざやかにする。

昔、日本には色が5つしかなかったという話を聞いた。

正確には、色自体はたくさんあったけれど、色の名前が5つだった。

言われてみれば、お寺などで使われる色も、七夕さまの歌に出てくる五色の短冊も、こいのぼりの吹き流しもみんな5色。

緑色の信号をあたりまえに青と呼ぶのにみんな一度は違和感を覚えたことがあるだろうけど、それもその頃の名残と思えば納得できる。

たった5つしかなかったなんて!と驚くけれど、色問題は、昔に限ったことじゃない。


日本ではあたりまえに7色の虹も、国によって何色あるか違うって言うよね。

多い国では8色、少ない国ではおどろきの2色。


昔の日本や、虹が2色の国には色がないのかというと、そんな事はある訳ない。ないのは、言葉なんだ。

言葉があれば、そこにあるものが見えてくる。

5色分の名前しかないときは赤でしかなかった色が、桃色や朱色や薄紅色に見えるようになる。

一つだと思っていたものをもっと細かく分けられて、一つずつに名前がつけられる。それを初めて知るときは、世界がとつぜんあざやかに輝いてみえるんじゃないかなーと想像する。

見えていなかったものが見えるようになる。これってすごいことだよね。

これは色に限ったことじゃない。

音楽だったら、この間の関ジャムでMISIAと関ジャニ∞のヤスくんが「音楽をつくるとき、鍵盤の12音にない音が使いたくて困っていた」という話をしていた。

合唱をやっていたので、わたし自身「この和音をきれいにハモらせるには、この音を鍵盤の音よりほんのちょっとだけ低めにとった方がいい」など鍵盤にない音を毎日意識していたなと今になって気づく。


そして感情も同じ。

「たのしかったね」って言い合っても、あなたとわたしの楽しかったが同じだとは限らない。

「さいあく」が口癖の人、普通に生きてて「最悪」なことなんて一日に何度も起こらないんじゃないかな。

「すきだよ」って言うなかに、何となく切なさが混じっていたり。


うれしい。楽しい。ムカついた。切ない。エモいとか。

ふだん私たちが使いがちな表現は、とても大きくてざっくりしている。

「何だか分からないけど急に涙が止まらない」は、まだその感情を表す言葉をわたしがもっていないから。

もっと気持ちをこまかく表せる言葉を覚えたら、自分の気持ちをちゃんとわかってあげられる人になれる。

気持ちをこまやかに伝えられるようになったら、完全にとはいかなくても、伝えたい人に自分のことをもっと正確にわかってもらえるようになる。

受験とかで「語彙を増やそう」なんて言われても全然ピンとこなかったけど、自分のなかで納得できる理由がみつかってからは語彙がほしくてたまらないものになったよ。


もっと詳しく観察すれば、より詳しく分かれて見えるようになるはず。

せっかくなら、分けた一つ一つに誰かがつけた言葉をさがしてあてたい。

ぴったりくる名前を使いこなして表せたらいいな。

そんなことを考えてます。


とはいえ。今ある色も音も言葉も、誰かが線をひいて、ここからここまではこの名前と決めただけじゃん。

探してみてもぴったりくる言葉がなかったら、自分でつくっちゃえばいいのよね。ゆるりと。

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