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広告費としての供託金

東京都知事選なんて、全然興味なんてなかったんだが。選挙を広告として捉える人が出てきちゃって。供託金を広告費として捉えた場合、職業柄無視できない感じになってきたので、まとめておこう。

東京都知事選に出馬することを、東京都1400万人にリーチする広告である。と、捉えて、出馬するヤカラがおるわけだが、制度の穴をつきたがるN党の立花孝志らしい戦略だなと、まず思う。ふつうに考えて「1400万人に広告したいんだ」、となった場合、メディアはテレビCMや新聞広告となって数千万円は軽くかかる。もちろん、選挙ポスターばかりではなく、メディア報道、討論会への参加、政見放送もあるわけで、期間中の露出量は計り知れない。

支持者を集めそうな公約をぶち上げれば、副収入も期待できるだろう。まずは献金だ。個人献金、団体献金。さらに、クラファンにサブスクリプション、グッズ販売に精を出せば、ファンビジネスへの広がりも期待できる。収支報告できっちりする必要はあるが、ささいな話だ。さらに、有効投票数10%をクリアすると供託金は没収されないわけだから、300万円をかけたギャンブルだと考えることもできる。300万を没収されないように選挙活動をまじめにした場合、割りに合わなくなってくるからおすすめはしないが。

供託金300万円と最低限の選挙費用を織り込み済のリスクだとして、それ以外のデメリットを見ておこう。まずは、プライバシーがなくなる。あらゆる角度からメディアの注目を浴びて、過去の行動や発言が炙り出される。そして、ラベリング。広告としての出馬をした場合、あなたに「商業主義の銭ゲバだ!プロモーションじゃねえか」というデジタルタトゥーが刻まれる。でも、Youtuberでやっていくんだ俺は、とかいう、インフルエンサーになる覚悟を決めた会社勤め以外の方にはおすすめの戦略だ。

損益分岐点となる自治体は、どこなんだろう。東京、大阪、神奈川、ギリ北海道か。鳥取の首長選挙とかは明らかに損をしそう。人口少ない自治体は、供託金を下げてあげてもいいじゃないかな。あくまでも広告として捉えた場合なんだけどね。

個人で店を営んでいて「背に腹は変えられぬのだ」という人や、インフルエンサーや世間からの悪評をものともしない商売、逆にそれが「やるじゃんお前」と評価されるようなアングラなミュージシャンなんかは、やらない手はない広告手法である。そんな取引先は現状相手にしていないが、零細企業で「ここで当てなきゃやばいんだよ、うちの会社」なんて一発逆転を狙う社長なんかには、おすすめしてしまうかもしれない。

そんな邪な気持ちで選挙を見るな、という声が聞こえてきそうだが。これも選挙というか政治に対する諦めの一種なんだと思う。つまり、政治不信があるから利用したんだよ、と言う方便が成り立つ状況。政治的理念や公共の利益を考える余裕のある政治家なんて見当たらないからなあ。

さて、広告としての都知事選の効果検証がはじまる。最大の効果を上げるビジネスはどんなジャンルなんだろう。意外に、アパレル系の小売業者だと思うが、どうだろう。ファッションを見てもらえるというのは、実に嫌味のないさりげない売り方で、自身が出馬せずとも有力な候補者のスタイリングを契約するだけでもえぐいメリットがありそう。逆に、売れない芸人とか、どんどん出馬しだしたら、もはや選挙の広告としての価値が落ちる気がする。

うーん。我ながらいやらしい視点でものを書いておる。

今日の音楽は、清らかな気持ちで、アート・テイタムのTea for Two。今日の本は、岡康道と吉田望の共著「ブランド」。今日のニュースは、ポスト岸田で色めき立つ新聞社だ。なんでいつも石破茂が人気なのか。国民が支持してる、ということにしても、総理になっても党内に支持する仲間は少ないから何もできないだろうに。

ああ寝る前に、政治のことなんて書くんじゃなかった。もう22時30分。日常に帰ろう。風呂入って寝る。


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