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俳句手帖にある季語で一句 8月

初秋(しょしゅう)
    初秋やずれる口笛隣りから
新秋(しんしゅう)
    新秋や赤く色づく葉もありて
秋口(あきぐち)
    朝ぼらけ開けて気がつき秋の口
八月(はちがつ)
    八月やラヂオ体操慣れにけり
文月(ふみづき)
    文月も書きたし多き返事待ち
七夕月(たなばたづき)
    七夕月故郷訪ね洋服屋
立秋(りっしゅう)
    立秋に軸替えもせず遊ぶ日々
今朝の秋(けさのあき)
    芋の露消えて静かな今朝の秋
今日の秋(きょうのあき)
    悪筆が文より知るや今日の秋
秋立つ(あきたつ)
    鼻歌や夫が髪染む秋立てり
秋に入る(あきにいる)
    広告の色が変わりて秋に入る
残暑(ざんしょ)
    基礎工事残暑跳ねのけ枠を組み
秋暑し(あきあつし)
    ハンカチを押して汗吹く秋暑し
秋めく(あきめく)
    靴音や夜は秋めく葉書来て
新涼(しんりょう)
    新涼や米寿が祝い印付け
秋涼し(あきすずし)
    秋涼し兄が口笛曲となり
秋涼(しゅうりょう)
    秋涼や父が帰りの早くなり
涼新た(りょうあらた)
    中田島風紋硬し涼新た
処暑(しょしょ)
    練習の太鼓乱れて処暑が音
八月尽(はちがつじん)
    八月尽寝汗もかかず目覚めけり
秋の日(あきのひ)
    秋の日や牛にまたがる人遠き
秋日影(あきひかげ)
    秋日影ぐり石並べ基礎工事
秋夕べ(あきゆうべ)
    秋夕べ帰りの一人さびしかな
秋の宵(あきのよい)
    秋の宵空を眺めて帰り道
爽涼(そうりょう)
    爽涼や帆船西へ舵を切り
秋光(しゅうこう)
    秋光や荷車を曳く牛の尻
秋の声(あきのこえ)
    神殿の扉や開く秋の声
星月夜(ほしづきよ)
    星月夜ワンともいわず迎えけり
天の川(あまのがわ)
    漁火が休む今夜は天の川
銀河(ぎんが)
    棚田より続く頂銀河濃し
銀漢(ぎんかん)
    銀漢や天を仰ぎて浜の砂
流星(りゅうせい)
    流星を待つ願い決め布ベンチ
星飛ぶ(ほしとぶ)
    線路向こう灯りちらちら星飛ぶ夜
盆の月(ぼんのつき)
    あれこれと忙しく過ぎぬ盆の月
秋の初風(あきのはつかぜ)
    葉が一枚秋の初風けふ吹きぬ
初嵐(はつあらし)
    竹藪や撓る回数初嵐
送りまぜ(おくりまぜ)
    棟の草強く靡かせ送りまぜ
盆東風(ぼんごち)
    盆東風や白波立てて浜名湾
秋の雷(あきのらい)
    秋の雷自由の女神白トーチ
稲妻(いなづま)
    稲妻や数を数えて風呂の中
初露(はつつゆ)
    初露を踏みて荒野の地平線
露けし(つゆけし)
    晩鐘の響く山寺露けしや
花圃(かほ)
    荒れすさぶ模様替えせぬ妻が花圃
秋の潮(あきのしお)
    温き石ぽちゃんと音す秋の潮
秋の波(あきのなみ)
    流木や砂に絵を描く秋の波
盆波(ぼんなみ)
    風静か盆波と聞く経長し
盆荒(ぼんあれ)
    盆荒の吾子が泳ぎが離せぬ目
秋の浜(あきのはま)
    連れ立てど一人さみしい秋の浜
秋の服(あきのふく)
    すませども襟足が汗秋の服
新豆腐(しんどうふ)
    夕餉には甘い風味が新豆腐
焼き米(やきごめ)
    焼き米や籾をとりつつ頬張りて
枝豆(えだまめ)
    根ごと扱ぎ土を払ひて枝豆よ
豇豆飯(ささげめし)「いんげん」
    おかずより気分高まり豇豆飯
灯籠(とうろう)
    灯籠を眺めて知るや我が家紋
盆灯籠(ぼんとうろう)
    精霊や忙しく回り盆灯籠
盆提灯(ぼんちょうちん)
    涼し気な盆提灯は今年のみ
切子(きりこ)
    涼しさ呼ぶ切子の角が切れそうな
八月大名(はちがつだいみょう)
    ポンと鳴る八月大名だす花火
大根蒔く(だいこんまく)
    大根蒔く畝こしらえてふかふかな
豆引く(まめひく)
    鷲掴み豆引く根元広きかな
大豆干す(だいずほす)
    大豆干す筵拡げしおうどかな
豆稲架(まめはざ)
    豆稲架や一間おきに杵の音
豆叩く(まめたたく)
    豆叩くとりこぼさす子ら後を追ひ
鳩吹(はとふき)
    目くばせて鳩吹く頬がえくぼかな
秋の鵜飼(あきのうかい)
    大物で秋の鵜飼が籠の中
終戦記念日(しゅうせんきねんび)
    サイレンや終戦記念日忘れじ
硯洗(すずりあらい)
    硯洗白き短冊文机
七夕(たなばた)
    七夕やかすれず粘り芋の露
星合(ほしあい)
    星合の宿赤提灯はじめて?
