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俳句手帖にある季語で一句 6月

夏の日(なつのひ)   歌謡曲空と海ある夏の日よ
六月(ろくがつ)    我誕生六月の雨降る日
皐月(さつき)     校舎よりブラス揃いし皐月かな
芒種(ぼうしゅ)    水盤へ芋を浸らす芒種かな
田植時(たうえどき)  田植時自慢話の植える技
入梅(にゅうばい)   入梅を知らせる如しどつと降り
梅雨寒(つゆさむ)   梅雨寒や箪笥の中を入れ替えて
夏至(げし)      着る着ない寒暖を知る夏至の朝
白夜(はくや)     築山へてふの舞来る白夜かな
半夏生(はんげしょう) 一枚だけ植え残りたり半夏生
短夜(みじかよ)    短夜や雨戸を閉める暇もなく
明易し(あけやすし)  太極拳声音は出さず明易し
暑し(あつし)     暑し朝隣りも雨戸開け広げ
涼し(すずし)     涼し朝歯磨きが音忙しけり
梅雨(つゆ)      梅雨迎ゆコウモリ傘が修理屋
梅雨晴間(つゆはれま) 水溜り挑む大きさ梅雨晴間
五月雨(さみだれ)   スクランブル五月雨もなくまばらなり
五月闇(さつきやみ)  ウォーキングリセットスタート五月闇
夏の雲(なつのくも)  連なりてスカイツリーを夏の雲
夏の月(なつのつき)  日は暮れど涼しさ呼ばぬ夏の月
南風(はえ・みなみ)  過ぎたるや茣蓙巻き上げて入る南風
黒南風(くろはえ)   黒南風や流れし雲へ隠れ鳥
青嵐(あおあらし)   自転車は野原を抜けり青嵐
やませ         風知れどやませの寒き知らぬとは
五月晴(さつきばれ)  深呼吸甍が上に五月晴
空梅雨(からつゆ)   空梅雨やかうもり傘が忘れ棚
海霧(じり)      海霧襖音が聞こえど見えぬ色
夏霧(なつぎり)    夏霧や峠を越して落ちる滝
虹(にじ)       虹に向き足は東に我が庵
雷(かみなり)     雷や生まれたばかり湯気上り
五月富士(さつきふじ) 次郎長もここから眺む五月富士
雪解富士(ゆきげふじ) 雲もなく水吹上し雪解富士
夏野(なつの)     丈高く行く道覆ふ夏野原
夏の水(なつのみず)  崖っぷち道路突っ切る夏の水
出水(でみず)     濁り水昨夜が出水苗が浮き
植田(うえだ)     水鏡植田が模様富士写し
早苗田(さなえだ)   静けさや早苗田に聞く水琴窟
五月田(さつきだ)   五月の田水を磨きて逆さ富士
噴井(ふけい)     故郷や噴井音なくこんこんと
井水増す(いむずます) 手に届く井戸輪一枚井水増す
夏の川(なつのかわ)  腰までの底が揺らめく夏の川
夏の海(なつのうみ)  夏の海揺らめきながら運搬船
夏の浜(なつのはま)  熱き水足首流る夏の浜
夏服(なつふく)    夏服や団子並べし釦かな
単衣(ひとえ)     庭の花眺めて母の縫ふ単衣
初浴衣(はつゆかた)  てふ結びきりりと締めて初浴衣
夏シャツ(なつしゃつ) 誂えし夏シャツ入れる窓の風
夏帯(なつおび)    夏帯や金魚が泳ぐ水模様
白靴(しろぐつ)    雨止めど白靴三足ショーウィンドウ
ハンカチ(はんかち)  門先へハンカチ落とす男行く
梅干す(うめほす)   漬け具合梅干すことも主婦初め
網戸(あみど)     小き声網戸の目より小虫来て
青簾(あおすだれ)   青簾まだ帰らぬか貸しボート
古簾(ふるすだれ)   納屋の前しまい忘れた古簾
日除(ひよけ)     風強しまくれる日除色抜けて
夏暖簾(なつのれん)  夏暖簾はらいて息子いつ戻り
