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俳句 ブギウギ 十月

ブギウギの浮かれリズムの秋の朝
銭湯の煙突高し秋の空
爽やかな歌声聞こゆ着替え篭
番台の女将スパスパ秋の宵
秋の昼師匠の振りの真似をして
新秋や義理人情の銭湯代

番台の恋歌聞こゆ春の宵
一番客只の招きの秋終
易断の旗を目掛けて秋の風
けらの音なにも持たないいやなこと
夢描く歌ひて暮らす稲光

秋袷恋文とかのはしたなき
弟とお面の似合ふ秋祭
卒業を昭和初めのお正月
才能は唄と踊りと春を待ち
日向ぼこラララのスズ子絵に唄ふ

薪割のリズムのはやさ春の歌
歌声の記憶の戻り春きざす
わしの子と自惚れ寝た子春動く
掌の人の字なめて試験前
春の午后断たれ番号不合格

入学試験辛い試練はまだ遠き
不合格風呂に流るる涙かな
閉ざされて蒲団の重き春の朝
春動く白き劇場衣装舞ふ
暖かや少女の恋の唄響き

入学の洗練された挨拶を
春袷強く逞しスローガン
春の服温き離せぬバレエバー
白鳥引く練習室の踊り見ゆ
練習の強さに押され春夕焼

六月や練習きつき養成所
半夏生洗濯板のごつごつよ
初雷や心読めなきお弁当
パンパンと肌脱ぎ襟へ化粧水
怒り込めスポットライト羽抜鳥

諍いのバケツの残り夏廊下
客は神説くや先輩バルコニー
忠告のトップスターや髪洗ふ
レッスンのピアノの響き玉の汗
空元気無駄な力の夏痩せぬ

秋真昼百日咳の往診医
水絞る母の手ひやり風邪のデコ
停戦のデビューは一人風邪見舞ひ
目覚めれば煙突の先風邪の行く
銭湯の暖簾出す前秋忘れ

秋日射稽古の影のリズムかな
タップ踏む物干台の秋の空
秋繭やデビューの備えの芸名
初秋の舞台の裏の化粧台
初舞台幕を下ろして月上る

脇役の秋の公演紙吹雪
秋づく日たちまち足らぬビラ配り
ライバルと冷ゆ稽古場の火花かな
蛾眉の夜の番台の母励まして
昼休み芋のごろごろライスカレー

一人きりレッスン続けど漸寒
脱衣場の占めて拡がりちゃんちゃんこ
星月夜門前稽古息切れて
竜田姫苛立の元ライスカレー
秋深しプリンの甘き恋心

乙女らの大根を干すラインダンス
藤の花暖簾を仕舞ふ脱衣場
辞められぬ好きに勝てなく村芝居
才能や人には見えぬ秋の星
人減らし経営の危機秋夕焼

恐慌のレビューの世界冬の星
脱衣場の組合潰し冬の雷
ストの前熱帯び説くや雪女
ひそひそと切り崩しらし雪催
ぎくしゃくと凍ゆリズムや稽古室

分岐点鵙の呼びかけストライキ
靴下の似合わぬ草履冷ゆ楽屋
赤絨毯ここを戻りて捨案山子
ばったんこ自分自身のストライキ
山寺へ旗振り進む音頭取

ストライキ石蕗の花咲き山の寺
風の色桃色争議巷では
秋日影本堂の板ぴかぴかと
青苔や基礎練習の足の裏
誰もゐぬかりがね寒き稽古室

秋日差一人練習床の音
石段の尻の冷たさ秋日影
青苔や童へ戻り鬼ごっこ
百段の山寺に待つ紅葉かな
劇場や期待に背き冬の朝

もろもろを記者会見秋の雷
冬隣レヴューガールの出発
責任の涙身に沁む稽古室
初春の黄色の声の脚同時
声揃えラインダンスの年新た

青葉山汽車のリズムやジャズリズム
夏来る焦げて珈琲洋食屋
郵便屋白壁の家夏来る
初夏の宵街灯返しタイル塀
久方の遠出の話今朝の夏

駅出れば香川快晴夏始
紋付や母の代役浅き夏
あつあつの釜揚げうどん夏ねぶつ
迷わぬか広き屋敷の兎抱く
隠されてほんまの話盆踊り

浅き夏似てて遺影の実の父
浜の松根元ぬくとし今朝の夏
新樹蔭友へ子育て実の母
里若葉抱かれ聞きたく子守唄
蛙啼く手には形見の金時計

卯月の陽轍に揺れて金時計
芒種の節河の向こうの母二人
天の川眼の語り川を背に
蚊帳の中聞くこともない弟寝言
籐枕高ぶるからだ明をしり
笑み作り決意の写真夏めく日
「ただいま」の全ての捨てて夏の風
稽古バー磨いて終り夏休み

#朝ドラ俳句   #ブギウギ   #kigo   #俳句  

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