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ここで利上げ?

ここで利上げ?


 日銀は本日(7月31日)まで開催されていた政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物誘導金利)を現在の0.0~0.1%から0.25%に引き上げると発表した。

 また日銀の国債買入れ額については、現在の月額5兆円台半ばの買入れペースを四半期毎に4000億円減少させ、2026年1~3月に月額3兆円程度にするとも発表した。

 国債の買入れ額の減少は6月の政策決定会合で予告していたが、利上げは「なぜ、ここで?」と強い違和感がある。

 日銀が同時に発表した2024年度の政策委員見通しの中央値は、実質GDPが前年度比「わずかに」0.6%増(4月発表は0.8%増)、消費者物価指数(除く生鮮食料)は同じく2.5%上昇(4月は2.8%上昇)となっている。

 つまり日銀も政策委員諸氏も日本経済は低成長の上にさらに減速中であり、物価も落ち着き始めていることを「自覚」していながら、2024年4~6月期のGDP(8月15日発表)も法人企業統計(9月2日発表)も待たず、「大急ぎ」で利上げを決定したことになる。

 確かに円安が加速しており、このままでは輸入価格の上昇が消費者物価を押し上げる恐れはある。円相場は7月に入ると1ドル=160~161円台と37年半ぶりの円安となっていたが、7月11~12日に5兆円ほど円買い・ドル売り介入したこともあり、政策決定会合前は1ドル=152~3円台まで円安修正が進んでいた(今回の利上げを受けて欧州時間に入ると1ドル=150円に急接近している)。 

 つまりどこを見ても、ここで「大急ぎ」で利上げする必要はなく、少なくとも「もう少し」状況を見極めるべきだったはずである。わずか0.25%でも日本にとっては2008年以来の「高金利」であり、財務省主導で緊縮財政・増税路線が強行されているなかで、日本経済、国民の生活、それに株式市場にとって「相当な」ダメージとなる。

 それではなぜ日銀は「こんな」タイミングで利上げに踏み切ったのか? 実は「つい最近」まで日銀が「ここで」利上げするとは考えられていなかった。

 雰囲気が変わったのは、まず7月19日に河野太郎・デジタル担当大臣が唐突に「日銀は政策金利を上げる必要がある」と言いだし、22日には茂木敏充・自民党幹事長まで「段階的な利上げの検討が必要」と追随した。

 ポスト岸田を狙う、揃って親中の、しかも全く所管外である両氏の唐突な「利上げ発言」は不気味でしかないが、そこからマスコミが揃って「利上げが必要」と囃し始めた。

 まだまだ9月の自民党総裁選で再任されると固く信じている岸田首相も負けずに、「金融政策の正常化(つまり利上げ)が経済を後押しする」など7月19日の経団連夏季セミナーで意味不明な発言をしており、さらに政策決定会合後の今夕には「政府日銀の連携の成果」と自慢して、自ら日銀に圧力をかけたことを白状していた。

 それでは岸田首相や、後釜を狙う河野太郎や茂木敏充に「利上げが必要」と思い込ませたのは誰なのか?

 岸田首相はとくに(日本の)財務省とバイデン政権の「言いなり」である。バイデンは大統領選から撤退させられているが、現時点で米国大統領であることは間違いない。

 財務省にとって利上げは傘下金融機関の収益を押し上げるが、金利上昇と円高は輸出大企業の業績にブレーキをかけるため税収が落ち、また「隠れ財布」である外貨準備の膨大な含み益を目減りさせるため「必ずしも」プラスばかりではない。

 だから財務省の圧力とは言い切れない。

 バイデンも11月の大統領選でトランプにホワイトハウスを奪還されると報復で「身の破滅」となるため、必死で「バラマキ」など人気取り政策を連発する。その関連で「これ以上のドル高」を回避するため、岸田首相が日銀の利上げで側面支援する可能性はある。

 そこはよくわからないが、確認のためにも今夜(日本時間8月1日未明)のFOMCの結果を待つことにする。