
子音のフォームが曖昧だとこんなミスが生じます! ピンイン教本-11 日本人は子音の発音が苦手です!なぜ?
パンダのシャンシャン(香香)の話題を、杉山外務次官についての質問と勘違いした、あの冷静な華報道官が、間違いに気づいて思いっきり弾けて笑う顔がなんともチャーミングで、結構大きく報道されたシャンシャン事件。中国語を学ぶものにとっては、日本人がうっかり言い間違えやすい発音の原因に注意を向ける良い好材料でした。
その注意点は子音の発音にあります。
まずはニュースをご覧ください。
シャンシャン事件
日本人の記者は英語で質問をしています。英語のなかで「香香」を発音しましたのでちょっと雑な感じの中国語になっています。華報道官が聞き間違えるのも仕方がありません。結局この「香香」と「杉山」の中国語発音が似ているから華報道官が勘違いしたと報道されました。
記事の焦点はあの華報道官が見せた笑い顔に、さすがパンダだとそちらに焦点が当たっていますから、記者の発音には誰も問題視していません。中国人記者だったらどんな記事になっただろうかと興味深い事件でした。
さて確かに音で聞くとシャンシャンと杉山の中国語は、日本人には聞き分けられないほど似ています。でもピンインでみると全く違うしろものです。

ShanとXiangの違い
杉山のピンインは「Sh(i) +an」で「Sh」はそり舌音です。そり舌音のフォームは「舌が立って、唇をあいまいに横に引き」ます。母音はanですから、日本語のシャ(ア)に近い発音になります。それこそローマ字読みをすれば「シャア・ン」です。
ただ「Sh」の子音の音はそり舌ですから、日本語のようにすっきりした「シ」にはならないで、舌を巻いたこもった音です。
他方「香」のピンインは「X(i)+iang」で、子音は「Xの舌面音」ですから口の構えは「j(i)/q(i)/X(i)」の「X(i)」です。口の開きは短母音の「i」と同じで「口を真一文字に」引いています。
母音は「複母音・iang」です。「介詞の i+ang」で、唇と口の構えはiからang へ滑らかに、でも瞬時に動きます。※ 介詞については「教本‐9」で解説しています。
口を真一文字に引いた構えでX(i)から iang へi発音します。Xiの「i」の構えではじまり、続く介音も「i」ですから、「Xi」の音声が聞こえます。
杉山の発音のSh(i)でも「i」の音になりますが、子音のそり舌の影響で明瞭な「i」にはなりません。他方香香では「i」の唇を真一文字に横に引く形が、最初にかつ瞬時に作られていますから、舌面音で日本語のスッキリしたシに近い音になっています。違いは微妙ですが、音色には明らかに差があります。
このように、杉(山)/Shānと香/Xiāngの発音の違いは子音のSh(i)とX(i)の違いにあります。中国語のピンインで重要なことは,続く母音が何であれ、子音の口の構えをまず作ってから発音をスタートしなければなりません。構えが違うことで、このSh(i)とX(i)の二つの子音は「シという音」の音色の違い!が生じます。
英語圏も子音の発音が優先なので英語圏の人には有利な中国語、逆に日本人には発音の面では不利な中国語
「中国語のピンインで重要なことは,子音の口の構えをまず作ってから発音をスタートしなければなりません。」と述べましたが、このことは中国式発音練習の方法から、中国語では子音優先と考えることができるからです。
英語圏の人も子音優先のようですので、日本人が中国語発音で不利な理由は、日本語の母音優先にあるからとも考えられます。
母音優先の日本語耳で「シャン」はどう聞こえるのか?
シャの日本語は「Sha」ですからシャ(ア)の「あ」の口の開きが前面にでてしまいます。
しかしピンインでは杉(山)「Sh(i) +an」であれ、香「X(i)+iang」であれ、日本語の「シャ(ア)」ではありません。ただ杉山の場合発音のスタートでSh(i)
で口のフォームを作りますが音声にはならずに、母音の「an」を続けて発音します。口の動きはsh(i)、そり舌の音の「シ」+明瞭な母音の「ān」で発音しているため、日本語の「Sha」に近い音で聞こえます。
ですので日本人が香「X(i)+iang」を発音する時、子音「X(i)」の口を横に引く構えをしっかりと作っていませんとピンインの「Sh(i)」との違いがはっきりしませんので、まして日本語の「シャ」に近い発音をしますと、そり舌にはなっていないけれど、一声のようだから杉(山)(Shān)のことだろうと、聞き間違えられる可能性は大!です。
ピンインの子音の発音がxiであるなら、「X」の子音の口の構えを作ることを意識して発音すれば、子音優先の発音になります。実際母音が「i」ではなく「u( ü )」であっても、「X」の子音の口の構えができていれば、決して「Shu/Shū书」で発音することはありません。「Xu/Xū 需」になります。
なお「X」の子音では「Xiu/Xiū休」もあります。この発音は母音が「ü」ではなく「iu」ですから、この母音もきちんと言い分けるようにしなければなりません。子音優先でありながら母音も重要ですから中国語は大変です。
この事件で、華報道官が日本人記者の香香の発音を杉山と聞き違えたのも無理もないと思います。ですからこの事件の実相は聞き違いではなく、「言い違い」だと個人的には思うのですが・・。
こちらは同じニュースの英語版で後半の方では華報道官が何度もパンダの「香香」を口に出しています。「杉山」のつもりで発音しているのが最初の方ですから、日本人記者の発音も含めて、両方を聞き比べることができます。
母音・子音の分解は中国語ピンイントレーニングでは重要!
杉(山)/Shānと香/Xiāngの発音の違いをee!chaiの講師が実演した動画があります。ご覧ください。
日本語耳で聞いていると違いが分かりにくいのですが、このように母音・子音に分解して聞き取る方法で行う、ピンインの書き取りテストだと思って聞きますと、違いを掴む要領が分かります。それができればあなたの発音は、レベルが一段階は間違いなく上がります。「言えれば聞けて、聞ければ言える」の原則があるからです。
この分解がユーチューバーの李姉妹の言う「破壊と構築」の破壊です。ピンイン教本マガジンの最終回でも取り上げました。