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俳句手帖にある季語で一句 5月

初夏(しょか)      中田島波とたわむる初夏の甲
夏はじめ(なつはじめ)  夏はじめ大きく開く窓で唄
夏(なつ)        句投稿靴下はかぬ夏が来た
五月(ごがつ)      葦が伸ぶ五月の光つぶつぶと
聖五月(せいごがつ)   聖五月婚衣の二人足揃え
卯月(うづき)      卯月なりかをりに満ちる煎餅屋
立夏(りっか)      立夏の港豪華客船接岸す
今朝の夏(けさのなつ)  着替えどもいやに汗ばむ今朝の夏
夏に入る(なつにいる)  白頭も狭くなり富士夏に入る
夏来る(なつきたる)   夏来る波打ち際をかける子ら
清和(せいわ)      トンネルから見える青さも清和かな
夏浅し(なつあさし)   夏浅し呼べども緋鯉向こう岸
夏めく(なつめく)    大冒険夏めく築山昔ごと
夏きざす(なつきざす)  夏きざす雨だれ如しペンキかな
薄暑(はくしょ)     殿散歩木陰の欲しい薄暑かな
麦の秋(むぎのあき)   空高し釜先光る麦の秋
小満(しょうまん)    小満や小川も多く草流る
五月尽(ごがつじん)   高し空あくまで高し五月尽
夏霞(なつがすみ)    佐鳴湖に岸を隠すや夏霞
夏の空(なつのそら)   バイク行くカーブの向こう夏の空
夏の星(なつのほし)   名も知らぬ夜中にのぞむ夏の星
夏の風(なつのかぜ)   洗濯や一纏めなり夏の風
木の芽流し(このめながし) 木の芽流し気合を込めてカッパ着る
茅花流し(つばなながし) 迎え行く茅花流しの傘を持ち
筍流し(たけのこながし) 竹撓る筍流し急ぐ足
青嵐(あおあらし)    葉擦れ音障子震わす青嵐
麦嵐(むぎあらし)    空は澄み鳥押し戻す麦嵐
あいの風(あいのかぜ)  航跡伸ぶ能登路を一人あいの風
だし           だし強し足ごと滑り帆掛け舟
黄雀風(こうじゃくふう) まくりあがる黄雀風の吹く浜辺
卯の花腐し(うのはなくだし) 小さき庭卯の花腐し敷き詰めて
走り梅雨(はしりづゆ)  こうもりやこだわり込めて走り梅雨
前梅雨(まえづゆ)    前梅雨や傘も新しけふも降る
卯月曇(うづきぐもり)  練習日卯月曇が球白し
夏富士(なつふじ)    白帽子脱いで夏富士赤くなり
夏山(なつやま)     夏山の匂い新し草の息
青嶺(あおね)      牛は啼く柵新しき遠青嶺
夏山路(なつやまじ)   じりじりと背中の暑さ夏山路
卯月野(うづきの)    卯月野や草を分け入り花を描き
夏の園(なつのその)   心地よき朝の草触る夏の園
夏の庭(なつのにわ)   主植ふ葉は憶えて夏の庭
夏の湖(なつのみずうみ) 藻が増える夏の湖貸しボート
青岬(あおみさき)    青岬ウィンドサーフィン帆先消ゆ
卯浪(うなみ)      卯浪立つ運搬船は東へと
青葉潮(あおばじお)   去年のごみ舳先に多し青葉潮
代田(しろた)      明日を待つ代田に映る星の数
更衣(ころもがえ)    電車内まばゆい白さ更衣
夏物(なつもの)     夏物のポケット足りぬ停留所
袷(あわせ)       箪笥の底去年にしまひし袷かな
セル           日傘さすセルの袖抜く羽風かな
レース編む(れーすあむ) テーブルの上がさみしやレース編む
夏帽子(なつぼうし)   陽が強しけふはお古の夏帽子
身欠鰊(みがきにしん)  箱売りの身欠鰊に重なる手
豆飯(まめめし)     豆飯の泡が噴き出る陶器釜
筍飯(たけのこめし)   筍飯山盛りよそふ夕餉かな
粽(ちまき)       河原の笹大きさ選び粽まく
