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オンライン授業を"人間らしく"するコツ

いきなりはじまったオンライン授業、順調ですか?対面と比べてやりづらさを感じていませんか。突然の休校やオンライン化に対応される先生方には、本当に頭が下がります。

私はアメリカのワシントンDCで教育研究員をしている識名と申します。
オンライン授業を開始したものの、対面に比べてやりづらさを感じているという悩みを日米両方の先生からいただいたので、スタンフォードの先生おすすめのオンライン授業を「人間らしく」する工夫をご紹介します。キーワードは「一緒にみる」と「お互いをみる」です。一般の方にとっても、授業オンライン会議をより生産的にするヒントにもなるかもしれません。

この記事では、主にスタンフォード大学のd.schoolでバーチャルコラボレーションの研究をしているGlenn Fajardoさんの記事を引用しながら、オンライン授業がやりづらい理由とそれを打破する工夫をご紹介します。

Tipsをすぐに知りたい方は②に飛んでください。
教職員向けは無料のワークショップも企画しています。
え?うちの学校はまだそれどころではない?オンライン授業の前にwifiがない?大丈夫。世界中の先生が同じように悩んでいます。同じような色んな悩みを抱えたアメリカの先生のポータルサイトを⑤で紹介しています。

①オンライン授業が「ぎこちない」理由

ビデオ通話って何かぎこちなくないですか?
(ピーピーピー!警告警告!違和感あるところにイノベーションのニーズあり!)

機能としてはビデオツールで十分な筈なのに、なぜかオンラインの会議や授業は対面よりも進めにくいこと、ありますよね。Glenn氏曰く、そのヒントは映画にあるとのこと。

私たちが毎日をどのように知覚しているか、映画の編集者がよく知っています。人間の視線は常に動いているのです。
実際に対面で話すとき、相手の顔をずっと眺めてはいません。人間は複数の方法でインタラクションしているのです。

確かに、外出禁止で色んな劇団がミュージカルを定点カメラでとったものを流していますが、元々映画用に撮影されたものに比べて迫力に欠けると感じませんか?実際のミュージカルでは、私たちは客席も含めて色んな場所を見ています。それを再現しているのが映画です。試しに好きな映画を1分ほど観察してください。同じシーンでも顔のアップ、引いた全体像、周囲の人の表情など、数秒でカメラカットがくるくると変わっているはず。私はミュージカルを観るのが好きですが、舞台装置だけでなく自分自身の目でカメラアングルを変えているのです。

私はグロービスという経営大学院の動画教材をつくる仕事もしていますが、講師が画面に向かって話すシーン、アナウンサーに読み上げてもらう部分などに細かくわけ、アニメーションが頻繁に切り替わるように工夫しています。YouTuberの編集技術も参考にしています。

②オンライン授業を人間らしくするために <一緒にみる>

オンライン授業をもっと人間的にするには、対面授業で実現している知覚、つまり「一緒にみる」と「お互いをみる」をオンラインで実現するのが有効です。どういうことでしょうか。まずは「一緒にみる」から説明します。

Zoom飲み会は、同じ料理を食べながら話すと盛り上がるそうです。共通の体験があるから。先生の口癖の数をこっそり数えてクラスメイトと発表しあったことはありませんか? 体験を共有するのは例えバーチャルであっても、同じ空間にいる醍醐味です。オンラインの場合は更に一歩先の「一緒に作る」を実現することもできます。Glenn先生は

これをオンラインで実行するには、2つのツールを同時に使うことが有効です。一つはZoomなどのビデオ通話ツール、もう一つは全員で編集できるデジタルスペース。
チャットツールも悪くはないですが、オススメはしません。
チャット機能はフライドポテトのようなもので、美味しく中毒性がありますが、食べすぎるとメインディッシュを台無しにします。

とおっしゃっています。フライドポテトに例えるところがアメリカっぽいですね。一方通行で聞くのではなく交流できることが大事だけれど、チャットツールは構造化や編集が出来ないのでおすすめしないそうです。ではどんなツールならハンバーガー、じゃなかった、良いツールなのでしょうか?