籐椅子(とういす)   籐椅子や座り心地が今一つ
葦簀(よしず)     夕暮れや残る温みの葦簀巻き
ハンモック      ハンモックかわりばんこの横揺らし
蚊遣火(かやりび)   蚊遣火やむせる主も蚊と出でり
風炉茶(ふろちゃ)   若き日の脚のしびれが風炉茶かな
風炉手前(ふろてまえ) 風炉手前若き主がしびれ脚
初風炉(はつふろ)   初風炉や古き水指友気付き
夏茶碗(なつぢゃわん) 夏茶碗広く浅きや点てやすし
苗取(なえとり)    ぺちゃくちゃと苗取の声響き来て
田植(たうえ)     晴れた日の田植がリズム邪魔もなき
早乙女(さおとめ)   早乙女へ昼のサイレン届けたり
竹植う(たけうう)   竹植うる鉢の重きにままならず
豆植う(まめうう)   豆植うる畦の穴跡波打たず
粟蒔き(あわまき)   雨は来ぬ畑ふわりに粟蒔きぬ
水中花(すいちゅうか) 誰も見ぬ夜中満開水中花
蛍狩(ほたるがり)   かごを持ち門を出ずれば蛍狩
草笛(くさぶえ)    草笛や単音のみのつまらなさ
麦笛(むぎぶえ)    茎抜きて麦笛作る帰り道
夜釣(よづり)     忙し気に晩飯くらひ夜釣りかな
時の記念日(ときのきねんび) 気忙しく時の記念日花時計
父の日(ちちのひ)   父の日にけふ帰るぞと留守電話
薬狩(くすりがり)   効能も草の名も失し薬狩
名越の祓(なごしのはらえ) 汗たらし名越の祓去年のこと
夏祓(なつはらえ)   若き祢宜アメリカ帰り夏祓
形代(かたしろ)    形代や目肩胸とさする音
茅の輪(ちのわ)    砂利乾くくぐる長靴茅の輪かな
さくらんぼ祭(さくらんぼまつり) さくらんぼ祭種を飛ばせば1パック
貴船祭(きぶねまつり) 水占ひ紙の透け流る貴船祭
百万石祭(ひゃくまんごくまつり) 百万石祭役になりきり門抜けて
御田植祭(おたうえまつり) 御田植祭うつむく顔へ照り返し
ちゃぐちゃぐ馬こ(ちゃぐちゃぐうまこ) 飾りつけちゃぐちゃぐ馬こ初々し
安居(あんご)     墨含み深く一息安居かな
夏行(げぎょう)    人もゐぬ夏行始まり静まりぬ
夏籠(げごもり)    読誦や夜の夏籠漏れてくる
夏断(げだち)     硯石吾子も真似する夏断かな
夏書(げがき)     開け放し夏書読誦合掌す
聖体祭(せいたいさい) 敬虔な思い覚ますや聖体祭
鑑真忌(がんじんき)  薄日さす唐招提寺鑑真忌
独歩忌(どっぽき)   武蔵野はあまりに遠き独歩の忌
芙美子忌(ふみこき)  連絡船島に隠れし芙美子の忌
鹿の子(しかのこ)   鹿の子の足の長さやか細さや
親鹿(おやじか)    親鹿や後ろ確かめ信号を
亀の子(かめのこ)   亀の子やすることもなく甲羅干し
海亀(うみがめ)    砂浜に海亀が跡長々と
蟇(ひきがえる)    蟇濡れてゐるかの四つん這い
河鹿(かじか)     夕暮れに水辺の散歩河鹿聞く
夕河鹿(ゆうかじか)  夕河鹿暑さが残る川辺道
河鹿笛(かじかぶえ)  せせらぎにリズムが狂う河鹿笛
山椒魚(さんしょううお) 清流を山椒魚ぞ石に沿い
蚯蚓(みみず)     一匹の蚯蚓何匹鮒を釣る
翡翠(かわせみ)    翡翠やけふも川面に触れもせず
閑古鳥(かんこどり)  草原に一人だけ聞く閑古鳥
筒鳥(つつどり)    筒鳥や弾む声聞く谷向こう
仏法僧(ぶっぽうそう) 仏法僧雨降る夜のラジオかな
燕の子(つばめのこ)  燕の子所狭しと五羽巣立ち
鴉の子(からすのこ)  羽ばたきて屋根まで飛べた鴉の子
鶉の子(うずらのこ)  繕い物母の手止める鶉の子
水鳥の巣(みずとりのす) 枯蘆や水鳥の巣へ編みこまれ