柏餅(かしわもち)    内祝大柏餅どんと来る
菖蒲酒(しょうぶざけ)  風呂上りかをり嗜む菖蒲酒
新節(しんぶし)     新節や未だ柔らかき削り初め
生節(なまぶし)     頂き物生節握る思案顔
干河豚(ほしふぐ)    干河豚や土産に配る味の良さ
伽羅蕗(きゃらぶき)   伽羅蕗や我好まざる第一位
新茶(しんちゃ)     新茶出来工場からのメールあり
古茶(こちゃ)      畑の差かをり薄れし古茶の味

夏炉(なつろ)      つぎ足さぬ夏炉の炭が点き具合
苗売(なえうり)     苗売り屋今年もまよい辿り着く
麦刈(むぎかり)     麦刈や一束かろし並ぶ畝
麦扱(むぎこき)     麦扱や足踏む音が届く空
新麦(しんむぎ)     新麦やなかは冷たき一斗升
麦藁(むぎわら)     麦藁を今年もあまへ納めたり
麦藁籠(むぎわらかご)  麦藁籠ねじれて上る虫もゐて
麦飯(むぎめし)     麦飯に慣れた口には粘る米
袋掛(ふくろかけ)    日に焼ける我もかけたし袋掛
溝浚(みぞさらえ)    溝浚確かめ終わる流れかな
代掻(しろかき)     代掻やもーと一声田に入りぬ
茄子植う(なすうう)   汗ばみて行燈囲み茄子を植う
菜種刈(なたねがり)   実がいりてそつと束ねる菜種刈
天草取(あまくさとり)  盛り上がる天草取の海女が泡
上蔟(じょうぞく)    桑刈も上蔟始めk
繭(まゆ)        品評会遜色もなき繭の玉
糸取り(いととり)    子をおぶい糸取り続け子らを待つ
夏スキー(なつすきー)  日焼け止めまばらになりて夏スキー
憲法記念日(けんぽうきねんび) 憲法記念日なかったことに捻じ曲げる
ゴールデンウィーク    ゴールデンウィークコロナ色にと変わりけり
メーデー         美しきまやかし言葉メーデーも
こどもの日(こどのひ)  連休のしんがりに在りこどもの日
母の日(ははのひ)      母の日も朝昼晩と飯を炊く
バードウィーク      バードウィーク被害甚大無対策
端午(たんご)      柱にも記念刻みし端午かな
鯉幟(こいのぼり)    絡み合いポールを倒す鯉幟
矢車(やぐるま)     矢車やゆつくりまわる闇の中
吹流し(ふきながし)   吹き流し伸ばして測る吾子の丈
幟(のぼり)       跡継ぎ喜びしらす幟たて
武者人形(むしゃにんぎょう) 髭もじゃの武者人形は向こう向き
菖蒲湯(しょうぶゆ)   菖蒲湯や肌にゆらりと柔らかき
夏場所(なつばしょ)   夏場所や櫓の上のふれ太鼓
ダービー         ダービーや拳に力賭けなくも
くらやみ祭(くらやみまつり) くらやみ祭山車が巡行吾子もひく
諏訪の御柱祭(すわのおんばしらまつり) 諏訪の御柱祭囃子響くや崖の上
葵祭(あおいまつり)   空は澄葵祭が陽射しかな
神田祭(かんだまつり)  神田祭夜は静かに能舞台
三社祭(さんじゃまつり) 三社祭大群衆に神輿渡御
練供養(ねりくよう)   詠歌が列祖母もその中練供養
聖母月(せいぼづき)   聖母月庭埋め尽くす白い薔薇
昇天祭(しょうてんさい) 昇天祭森の男ら酒を浴び
義経忌(よしつねき)   反対しますツイート多し義経忌
万太郎忌(まんたろうき) 万太郎忌横に並びて蕎麦啜る
朔太郎忌(さくたろうき) ブラジルの友朔太郎忌にコーヒーを
多佳子忌(たかこき)   多佳子忌や白いドレスが道の果て
袋角(ふくろづの)    突き返す温き脈打つ袋角
蛇衣を脱ぐ(へびきぬをぬぐ) 風に舞う街路樹の上蛇衣
雨蛙(あまがえる)    玄関のサッシにピタリ雨蛙
青蛙(あおがえる)    登り着く吸いて葉の色青蛙
枝蛙(えだかわず)    枝蛙けふはガラスへ腹の柄
