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お勧めの本『怪談禁事録』

2022年末、5年間に渡った営業のK著『闇塗怪談』シリーズが全10巻を以って完結した。
『闇塗怪談』シリーズは、著者自身若しくは寄せられた体験談がベースになっているいわゆる実話怪談のために怪異自体は恐ろしく、不気味な話である。しかし、シリーズの意図、著者のどこか優しさを感じる筆致のために怖さの中に何処か救いのある作品が多かったような印象であった。

『闇塗怪談』シリーズ完結より半年、2023年6月末。
営業のKファン待望の新シリーズ『怪談禁事録』が刊行された。
著者があとがきで

今 まで 書き たく ても 書け なかっ た 話、 描き 切れ ず 諦め て 放置 し て い た 怪異 の 世界観、 そして、 今 まで 使わ なかっ た 表現 方法、 それら を すべて 放出 し、 新しい 実話 怪談 の ジャンル を 構築 し たい という 目標 を 掲げ ての 再出発 に なる。  

営業のK. 怪談禁事録 (竹書房怪談文庫)

と述べているように新たな怪異 の 世界観にワクワクしながらページをめくる。

読み進めると『闇塗怪談』シリーズとは違ったテイストを感じることになる。
断崖絶壁で辛うじて踏みとどまっているものをほんの僅か小突いて奈落の底へ突き落される作品も散見される。
例えば、何とか心の平静を保とうとしている体験者に向けて

しかし、 彼 の 恐れ が 本当 なの だ と し たら、 それで 怪異 から 逃れ られる の だろ う か?
俺 には そう は 思え ない の だ が。

営業のK. 怪談禁事録 (竹書房怪談文庫)

というような止めのを刺すような一文が加わっている。
「本当にそれで収まるのか?」という穿った読者の気持ちを代弁するものであり、著者の人でなし(怪談好きには誉め言葉)の一面も垣間見れる。

今シリーズから著者が全て後味の悪い厭系にシフトしたか、と思えば『闇塗怪談』シリーズのように

ただ 彼女 の 幸せ が 続く こと を 祈り たい。

営業のK. 怪談禁事録 (竹書房怪談文庫)

救いのある締め括りの言葉がある作品もある。

表現方法もバリエーションに富んだ怪異が盛りだくさんだ。

『怪談禁事録』全27話に共通するのは、著者が怪談好きの気持ちに寄り添っている。そして、著者自身が本当に実話怪談が好きなのだ、ということであり、怪談好きにはお勧めの一冊になっている。

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