鳰の浮巣(におのうきす) 潜り込み鳰の浮巣へ泡三つ
鷭の浮巣(ばんのうきす) 飛び込めば鷭の浮巣も揺れ動く
夏の鴨(なつのかも)  棲む場所に列なし帰る夏の鴨
通し鴨(とおしがも)  人みてもおどおどしない通し鴨
子鴨(こがも)     子鴨たち川の流れに乗り下り
軽鳧の子(かるのこ)  急流に軽鳧の子揺れて列進み
濁り鮒(にごりぶな)  釣り人を欺き遡上濁り鮒
源五郎鮒(げんごろうぶな) 釣り人へ源五郎鮒浮勝負
鮎(あゆ)       鮎解禁夜明けの岸辺騒がしき
鮎の宿(あゆのやど)  連泊も海のものでぬ鮎の宿
囮鮎(おとりあゆ)   トンネルを出れば大きく囮鮎
岩魚(いわな)     梁煤け岩魚が囲む囲炉裏かな
目高(めだか)     最後には目高三匹だけとなり
緋目高(ひめだか)   上からも見えぬ緋目高苔の中
鰻(うなぎ)      どくばりを仕掛けて鰻とれぬ朝
鯵(あじ)       三枚におろして鯵は網の上
手長蝦(てながえび)  水澄めど網に入らぬ手長蝦
蛍(ほたる)      田に映る二匹の蛍我にのみ
平家蛍(へいけぼたる) 放しても平家蛍は蚊帳の中
源氏蛍(げんじぼたる) 葉の影の源氏蛍が明るさよ
夏蚕(なつご)     忙し気に夏蚕が食みし桑の音
蚕蛾(さんが)     飛べなくも羽化の証が蚕蛾かな
山繭(やままゆ)    照らし出すゆるり山繭羽ばたきぬ
落し文(おとしぶみ)  青年や門先にあり落し文
初蜩(はつひぐらし)  初蜩ランプ灯れし控えめに
蜻蛉生まる(とんぼうまる) 陽射し受け蜻蛉も生まる川面より
川蜻蛉(かわとんぼ)  川蜻蛉岸辺の草に立ち寄りて
蟷螂生まる(とうろううまる) おびただし蟷螂生まる細き枝
孑孑(ぼうふら)    孑孑や誰かが動く誰の番
蠛蠓(まくなぎ)    門先へ蠛蠓の群れ待ち伏せし
蚊(か)        暗闇の蚊が飛行先は我の耳
蛾(が)        大きな蛾羽根ゆったりと灯る先
桜の実(さくらのみ)  食べ頃と一羽啄ばむ桜の実
桜の実となる(さくらのみとなる) 桜の実となれども捥ぐ人もなき
紫陽花(あじさい)   紫陽花寺大きな房が覆ふ道
額の花(がくのはな)  額の花一雨ごとの重さかな
花橘(はなたちばな)  足音や花橘のかをる夜
百日紅(さるすべり)  僧自慢名園に咲く百日紅
梔子の花(くちなしのはな) 枝太く梔子の花咲き誇り
杜鵑花(さつき)    盆栽の枝に針金杜鵑花から
繍線花(しもつけ)   繍線花が一輪挿しへ文机
未央柳(びょうやなぎ) 雄蕊雌蕊すべて黄色い未央柳
夾竹桃(きょうちくとう) 排煙に負けて真っ黒夾竹桃
南天の花(なんてんのはな) 背の高き南天の花切り揃へ
朱欒の花(ザボンのはな) 秋の実より朱欒の花を愛しみ
橙の花(だいだいのはな) 残り果や橙の花囲み咲き
柚子の花(ゆずのはな) 柚子の花手伸ばせば棘が邪魔する柚子の花
オリーブの花      オリーブの花院長植えし西の庭
柿の花(かきのはな)  柿の花繁る葉の影雨宿り
石榴の花(ざくろのはな) 石榴の花姉の友達長話
青梅(あおうめ)    喰いたくも母が戒め青い梅
実梅(みうめ)     木をたたき実梅ぼたぼた一筵
小梅(こうめ)     ゴリゴリと好きになれない小梅かな
楊梅(やまもも)    楊梅をぐるりと赤く染めにけり
さくらんぼ       さくらんぼ花眺めども味知らず
山桜梅(ゆずらうめ)  蝶誘ふ白き花弁山桜梅
李(すもも)      風の先李あつまり香を放ち
巴旦杏(はたんきょう) 遮断する山の村にも巴旦杏