二星(にせい)
    二星の夜一人で渡る一本橋
牽牛(けんぎゅう)
    牽牛や暗がりの川ゆったりと
織女(しょくじょ)
    川の音の変わる聞き分け織女かな
乞巧奠(きこうでん)
    五色糸七針通し乞巧奠
鵲の橋(かささぎのはし)
    鵲の橋増水に耐えけふ二人
願の糸(ねがいのいと)
    願の糸五色結びて待つ闇夜
梶の葉(かじのは)
    梶の葉や一句したためかをる墨
梶鞠(かじまり)
    梶鞠や落としてならじ習う朝
真菰の馬(まこものうま)
    手慣れきて真菰の馬も尾を振りて
佞武多(ねぶた)
    跳人はね佞武多が鈴のリズムかな
竿灯(かんとう)
    竿灯や尻を振り振り操りぬ
草の市(くさのいち)
    顔覚え年に一度の草の市
盆の市(ぼんのいち)
    多けれどどこか静かな盆の市
盆用意(ぼんようい)
    手を入れて仏壇の中盆用意
七日盆(なぬかぼん)
    長靴やバケツにブラシ七日盆
盆路(ぼんみち)
    草刈すむ盆路帰るペットボトル
盆花(ぼんばな)
    盆花を抱えし父とうちの墓
盂蘭盆(うらぼん)
    盂蘭盆や一人で迎ふさびしき火
苧殻(おがら)
    苧殻焚き一人の時が始まりぬ
迎火(むかえび)
    迎火より素焼きの皿が手に持てず
施餓鬼(せがき)
    施餓鬼会と三角四角いずれ持ち
生身魂(いきみたま)
    生身魂断絶家族絵空事
生盆(いきぼん)
    生盆や健やかなりも控えめに
精霊(しょうりょう)
    精霊消ゆ熱さが残り素焼き皿
茄子の馬(なすのうま)
    早そうな茄子の馬を仕立てたり
墓参(はかまいり)
    墓参百姓一揆にこの名あり
送り盆(おくりぼん)
    送り盆寺より眺む富士の峰
送り火(おくりび)
    二人して吾子が送り火燃え尽きぬ
大文字(だいもんじ)
    大文字燃えども街は下駄が音
灯籠流し(とうろうながし)
    わけ知らず灯籠流し屋台店
踊(おどり)
    観るだけの踊は荒もよく見えて
盆踊(ぼんおどり)
    新曲を子ら口ずさみ盆踊
盆休(ぼんやすみ)
    盆休母を励ます祖母がいて
中元(ちゅうげん)
    中元や干す北の浜詰め合わせ
深川祭(ふかがわまつり)
    水かけて深川祭神輿揺れ
吉田の火祭(よしだのひまつり)
    火が続く吉田の火祭富士の山
解夏(げげ)
    屋根の上一つ雲あり解夏の朝
夏明(げあき)
    夏明朝気分爽快靴を締め
六道参(ろくどうまいり)
    迎え欲しい六道参人多き
地蔵盆(じぞうぼん)
    新しき着物誂え地蔵盆
地蔵会(じぞうえ)
    地蔵会の提灯灯る街外れ
宗祇忌(そうぎき)
    宗祇忌や室町を知るけふ句会
国男忌(くにおき)
    国男忌や来る人もなき資料館
水巴忌(すいはき)
    水巴忌の緑陰に風まだ暑し
煙草干す(たばこほす)
    煙草干す棚の涼しき風抜けり
若煙草(わかたばこ)
    若煙草束ねて縛る素早き手
鷹の塒出(たかのとやで)
    狩り間近鷹の塒出を急かしたし
荒鷹(あらたか)
    荒鷹の飛ぶ距離明日は長かろう
啄木鳥(きつつき)
    啄木鳥や枯れ木が梢穴ぞ増え
電気くらげ(でんきくらげ)
    ぞくぞくと電気くらげの飼育槽
秋の蛍(あきのほたる)
    弱弱し季節外れが秋蛍
残る蛍(のこるほたる)
    飛べなくて残る蛍が暗きかな
秋の蝉(あきのせみ)
    秋の蝉休み終わりと急かしけり
蜩(ひぐらし)
    蜩や乾いた暑さ周遊路
かなかな
    かなかなや短き声の何処より
