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朝ドラ俳句

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俳句を始めたが、吟行にも行けなくて、朝ドラを見ていたら句が浮かんだ。
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朝ドラ俳句 おむすび 10月

糸島の春を告げ行き鳥の声 どの椀も母の味なり青菜汁 ブロッコリー恥ずかしがりか顔見せず 糸島の海を漂ふ夏帽子 おむすびの横の嫌ひなトマトかな 朝食やブロッコリーのサラダだけ 夏来る時代遅れのハギャル達 夕飯のビールの進み法螺話 太鼓部や桜吹雪の乱れ打 薄暑光太くはね終へ墨香り 新入生下手な太筆自分の名 指の墨さくらの堤帰路急ぎ 雲の位置祖母の予想の春の雨 ぐにゃぐにゃの平仮名はしり花明かり 花埃ギャルぶらぶらとアーケード けばけばし花見疲れのギャルの道 春昼の選別されて

朝ドラ俳句 虎に翼 9月

大皿の鮨喰ひ尽くし春の宵 飾り棚家族写真の増して春 貴女の名呆けの始まり母子草 原爆裁判風化防止のからつ風 傍聴席記者現るる春の朝 呟きぬ裁判が意義春疾風 更年期指の求めて扇子かな 若き日の判事のきみや春の夢 徐徐の痴呆老人雛あられ 晩春の手摺の擦れぬ証言台 原爆忌何処に助けを週刊誌 寒牡丹法司る微力感 更年期扇子ぱたぱたこちら側 しまき雲荒ぶ家族や呆けのゐて 冬の雷望み通りの道の果て 三月の真夜の盛装認知症 手を出せば関係終わる冬終わる ストーブの薬缶の口のあをみしぶ

朝ドラ俳句 虎に翼 8月

大地凍つ人種の壁の堅さかな 初雪や無罪獲得したけれど 喫茶店思はぬ人の雪帽子 判決やけふは奢りとコート着て 裁判長ごめんなさいと呟きぬ 月氷る北の戦地の父の息 凩や届かぬが思ひを口に 総力戦研究神立風と立ち向かふ 霧雪やサインポールの色薄き 細雪汽笛は三度微かなり サインポール昨夜の雪の帽子かな 初雪や他人は見えぬ赤い糸 冬籠短き指の牌を積み 焼芋の仄かな薫卓袱台ぞ 吹雪く朝身近な人の難事件 歳末の紅い紐巻き訪問者 才色兼備悩むことなき年流る 声冴ゆる吾子を餌食と犯罪者

朝ドラ俳句 虎に翼 7月

枯れ芒穂先擦り切れサイン会 「いってきます~」小中高の一年生 酒星ややさし「だたいま」頬撫でて 団子屋の沈黙甘き麻暖簾 春コート出会ひ初めの沈黙よ 初出会ひお見合ひの如秋日和 秋麗このフレーズの朱い線 秋惜しむ仕事以外の楽しさよ しるこ屋の序文読む師や秋日和 出版や夫の遺影へ秋尽く夜 卓袱台の唐黍齧り宿題が 月一の身にしむ痛み母伏せて 判決の少数意見秋惜しむ 秋の宵法律談義の眼差し しるこ屋の二人の時間秋めく日 小春日和団子屋の決む幹事役 親権を採らぬ夫婦の隙間風 花束

俳句 虎に翼 6月

法曹会館春闌が君を待つ 人事部の応対邪見春兆す 人事課長焼芋の皮ある小鼻 GHQ霞棚引く民主化へ 春さなか机を貰ひ調査室 花冷の緊張抑へ踊り場 台所夫ゐぬ春もここにいて 初任給御馳走にせむ桜餅 軽薄な言葉遣ひや芽立前 桜守出会ひ初めて緊張感 乱雑な破調の庭や芽立時 我先と芽組む民法目新し 春の森改民法の先見えず 過去の人五月曇の昼休み 風死すや旧知ばかりの職場かな 五月晴二人ベンチの昼休み 司法官闇米喰らふ涼し顔 夏めくや半分渡しチョコレート 夏始君の子供にチョコレート

俳句 虎に翼 5月

依頼人無実の罪を冬はじめ 取材受く鉛筆の先浅き冬 冬めくや路面電車の砂埃 革張りの爪切るソファー夜長かな 雪催起訴認めるか証人台 牢獄の革手錠締む熱帯夜 冬用意全て否認の証人は 流れ星手帳帳簿の新証拠 秋晴るる盾なる人権蹂躙 神無月触れ合ふ手と手主文待ち 判決文ロマンあふれて冬の空 差し入れの勝訴祝ひの鰤並び 冬日和無罪を祝ふ台所 福笑ひ歪みの消えて父の顔 水源の味しるこやの初景色 入学試験皆も名前無き発表日 司法試験合格誓ふ梅雨の後 只飯はははは食わせぬ梅雨の入 麦の

俳句 虎に翼 4月

笹舟や憲法可決の六月 どの口に差別されないふかし芋 逃げ水や戦禍そのまま道普請 空蝉や見合い相手の身上書 夏真昼はいかいいえの会話あり 秋麗五黄の寅の見合かな 秋宴婚約祝ひ父母揃ひ 秋の昼珍問答の橋の上 愛の羽根法の講義の夜学生 立ち話教授登場秋気澄む 秋の夜や弁当渡し秋めく夜 入学へ疑問の晴れの講義室 麦の秋三者面談終え汁粉 惚れた人バケツの水も虹となり 虎が雨したたかに説け生きる道 一目惚れ春の丸亀この娘いて 麻柄の手拭叩(はた)き九月かな 花衣男のはしゃぎ披露宴