杏子・杏(あんず)   新築を祝ふがごとし杏子咲く
枇杷(びわ)      太き枇杷めがけて登り年一度
夏蜜柑(なつみかん)  登り着く花と実も混じる夏蜜柑
青葉(あおば)     トンネルぬけ輝く青葉月に着く
茂る(しげる)     草茂る手入れ始めぬ我が庵
万緑(ばんりょく)   万緑の野原突き抜け愛し人
椎の花(しいのはな)  椎の花雨が絨毯汚しけり
木斛の花(もっこくのはな)  雨上がりかをりに仰ぎ木斛の花
えごの花        えごの花もみもみされてシャボン玉
桑の実(くわのみ)   桑の実や洗えど消えぬ染まる色
夏桑(なつぐわ)    夏桑や籠一杯の軽きこと
青桐(あおぎり)    天仰ぐ青桐高し廃れ寺
竹の皮脱ぐ(たけのかわぬぐ) かぐや姫竹の皮脱ぐ朝仕事
竹の花(たけのはな)  竹の花ただならぬ色胸騒ぎ
篠の子(すずのこ)   篠の子や声かけありて山の裾
笹の子(ささのこ)   笹の子や不味きも知らぬ採りもせず
杜若(かきつばた)   杜若見分けがつかぬ学のなさ
渓蓀(あやめ)     山頂の渓蓀畑に靴の跡
花菖蒲(はなしょうぶ) 花菖蒲長じてどれも同じ色
菖蒲(しょうぶ)    高々と一株菖蒲庭を見る
鳶尾草(いちはつ)   茅葺屋根鳶尾草育つ棟高し
芍薬(しゃくやく)   暗闇に芍薬ほのか咲くかいど
グラジオラス      母が庭グラジオラスばかりなり
葵(あおい)      陽を浴びて葵大きく庭で待つ
ガーベラ        ガーベラや買ってやれない育て方
金魚草(きんぎょそう) 金魚草花瓶満杯色いっぱい
アマリリス       アマリリス縦笛上手く吹けなくて
鬼灯の花(ほおずきのはな) 今朝知りて鬼灯の花白きこと
紅の花(べにのはな)  紅の花揉む手も染めて戯れし
青芭蕉(あおばしょう) 月明り大きく招く青芭蕉
芭蕉若葉(ばしょうわかば) 雨間近芭蕉若葉が巻きを解き
馬鈴薯の花(ばれいしょのはな) 濃紫馬鈴薯の花雨の下
茄子の花(なすのはな) 茄子の花家庭菜園初物に
人参の花(にんじんのはな) 泥のつく人参の花雨上がり
南瓜の花(かぼちゃのはな) 交配す無駄に大きな南瓜花
早苗(さなえ)     ぺちゃくちゃと女三人早苗取り
捨苗(すてなえ)    水取り口役に立たせる捨苗も
余苗(あまりなえ)   田の隅にいつしか消えて余苗
昼顔(ひるがお)    中田島昼顔も咲く砂の道
水芭蕉(みずばしょう) 植物園山の片隅水芭蕉
沢瀉(おもだか)    沢瀉や矢じりの先の花白き
河骨(こうほね)    河骨や硬き花弁鯉も来ぬ
萍(うきくさ)     水よどみ占めし萍掻き分けて
菱の花(ひしのはな)  名を聞かば飛ばしてみたし菱の花
十薬(じゅうやく)   十薬や雑草抑え庭を占む
虎尾草(とらのお)   虎尾草や風にならひて右左
敦盛草(あつもりそう) 敦盛草音が出るはず唇を
烏柄杓(からすびしゃく) 一輪挿し烏柄杓を投げ入れぬ
破れ傘(やぶれがさ)  戯れど日除けになれぬ破れ傘
鴇草(ときそう)    皆に見せたく鉢の鴇草けふは門
蛍袋(ほたるぶくろ) 虫いぬか蛍袋を覗き見て
麒麟草(きりんそう) 黄昏時故郷恋し麒麟草
鴨足草(ゆきのした) 井戸端の管まく話鴨足草
黴(かび)      道端に柔らかき飴黴覆ふ
梅雨茸(つゆだけ)  梅雨茸や立ち止まらずに頂へ
木耳(きくらげ)   しこしこと生木耳の生きの良さ
天草(てんぐさ)   玉砂利に天草拡げ陽にまかせ

NHK俳句附録 俳句手帖より

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