つくつく法師(つくつくほうし)
    つくつく法師テープに記録一節を
法師蝉(ほうしぜみ)
    声届き筑紫恋しと法師蝉
刺虫(いらむし)
    刺虫や縦横あわせ並びけり
芋虫(いもむし)
    芋虫のいずれはてふと変わるとは
青虫(あおむし)
    青虫や安全マーク芯喰らふ
木槿(むくげ)
    栄華てふ木槿散り落つ夕べかな
紅木槿(べにむくげ)
    紅木槿続くこの道けふ限り
白木槿(しろむくげ)
    白木槿牛車ぎしぎしと目もやらず
底紅(そこべに)
    底紅や失せぬその色散る夕べ
芙蓉(ふよう)
    芙蓉咲く庭の一角占めにけり
酔芙蓉(すいふよう)
    水路際ボート見送り酔芙蓉
桃の実(もものみ)
    桃の実を採れど出されぬ熟れ具合
白桃(はくとう)
    白桃の頬緩ませる甘さかな
水蜜桃(すいみつとう)
    垂れ落ちる水蜜桃を吸い食わぬ
青棗(あおなつめ)
    酸っぱくて小僧も食わぬ青棗
桐一葉(きりひとは)
    桐一葉夕日を返し落ちにけり
一葉落つ(ひとはおつ)
    一葉落つ音の大きく裏の庭
秋の芽(あきのめ)
    眼底検査吾子の先思ふ秋芽かな
臭木の花(くさぎのはな)
    臭木の花母の挿したる文机
臭桐(くさぎり)
    臭桐や強き臭ひや白き花
山椒の実(さんしょうのみ)
    かば焼きの味引き立たせ山椒の実
はじかみ(薑)
    晩酌やはじかみを噛む味噌の味 
木天蓼(またたび)
    木天蓼が割れて呼べども枝の先
秋桑(あきくわ)
    刈り取りの鎌の音せわし秋の桑
楤の花(たらのはな)
    喰われずに残りて咲くや楤の花
蘡薁(えびづる)
    木登りて蘡薁を摘む枝の先
山葡萄(やまぶどう)
    山葡萄ポイント毎偶然会ふ
野葡萄(のぶどう)
    野葡萄やむらさきに染む子等の指
カンナ
    道端のカンナ抱えて何処行く
ジンジャーの花(ジンジャーのはな)
    夕まぐれ香を辿りジンジャーの花
朝顔(あさがお)
    朝一番釣瓶水やる朝顔へ
牽牛花(けんぎゅうか)
    縄文の裏庭占めて牽牛花
夜顔(よるがお)
    月更けて夜顔と会ふ裏小路
夜会草(やかいそう)
    夜会草白いレースがワンピース
仙翁花(せんのうげ)
    仙翁花植木センター鉢の中
蔓紫(つるむらさき)
    蔓紫さらさらにしてこの体
白粉花(おしろいばな)
    白粉花裏庭に伸ぶ黒い種
鳳仙花(ほうせんか)
    鳳仙花待つが如しの爆ぜ模様
つまべに 
    つまべにの鋸刃が寄せぬ花の色
鬼灯(ほおずき)
    鬼灯を種抜き急ぎ鳴らしけり
秋海棠(しゅうかいどう)
    荒れ寺や草に溺れし秋海棠
大毛蓼(おおけたで)
    大毛蓼紅紫の花が垂れ
弁慶草(べんけいそう)
    一輪挿しなかなか枯れぬ弁慶草
川芎の花(せんきゅうのはな)
    川芎の花山蔭覆ふ昼下り
西瓜(すいか)
    写る顔どぼんと落とす西瓜かな
南瓜(かぼちゃ)
    受粉日やテープが色の南瓜畑
とうなす
    とうなすを転がす小屋のほこり舞ふ
なんきん
    なんきんやほくほく頬も緩みけり
夕顔の実(ゆうがおのみ)
    江ノ電や夕顔の実を落とし過ぐ
青瓢(あおふくべ)
    青瓢猿も喜び良い形
馬鈴薯(ばれいしょ)
    トラクター馬鈴薯を掘る地の響き
茗荷の花(みょうがのはな)
    畠隅に茗荷の花が咲きしあと
数珠玉(じゅずだま)
    数珠玉や糸を通して色違い
鳩麦(はとむぎ)
    鳩麦のゲートをくぐり土手の上
蕎麦の花(そばのはな)