俳句 ブギウギ 三月

四月来る楽し買物籐の籠 春眠や慣れぬ仕事の後悔が これ観よと魚氷に上る唄ふ声 目を覚まし桜がさねの舞台袖 鼻つまみ人参は口へと向かふ 風薫る滑る縁側馬ごっこ GHQ蠟國鳴くも旅行許可 吾子一人庇に届け紙風船 秋を待つ普通の母の決める道 吾子と歌夏の別れの風呂上り 角の立つ丸き卓袱台終わる夏 吾子の声耳から逃げて秋の空 丸ケーキは六分の一忽草 秋初め初めての家文初め 秋されや帰国前夜の星条旗 母帰国吾子の頬触る今朝の秋 板チョコや秋のアメリカ大きくて 闘病の父と娘と瀬戸の

俳句 ブギウギ 二月

変わりなき言葉毎回春ポスト 兆候やカバンの中へ丹前も 倒るとも春のかたみの手紙書き 陣痛と夫の別れの夜半の春 産まれたの言葉届かぬ三月尽 赤子囲み神妙な面(おも)ヒヤシンス 涅槃西風息絶ゆと告ぐ涙顔 遺稿抱き小草生月一昼夜 三人で春の湖畔の遊園地 美しも短き命石鹸玉 開け広げ箒軽やかサマードレス 夏帽子ミルク代得る呼び名へと 行水の赤子うっとり祖母の腕 夫の死と子の死に耐えて終戦日 きみの唄写真や待たん夏最中 末っ子や妹欲しく芋を喰ふ 兄ちゃんを真似て成長五月来る 単衣

俳句 ブギウギ 一月

まだにほふ焼け跡続き氷見の夏 被災者のひしめき旅館さつま汁 葭屏風拭きて聴かせてトランペット 後のない集ふ少年南吹く 旅の宿何を想ひて月仰ぎ 夏の星勝ちて帰らぬ夫偲び 新型爆弾新聞知らし夏の朝 南風旭日旗背の別れ唄 〇〇と伏字美し蠅払ひ 玉簾下手な字笑ふ夫の文 一部屋のラジオを睨み終戦日 解放の夏の空へとデモの声 真夏日の満員列車東京へ 生き返る裸電球夏の夜 ゼロからや野の草摘みの新しき 復学の意欲の芽延ぶ瓜の花 家庭菜園大根伸びて迎ふ秋 武蔵野の青空市場秋の空 欲くら

俳句 ブギウギ 十二月

大の字の生活の飽き夏桜 煉瓦積ホールの唄や浜蓮華 蚊を叩く娘と二人コップ酒 夏の真夜寂しさ消えぬ寂しさよ 夏の夜の唄唄えたく新楽団 旗揚げも枯れ立つ柳押すが如 ホラ吹きの空也念佛進む昼 一人増えひま洩る風の夕ご膳 強情の冬木の櫻や楽譜なき 夕日射す冬の名残の聲限り 戦死通知菫色したコート落つ 繰り返し牡丹の火鉢抱き読み 弟見たか冴ゆ満州のこの月を 弟出でて悴む歌の出ぬ口よ 万歳や弟ゐぬ暮のさそい唄 弟の死も湖凍る万歳ぞ 父の行く蘆の枯葉も何も無き 歌いたく氷壁の前より人

俳句 ブギウギ 十一月

競り市場軍歌流るる師走かな 冬の虹スポットライトタップの音 役割や目立ちたがりの冬最中 冬の風睫毛の長く歌の揺れ 芸磨く周りを変えて冬めく日 ブラボーや年の名残の金モール お座敷の冬至の踊友の待ち 焼き鳥屋ビールの暖簾かき分けて もう見れぬ母の歓び年の暮れ 末の冬信じられぬことありとは お別れ会遺す乳飲み子抱き冬至 玄関に喪服脱ぎ置き年の暮れ 栓抜くも泡のたたない年暮るる 年歩む育てたように子は育ち 寒がはり別れ公演つけまつげ 心地よき春暖の銭湯のタイル 春動く窓の額縁

俳句 ブギウギ 十月

ブギウギの浮かれリズムの秋の朝 銭湯の煙突高し秋の空 爽やかな歌声聞こゆ着替え篭 番台の女将スパスパ秋の宵 秋の昼師匠の振りの真似をして 新秋や義理人情の銭湯代 番台の恋歌聞こゆ春の宵 一番客只の招きの秋終 易断の旗を目掛けて秋の風 けらの音なにも持たないいやなこと 夢描く歌ひて暮らす稲光 秋袷恋文とかのはしたなき 弟とお面の似合ふ秋祭 卒業を昭和初めのお正月 才能は唄と踊りと春を待ち 日向ぼこラララのスズ子絵に唄ふ 薪割のリズムのはやさ春の歌 歌声の記憶の戻り春きざす

らんまん 九月

想い出は吾子の細筆ヒメスミレ 輝く峰沼津の二人眺む春 植物図鑑最後に載せてスエコザサ 枕辺の植物図鑑庭の花 メソメソと別れ行く妻待つ花野 緊張の顔ゆるませて文化の日 本棚の吾子のゑ取りて秋日和 仁淀川夏休み会ふ友来たり 秋惜しむ無くなるものを書き残し 行く秋や校正の束抱きしめて 葭障子理学博士の勧められ 七輪や沼津の鯵を炙る昼 文化の日理学博士の名を刻み 見送りの玄関の上百日紅 博士号授与式妻と見上げて秋の青 主ゐぬ書斎の流る初夏の風 玉子丼出戻り覚ゆ半夏生 遺されて植