水鶏(みずとり)     水鶏や茂る笹の間駆け抜けり
青鷺(あおさぎ)     青鷺や頭上滑空風をきり
白鷺(しろさぎ)     白鷺や田んぼの中でここにあり
葭五位(よしごい)    過ぎ去りぬ葭五位のさき竿入れる
笹五位(ささごい)    笹五位や終日立ちて木の如し
鯵刺(あじさし)     鯵刺や飛び込む海の青さかな
夏燕(なつつばめ)    群れ外れ宙返り見せ夏燕
大瑠璃(おおるり)    大瑠璃や森に響くや庄屋跡
小瑠璃(こるり)     口笛に梢の小瑠璃答え啼く
黄鶲(きびたき)     せせらぎに黄鶲唄ふ山の家
野鶲(のびたき)     揺れる枝野鶲が啼く野原ゆく
海酸漿(うみほうずき)  海酸漿鳴らし唇閉じにけり
蝦蛄(しゃこ)      すし飯や大ぶりの蝦蛄味の良さ
穴子(あなご)      明石駅途中下車して穴子買ふ
鱚(きす)        揚げたて天つゆ浴びる鱚の味
鯖(さば)        幼き日近所の祝いしめた鯖
飛魚(とびうお)     飛魚と聞いてとびつく夕ご飯
烏賊(いか)       魚屋のおすすめレシピ烏賊を焼く
山女(やまめ)      囲炉裏端山女を焼いてコップ酒
穀象(こくぞう)     穀象を入れてはならぬ精米所
斑猫(はんみょう)    斑猫にペース合わせて帰り道
蝉生る(せみうまる)   蝉生る朝の釣瓶が重きかな
白蟻(しろあり)       表面中はすかすか白蟻よ
羽蟻(はあり)      羽蟻脱出証拠遺すや窓の下
蠅(はえ)        打たないで蠅の訴え手をこする
家蠅(いえばえ)     家蠅や動き素早く主に似
金蠅(きんばえ)     金蠅の輝く羽色見とれけり
余花(よか)       山頂が見える横にも余花があり
若葉の花(わかばのはな) 目に優し若葉の花が庄屋跡
葉桜(はざくら)     落ちてこぬ葉桜の下風抜けて
薔薇(ばら)       ドイツから女主が自慢薔薇
牡丹(ぼたん)      一ツ家や何もない庭牡丹咲く
白牡丹(しろぼたん)   暗闇に咲く白牡丹我此処と
石南花(しゃくなげ)   天城路や石南花と会ふ汗まみれ
繍毬花(てまりばな)   手毬花手のひらに散る車椅子
金雀枝(えにしだ)    金雀枝の彩りのぞく塀の上
泰山木の花(たいざんぼくのはな) 高々と泰山木の花遠くあり
蜜柑の花(みかんのはな) 実が残る早く食べろと蜜柑花
栗の花(くりのはな)   雨降れどにほひ舞ひくる栗の花
新緑(しんりょく)    新緑に囲まれ下る最上川
新樹(しんじゅ)      車椅子新樹の森へ立入りて
夏木立(なつこだち)   夏木立ドンの音なき古やしろ
若葉(わかば)      赤レンガ若葉眩しく覆いけり
谷若葉(たにわかば)   朝の鐘遙かに深き谷若葉
柿若葉(かきわかば)   青い空一気に萌ゆる柿若葉
椎若葉(しいわかば)   爽やかに風を返すや椎若葉
樫若葉(かしわかば)   防犯灯塀の向こうの樫若葉
樟若葉(くすわかば)   天空へ沸き上がりたり樟若葉
若楓(わかかえで)    吾子に手や若楓より一回り
夏柳(なつやなぎ)    夏柳弱き風吹く闇の中
常盤落葉(ときわおちば) 雨降れば常盤落葉や地にぺたり
椎落葉(しいおちば)   目覚めたるせわし降る音椎落葉
樫落葉(かしおちば)   若者に押し落とされし樫落葉
檜落葉(ひのきおちば)  檜落葉たなびく煙裏の山
樟落葉(くすおちば)   古刹ぬけ掃いても積もる樟落葉
松落葉(まつおちば)   搔き集め煙のぼるや松落葉
杉落葉(すぎおちば)   風呂焚きや燃え立つかをり杉落葉
卯の花(うのはな)    卯の花のにをふ垣根の闇夜かな
茨の花(いばらのはな)  茨の花かをれど寄せぬ青い棘