デジタルスペースは、参加者が同時にアイディア全体を見ることができ、空間内を自発的に移動し、編集、進化できることなどが重要です。

おすすめは
・全体を俯瞰してみる
・空間内を自由に移動できる
・みんなで同時編集ができる
の3つが揃ったツールです。

アメリカではMURALやMiroが人気(日本の先生のおすすめは調査中)。共有スペースに付箋を貼ったりペンで書き込みをしたり好きなスタンプをワイワイと貼ることができます。実際のホワイトボードや模造時では体が邪魔でせいぜい5人位でしか動かせませんから、もしかしたらオンラインの方が拡張性があるかもしれません。例えばこんな感じ。複数人で同時編集すると、なかなかの圧巻です。(動画再生してみてください)

付箋を貼って動かしたり、落書きや投票もできます。

③オンライン授業を人間らしくするために <お互いをみる>

もう一つ大切なのが、お互いを見る体験。知らない人と受ける授業より友達と一緒に受ける授業の方がずっと楽しいですよね。せっかく同じデジタル空間にいるのだから生徒同士がお互いを見ることができる仕掛けをたくさん入れましょう。

普段教室を見回すように、ギャラリービューでお互いの表情に注目する仕掛けを入れましょう。お互いのいる場所のバーチャルツアーをするのもオススメです。

バーチャル背景も素敵ですが、画面の向こうの相手がどんな空間にいるのか、三次元でお互いの感覚が掴めると、リアリティが増します。

何かしらボディランゲージを使うワークをしましょう。
同意!よくわかりません!面白い!などのボディーランゲージを予め決めておいて、そのポーズを取ってもらうのも良いです。

単にギャラリービューにするだけでなく、会議や授業の途中でお互いに注目するような仕掛けをつくります。例えば「Aだと思う人は右手を、Bだと思う人は左手を、Cだと思う人は両手をあげてください」という指示を入れると、まるで教室を見渡すように視点を切り替えることができます。低学年には、指名された人がバンザイして次の人を指していくスピードゲームなども楽しくておすすめです。

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Glenn氏ブログより
みんなで人文字を書いても楽しいですね。

④オンライン授業は本質的に自発的なもの

オンライン授業は対面よりも簡単に席を外せるし、別画面でSNSをしたりオンラインショッピングをしたりが簡単にできます。これを防ぐにはテクニックよりも「本質的な動機付け」を育てなくてはいけません。本質的な動機付けに必要なのは
自律性—ある程度自分でコントロールことができる
能力—進歩と成長を実感する
関連性—他者とのつながりを感じられる
です

サボらないように監視するよりも
「他の人のアイデアを見て回れるようにしたい」
「目立った変化を生み出しているように感じたい」
「さまざまなことに対する人々の反応を感じたい」
といった生徒の要求を満たすのを手伝う工夫をすることが大事です。

とはいえ、言うは易し。実際には、初めてのことだらけで、てんやわんや。新しいツールの発掘なんてやってられないですよね。私もそもそも席に座らない子が複数いるクラスで苦労している時に「もっとグローバルに戦える生徒を育てるための教育をすべき」と言われた時は、フライドポテトをその人の口に詰め込みたくなりました。できることから少しずつ。「一緒にみる」と「お互いをみる」の2つを取り入れると、オンライン授業はより人間的になるらしい。とだけ知っていただけたら十分です。

⑥ワークショップご案内

「一緒にみる」のに使えそうなツールの機能をご紹介したり、実際に体験してみる会を開催したいと思いますので、興味のある方はぜひ下記リンクからお申し込みください。先生応援企画なので、教職員、自治体職員、学生は無料です。先生応援企画なので、教職員、自治体職員、学生は無料です。

<再々々追記>3日程増やしました。

6/4(木)

6/6(土)

6/10(水)

<再々追記>大変ありがたいのですが、現在日程を増やすと、すぐに満席となってしまう状態です。追日程が確定次第連絡させていただきますので、ご希望の方はこちらからメールアドレスをご登録ください。
→ 6/4 6/6 6/19の席を増やしました。別イベントを含む今後のご案内を希望される方は引き続き可能です。
<再追記>5/21(木) 5/29(金)の回も満席となってしまったため、6/11(木)6/12(金)の回を増やしました。
→満席になりました
<追記>5/28の回が満席となってしまったため、5/21(木) 5/29(金)の回を増やしました
→満席になりました

参考URL

Making virtual more human
Making virtual more human: What can it look like in practice?

⑤オンライン授業お助けポータルサイト(英語)

40年以上も続いているアメリカ最大のEdTechコミュニティのISTEが今回の休校やオンライン化のポータルサイトをつくりました。無料教材やツール、困っていることとそれに対するプロのアドバイス、子どもが家にいる親向けの教育ツールやヘルプデスクなど、とても充実しています。世界中の先生が試行錯誤しながら、子どもたちの学びを止めないために、戦っているんだなということが伝わってきます。



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