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春の毛糸

君のくるぶしにはネジが埋まっていて、君が世界地図を踏むたびに少しずつ緩んでいくんだよ。ネジが外れる頃、君は地に深く埋まってしまう。埋まってしまえばいい。最初から全てに価値を見出そうとする君の悪い癖が好きじゃなかった。君の手にあるのはフォーク。鋭くあればいいのに、傷つき足りない。勝負をしよう。私が、君が埋まる地を踏んで踏んで踏んで固く固く埋めるから。冷たい風が恋しくなったら、私の勝ち。先に私が暖かなタオルの匂いが恋しくなったら君の勝ち。こんな事を20時、バスの中で考えていた。今は、雨上がりのアスファルトに寝転びたい。髪の毛を道路に貼り付けて大の字になりたい。春は、シュノーケルがしたかった。パイプにワカメでも貼り付けて笑われるような窒息死がしたい。
毎回の郵便受けの確認、開けた小包は春が終わった匂いがした。

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