プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか?
非常に高度で専門的な内容であった本書。
著者は、7年という歳月をかけて歴史、文学、言語学、教育学、脳科学、あらゆる側面から「読むこと」を深く掘り下げている。
読み進めていて驚いたことは、著者自身の子どもがディスレクシアであること、そして、祖先から続くディスクレシアの遺伝的な家系であるということだ。
本書は、人類が歩んできた読字の歴史から始まる。そして、子どもがどのように読み方を覚え、その時に脳はどのように発達していくのか。また、熟練した読み手となった脳もまた、どのように変化していくのか。そこから脳が読み方を学習できない場合=ディスレクシアについて言及されている。最後は、本からインターネットへの時代の流れが何を失い、何を獲得するのかについて述べられている。
「読字発達に終わりは存在しない」(P.243)
文字を読み続けている限り、脳は変化し続ける。
ディスレクシアの長男を考える書籍としてだけでなく、「読むこと」がいかに大切なのか、本書からはそのことを学ばせてもらった。
以下、メモとして残したい。
5歳までの読み聞かせの重要性
著者は、幼児期の読み聞かせの重要性および家庭でのコミュニケーションが言語発達に与える影響と可能性について触れている。
生まれてから5歳になるまで、語彙力にどれほどの差が出るのかという点が非常に興味深かった。
早期に「読み」を覚えさせることの危険性
一方で、「早期に読ませること」についての危険性について言及している。
脳の発達段階から考えると、早期に読み書きを覚えさせることは逆効果にもなりうる。また、男女別でいえば、女児の方が流暢に読めるようになるのが早く、男児の中には特に遅い子がいるという。
ディスレクシアや障がいから考える多様性
人類が読む能力を獲得した瞬間からディスレクシアが生まれた。
「読み書きを必要としない社会」であれば、ディスレクシアという障がいはなかった。社会のあり方が、障がい者をつくる。それは、ディスクレシアに限らず、すべての「障がい」に当てはまること。
だからこそ、社会は集団から生まれる特異に対して、様々なニーズを満たす方法を生み出すことができるし、その必要がある。そして、それはこれからも続く。
そのことを改めて考えさせられた。
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