    荒れ畑へ人集める蕎麦の花
新小豆(しんあずき)
    刈り取りて筵で曝す新小豆
畦豆(あぜまめ)
    畦豆やこの一粒が味噌きな粉
隠元豆(いんげんまめ)
    雨上がり泥のはねあり隠元豆
莢隠元(さやいんげん)
    夕餉には莢隠元の酢味噌和え
豇豆(ささげ)
    採り終えて緑鮮やか豇豆飯
刀豆(なたまめ)
    刀豆や形態覚ゆ歯磨き粉
藤豆(ふじまめ)
    藤豆や家庭菜園一隅に
籬豆(かきまめ)
    籬の豆今に弾くやけふ摘まむ
麻の実(あさのみ)
    飛び跳ねし麻の実を追ふ吾子の指
ホップ 
    蔓の上青空眺むホップ摘み
薄荷の花(はっかのはな)
    面会不可薄荷の花も咲き待ちぬ
煙草の花(たばこのはな)
    煙草の花咲くか咲かぬか切り取りて
秋の蓮(あきのはす)
    沈む陽に影を伸ばすや秋の蓮
草の香(くさのか)
    草の香や露けし堤散歩道
背高泡立草(せいたかあわだちそう)
    廃土を覆ふ背高泡立草
荻(おぎ)
    池の端鋭き刃荻隠し持つ
葛(くず)
    葛の葉をかき分け探す登山道
葛の花(くずのはな)
    堤防の道を隠して葛の花
風船葛(ふうせんかずら)
    道標を風船葛隠す山
鉄道草(てつどうぐさ)
    ローカル線鉄道草の生い茂り
藪からし(やぶからし)
    藪からし青条揚羽呼び寄せて
貧乏葛(びんぼうかずら)
    根強くて扱げど扱げども貧乏葛
田村草(たむらそう)
    田村草棘ある如し寄せつけず
葈耳(おなもみ)
    葈耳を満員電車今発車
めはじき
    めはじきやお化粧ごっこ切ってきて
麝香草(じゃこうそう)
    葉を揉めば流れもかをる麝香草
沢桔梗(さわぎきょう)
    下り坂沢にかかれば沢桔梗
子水葱の花(こなぎのはな)
    絶えたかも子水葱の花は今は見ず
千屈菜(みそはぎ)
    千屈菜や隠れて残り古蹟石
水萩(みずはぎ)
    遠き家水萩を摘むッ子らの声
釣鐘人参(つりがねにんじん)
    上へ上と釣鐘人参延びていく
水引の花(みずひきのはな)
    蕾膨らむ数えきれない水引の花
苔桃(こけもも)
    ちょい冷やし苔桃の酒グラス増す
草牡丹(くさぼたん)
    騙される葉っぱ色型草牡丹
相撲草(すもうぐさ)
    幼子に抜くに抜けない相撲草 がいろっぱ
釣舟草(つりふねそう)
    水際に釣舟草の増える場所
松虫草(まつむしそう)
    松虫草気品を崩す根本草
露草(つゆくさ)
    露草や朝餉の煙出る窓辺
薬師草(やくしそう)
    薬師草かぎ針の如雌蕊なり
弟切草(おとぎりそう)
    鷹の傷治して知らる弟切草
忍草(しのぶぐさ)
    屋敷墓昔はここに忍草
軒しのぶ(のきしのぶ)
    長屋門昔を語り軒しのぶ
蓼の花(たでのはな)
    つぶつぶを潰して遊び蓼の花
赤のまんま(あかのまんま)
    赤のまんまままごと遊びお赤飯
溝蕎麦(みぞそば)
    溝蕎麦や水辺の道を狭めたり
茜草(あかね)
    茜草遠き昔に女が文
雀の稗(すずめのひえ)
    雀の稗なな星てんとう登り着き
野稗(のびえ)
    稔る田に野稗すっくと立ちにけり
犬稗(いぬびえ)
    犬稗や違いあちこち三種あり
紅木槿(べにむくげ)
    通い路や紅木槿垣連なりて
白木槿(しろむくげ)
    白木槿昔庄屋が屋敷跡
底紅(そこべに)
    底紅や履き寄せ山も白くなり

NHK俳句附録 俳句手帖より

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