桐の花(きりのはな)   渓を行く車一台桐の花
朴の花(ほおのはな)   ビルの窓眼下大きな朴の花
槐の花(えんじゅのはな) ランチタイム槐の花の並木道
栃の花(とちのはな)   栃の花なお穂の高き巨木哉
マロニエの花(まろにえのはな) マロニエの花仰ぎて通りあの人も
アカシアの花(あかしあのはな) アカシアの花雨が似合うと古き盤
棕櫚の花(しゅろのはな) 棕櫚の花遙か高くに招く如
水木の花(みずきのはな) 水木の花誰ぞ名づけぬ悲しとは
山毛欅の花(ぶなのはな) 山毛欅の花雄花雌花と葉を挟み
大山蓮華(おおやまれんげ) 俯きて大山蓮華包む如
庭石菖(にわぜきしょう) 庭石菖空き地あちこち咲き始む
著莪の花(しゃがのはな) 築山を全山白し著莪の花
アイリス         アイリスや肥料少なく花サイズ
ゼラニウム        手を入れず絶える事無きアイリスよ
罌粟の花(けしのはな)  罌粟の花これからですとお辞儀かな
雛罌粟(けしぐり)    雛罌粟や終いのふりして咲き始め
カーネーション      カーネーション咲き始まるか母の日に
マーガレット       マーガレット遠き島より我が庵
カラー          庭の隅カラーを染める日暮れ色 
擬宝珠の花(ぎぼしのはな) 擬宝珠の花控えめに頭下ろしけり
げんのしょうこ         戦場やげんのしょうこを干残し
都草(みやこぐさ)    去年の庭妻と眺めし都草
朝顔の苗(あさがおのなえ) 赤い鉢朝顔の苗吾子運ぶ
萱草(かんぞう)     萱草や日暮れ間近と逢瀬かな
鉄線花(てっせんか)   花壇奧塀に絡ます鉄線花
玉巻く芭蕉(たままくばしょう) 築山や玉巻く芭蕉伸びる先
苺(いちご)       二粒目酸っぱい苺歯は嫌ふ
苺畑(いちごばたけ)   わくわくと苺畑が染める色
糸瓜苗(へちまなえ)   ひょろ長い選べばそれは糸瓜苗
瓢苗(ひさごなえ)    間引きして四枚葉へと瓢苗
茄子苗(なすなえ)    灯さない茄子苗囲みしあんどん
瓜苗(うりなえ)     朝露や伸びる瓜苗向き変えて
胡瓜苗(きゅうりなえ)  花ひとつ曲がるな直に胡瓜苗
山椒の花(さんしょうのはな) 母の名を思い出したる花山椒
山葵の花(わさびのはな) 奥伊豆や山葵の花も咲き頃で
野蒜の花(のびるのはな) 湾曲に野蒜の花占める畦
牛蒡の花(ごぼうのはな) ちりぢりに牛蒡の花を引き抜きぬ
藜(あかざ)       杖示す草むらに立つ藜かな
豌豆(えんどう)     豌豆や烏がジャンプ食べ頃を
莢豌豆(さやえんどう)  実がぽろり莢豌豆や莢を割る
蚕豆(そらまめ)     甲冑の如蚕豆纏う熱き莢
筍(たけのこ)      筍や枯葉掻き分け空を見て
蕗(ふき)        雨しのぐ下駄も濡れなく蕗の下
キャベツ         キャベツ割黄色き花ぞ伸びにけり
夏大根(なつだいこん)  夏大根中まで硬しおろし金
麦(むぎ)        麦扱きやうをんうをんと空響く
麦の穂(むぎのほ)    一本だけ黒い麦の穂指ではね
麦畑(むぎばたけ)    刈り込めど未だ先見えぬ麦畑
烏麦(からすむぎ)    丈高く雀ら呼ぶや烏麦
大麦(おおむぎ)     柔らかき大麦畑穂のなびき
小麦(こむぎ)      小麦刈る母のスピード追い越して
踊子草(おどりこそう)  はにかみて踊子草は君の手に
捩花(ねじばな)     捩花や問われ明かさず幾人ぞ
蛇苺(へびいちご)    旨くとも名前で寄せぬ蛇苺
浦島草(うらしまそう)  浦島草どこまで伸ばす崖の下

NHK俳句附録 俳句手帖より

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