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乳幼児期の教育投資にどれくらい意味はあるのか!?

noteの投稿が長らく空いてしまいました。最近は保育現場にいる時間が増え、改めて実感することや発見がたくさんあります。また、日々仲間が増えていく中で、自分の理解したことを自分の頭の中だけでなく、外に共有していくことが社内にも役立つと思い、不定期ながら記事を更新していきたいと思います。

今回は0歳から6歳の教育価値についてまとめてみました。乳幼児期の教育効果は見えにくく、実感しにくい部分も多いです。そうしたことからまずは乳幼児期の教育にどのような意味があるかを過去の研究から見ていきます。

0歳から6歳の教育価値

0-6歳の教育、なぜ重要?

近年、アメリカを中心に幼児教育への関心が高まっています。日本においても、中室牧子著「学力の経済学」やヘックマン著「幼児教育の経済学」などの書籍が話題になっています。

なぜこれほどまでに、幼児教育の重要性が叫ばれるのでしょうか。

①愛着形成(アタッチメント)

②脳の90%は6歳までに作られる

③脳のシナプスは1歳時点が一番多い!?

④非認知能力の重要性

⑤幼少期の教育の人生への影響

以上の5つに分けて解説していきます。

①愛着形成(アタッチメント)

幼少期に形成されるべきものとして、「アタッチメント=(愛着形成)」が重要です。

アタッチメントとは、子どもがある特定の人にだけ示す情緒的な結びつきのことで、イギリスの心理学者ボウルビィによって提唱されました。

例えば、「抱いたら泣きやむ」「不安なことがあるとしがみつく」など、特定の他者とのくっつきによって、安心感・安全を回復させようとする行為です。

アタッチメントは不安を抑制し探索行動を活性化し、 子どもに安心感を与え、自己や他者への信頼感をもたらします。 そして、ここで育まれた人格の基盤が、様々な能力や資質を育みます。

適切に形成されないとどうなる?

では、アタッチメントが適切に形成されないと、発達にどのような影響があるのでしょう。

子どもの発達の初期段階で、養育者と十分にコミュニケーションが取れず、絆を確立することができない状態を、マターナル・デプリベーション(母性はく奪)といいます。

幼児期にマターナル・デプリベーションが起こった場合、成長していく段階において、他者との新たな愛着の形成が苦手になると言われています。

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マターナル・デプリベーションの具体的な症状例は、

癇癪を起こす・怒りやすい・乱暴・わがまま・いじめをする・おねしょ・爪を噛むなど。

また、自尊心が低い、相手の立場に立って考えることなども苦手になるとされています。

親からの愛情不足の状態が長期間続くと、子どもの心だけではなく身体にも様々な問題が現れるようになり、最悪の場合非行や自傷行為などにも繋がる可能性があり深刻な問題です。

②脳の90%は6歳までに作られる

幼少期(0-6歳)の教育が大切だと言われるのは、脳の発達と関りがあります。

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出典:「スキャモンの発育曲線」でわかる!3歳からスポーツをはじめたほうがいい理由 | Greenfield|グリーンフィールド アウトドア&スポーツ

生後からおよそ20歳までの身体発達を考察する上で、Scammon(1930)が作図した身体の4つの発育曲線パターン(スキャモンの発達曲線)というものがあります。

脳の発達は、この神経型に分類されます。
4-5歳で80%ほど、6歳の時点でおよそ90%が完成していることがわかります。

6歳までに脳の90%が作られると考えれば、それまでの期間で脳へ良い刺激を与えておくことが重要になります。

③脳のシナプスは1歳時点が一番多い!?


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出典:幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会(第1回)配付資料4-3 榎本委員提出資料 

脳の役割を果たすために重要なのがニューロンです。これは脳の神経細胞のことを示しており、約1000億個存在します。ニューロン同士がしっかりと結びつきネットワークをつくっています。この神経ネットワークが、我々の思考や記憶を支える構造基盤となるのです。そしてこのニューロン同士を繋ぐ役目を果たすのがシナプスです。シナプスを介してニューロン同士の情報のやり取りをするので、シナプスの数は脳内のネットワークの数を反映しています。

その大脳皮質のシナプスが一番多いのは生まれて半年から1年です。そこからは一気に減っていき青年期にかけてほとんど増減がなく一定の数に落ち着きます。

ここで言及したいことは、シナプスが多い1歳時点が一番ポテンシャルが高いということです。「脳の使われ方」によって「何にでもなれる」状態です。脳内のシナプスが1歳以降減るというのは使われない回路は消滅していくということです。1歳頃にどのような経験ができるかでその後の「脳の状態」が変わります。

④非認知能力の重要性

次に、非認知能力についてです。

非認知能力とはOECDでは「社会情動的スキル(Social-emotional skills )」と呼ばれ、目標や意欲、興味・関心を持ち、粘り強く、仲間と協調して取り組む力や姿勢のことです。

他者への思いやりやリーダーシップ、モチベーションの高さなども含まれ、点数やIQでは測定できない力のことを指します。

非認知能力については、その重要性が様々な論文にて述べられています。

例えば、オランダの高校生の成績(学力テストとGPA結果)を用いたBorghans et al.(2011)の研究では、学力テストの変動要素において非認知能力が影響を与えること、GPA結果については、IQよりも非認知能力が与える影響が大きいことを報告しています。

学力テスト点数の変動を説明する際,非認知能力(性格)が IQ と同じくらい重要な変数であるとされているのです。

「他者と上手くやっていくスキル」といえる非認知能力。

文部科学省の「生きる力」として示されている「見つけた課題に対して主体的に判断・行動し、より良く問題解決する資質や能力」・「思いやり」「他者との協調性」などの言葉に当てはまると考えられるものも多いです。

Borghanset al.(2011)[https://books.google.co.jp/books?id=Vi4yDwAAQBAJ&lpg=PA64&ots=KcyaydHqus&dq=Borghanset al.(2011)&hl=ja&pg=PA31#v=onepage&q=Borghanset al.(2011)&f=false](https://books.google.co.jp/books?id=Vi4yDwAAQBAJ&lpg=PA64&ots=KcyaydHqus&dq=Borghanset%20al.%EF%BC%882011%EF%BC%89&hl=ja&pg=PA31#v=onepage&q=Borghanset%20al.%EF%BC%882011%EF%BC%89&f=false)

⑤幼少期の教育の効果

最後に、幼児教育分野では有名な、「ペリー就学前プロジェクト」と並ぶ、「アベセダリアンプロジェクト」も注目したいところです。

アベセダリアンプロジェクトとは、社会的に不利な子どもへのRCTによる効果を検証したものです。1972年にノースカロライナで開始され、言語スキルや認知能力の発達に特化した「教育ゲーム」の実施を行いました。

生後3か月から1歳では違いは見られなかったものの、生後15か月になると結果がデータに現れました。ゲームを教育ゲームを受けていない子どもと比較し、話し方が上手でIQも高かったのです。

また、30歳時点において、2年以上雇用されているかの確率や幸福度、大学卒業率(なんと4倍以上)などといった効果が確認されています。

まとめ

教育効果という点で乳幼児教育を考えたときには、精神面・学習面・人間性などにおいて重要な時期であることがわかります。

言い換えると人生においての「基礎」を形作る時期として、非常に重要と言えるのです。

だからこそ本当に子ども一人一人にとってベストな教育が必要です。エデュリーは一人一人に最適な教育とはなにかはもちろん、乳幼児教育効果の可視化も引き続き行っていきます。

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