瀧本哲史(たきもと てつふみ)さんの想いを一人でも多くの若者に伝えたい

6月30日の夜に、「瀧本哲史ゲリラナイト「伝説の東大講義」をみんなで聴こう!」という企画がYoutube上であった。2012年の6月30日に実際に東大で約300名の若者限定で行われた講演のリメイクだ。講演の最後に、「8年後の今日、2020年6月30日の火曜日にまたここに再び集まろう」と締めくくられた。しかし、瀧本さんは昨年2019年に病のため急逝し、実際に集まることはできなかったが、ある出版社の編集者の方は講義内容を纏めた書籍を出版し、オーディオブックが音声化したものをYoutubeを使って再現された。

瀧本さんとは私の前職であるベンチャー企業に居た時に、当時のCTOの東大出身の親友というご縁でお目にかかったことがある。恐らく、東大助手からマッキンゼーに転職されて活躍なさっていた頃だと記憶している。それ以来お目にかかることは無かったが、京都大学での人気教員だったことも、NHKなどのテレビ出演でも活躍を目にしていた中での、昨年の突然の急逝には大変驚いた。

今回、新ためてこちらの講義を拝見して、日本としても本当に惜しい方を亡くしてしまった感覚が強い。でも、本人はこの世には存在しなくても、このように文字や音声によって本人の想いは脈々と受け継がれていくことは素晴らしいことだと思う。是非、多くの若い方々に読んで貰えたらと感じます。
https://note.com/doourhomework/m/ma4b531c5c2ec
★7/6迄の限定で講演の全文を読むことができるようです
そして、私が特に印象に残った箇所、「言葉」について言及された部分を一部ご紹介します。

(星海社新書の「2020年6月30日にまたここで会おう」の中から引用)
 教養のなかで何を一番に学ぶべきか?僕は、「言語」がもっとも重要だと思っています。言語といっても、仕事で役立てるために英語や中国語やプログラミング言語を勉強しろというセコい話ではありません。みなさんがふだん日常的に使っている言葉、日本語、そこに秘められているすさまじい力を知って、とことん磨きあげてほしいんですよ。
 言語にはギリシャのアリストテレスの時代から伝統的に、2つの機能があると言われています。「ロジック」と「レトリック」です。ロジックというのは日本語で言えば「論理」ですが、もう少し意訳すると、前提が真なら結論も真となるような推論の型のことで、ざっくり言うと、「誰もが納得できる理路を言葉にすること」ですね。
(略)
 このロジックを鍛えるには、言葉の正しい運用の仕方や論理の構築の方法をしっかりと学ぶ必要があります。
(略)
 言葉の機能のもう一つの「レトリック」は、日本語では「修辞」と訳されます。簡単にいえば、「言葉をいかに魅力的に伝えるか」という技法がレトリックになります。日本では「彼の言葉はレトリックしかない」とか、言葉を飾るだけみたいなネガティブなイメージで使われることも多いんですが、本来のギリシャ時代から続く弁論術のなかでは、レトリックについて、聴衆を魅了し、説得して賛成してもらうための重要な能力と位置づけています。アメリカ大統領のオバマさんは、非常にスピーチがうまいことで知られていますが、彼の話し方や聴衆の心に響く言葉の選び方、伝え方は、ものすごくレトリックが優れているんですね。
(略)
 つまり「言葉には力がある」ということは、究極的には、アメリカ合衆国の大統領になれるほどの力を持つ、ということでもあるんですね。はい。
 日本でも、たとえば明治維新は、人々が「言葉の力」で国を動かした、わかりやすい好例でしょう。じつは明治維新って、あれだけ大きな社会変革だったのに、フランス革命とかアメリカの独立戦争と比べて、驚くくらい死者が少ない革命だったんです。フランスは100万人、アメリカは50万人だったのに対して、たしか3万人くらいだったかな。それは、薩長ら倒幕派の人々が、武力よりも言語を使って意見を統一していき、仲間を増やしていくという活動を積極的に行ったからです。明治維新というのは近代革命の中でも、際立って言葉を武器にして行われた革命だったと言えるんですよ。
 民主主義の社会では、銃や鉄砲で政府を倒す必要はありません。まず「言葉」によって正しい認識にいたり、「言葉」を磨くことでその認識の確度を上げていく。そして「言葉」を使って相手の行動を変えていくことで、仲間を増やし、世の中のルールや空気を変えていくことが可能なんです。

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