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【トラウマ】Heart work is Hard work

こんにちは。江戸餅しゅんと申します。
田舎町にある小さな幼稚園に勤めています。3歳から6歳までの子ども達が同じ教室で毎日を一緒に過ごしています。 

今回の記事は勝手ながら私にとって毒吐き、デトックス記事です。
トラウマや幼少期の辛い思い出などの記事が苦手な方はご注意ください。


自分で選べない子ども達

いつもとはちょっと色が違う内容の記事になりますが最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

子どもの世界が結構大人顔負けに大変なのかもって思ってもらえるかなと思って書くことにしました。

たとえあなたが子供と縁のない日々を過ごしていても大人と子供の世界は繋がっています

ちょっと熱苦しい感じになりそうですができるだけ冷静でいることを心がけます。

今回の記事とは関係ない出来事なのですが、ちょっとありましてこの1週間明るい記事を書くことが辛くて結局あきらめました。楽しみにしていてくださった皆さん申し訳ないです。


※今回の記事の登場人物達のプライベートな部分(家庭環境やその子の抱える症状)は基本的すべて本来の状況とは変えてあります。
今回の記事は子供同士ではなくその子と保護者、そして先生たちのお話です。


今回の登場人物

ミセス・サンシャイン
うちのクラスの担任の先生。60代のおばあちゃん先生。
こんな大人がいるのかと驚くほど無邪気で誠実。ユーモアもあり、まさにクラスの太陽のような人。声を上げてよく笑います。

ミズ・コットン
ミセス・サンシャインと長年一緒に働いてきたアシスタント。もう一人の先生。力持ち。子ども達をそれぞれの腕に一人ずつ抱えさらに子供が自力でしがみつけるならおんぶして平然となん十分も歩ける。
それはそれはコットンのように子ども達をブワーっと包み込む。その包容力は東京ドーム100☆00000♪00000000♡0000000個分。歌がとっても上手で天使の歌声と私は呼んでいる。昨年に退職。←最終日私大泣き。でも家が10分と超近いし、よくスーパでも道端でも遭遇する。度々助っ人で園に帰ってくる。なんでやねん。

まるちゃん
マルチーズのように丸顔で黒目がちな当時4歳の女の子。親の泥沼離婚劇により失語症に。

カモメ君
私の子供のクラスメイト。紳士で笑顔が印象的なな好青年。幼少期ミセス・サンシャインの幼稚園に通っていた。

マグマちゃん
この子の放つエネルギーはとてつもなく、マグマのように周りに広がる。喜怒哀楽のカラーによって周りに与える影響も様々。
5歳の女の子。生まれた時にある症状により3ヶ月入院していた。3歳になるまでに手術、投薬と今こうして元気に走り回っている事が奇跡。おてんば娘。みなぎる生命力を可視化したような子。


まるちゃんの場合 

注)ナ◯9ジというワードが多発します。苦手な方はご注意を

いよいよ様々なものが動き出す夏。ここ数日雨が続きました。庭側のドアにサっと脱ぎ履きできるようにサンダルを出しっぱなしにしているのですが、そのサンダルにナメクジが。
一匹いるってことは…。と目をこらすと「おお…。」
決して触りたくはないけれど、前よりナメクジは嫌いではないです。ナメクジを見るとある女の子を思い出します。

今と同じ季節、数人の子供達が園庭の日の当たらない場所に生えている大きな葉っぱの裏にナメクジがたくさんいるのを見つけ、ナメクジの家を作りたいと申し出てきました。
大きな葉っぱのすぐ横に、中が空洞になっている切り株を倒した状態で設置し、その空洞に葉っぱを敷き詰めナメクジ屋敷の完成です。次にナメクジ達を引っ越しさせたいとの事ですか、触りたくないという子もいたので、ミズ・コットンが園庭に落ちている葉っぱや木の枝を使い手で直接触れないような構造のナメクジキャッチャーを作り子ども達に託しました。
このナメクジ集めを他の子達が飽きてやめてしまっても最後まで遊び続けていたのがまるちゃんでした。
私の所に3分毎にやってきて私の腕を引っ張り集めたナメクジを誇らしげに見せ、「う〜。」という私の微妙なリアクションをみて笑い、面白がっていました。

まるちゃんと出会ったのは数年前。別の園から4歳の年中さんの時に我が園にやってきました。まるちゃんはちょっと訳ありの子でした。入園してくる数ヶ月前に両親が離婚へむけて別居。この時のまるちゃんは両親のそれぞれの家を兄弟と一緒に1日、2日おきに行ったり来たりしている状態でした。そしてそんな生活をしている頃からどんどん喋らなくなっていったそうです。そしてその年に回復を祈った両親は自立心を育てるというのが売りな園にまるちゃんを入園させました。そしてその事がさらに彼女の心を閉ざさせる原因となり、専門機関で失語症と診断されたのです。

まるちゃんが私達の元にやってきたのはそんな時でした。事前の保護者と先生同士の面談の時に両親からは「とにかく話しかけて普通に戻して欲しい。」と言われていました。当時、この普通という言葉に違和感を覚えミセス・サンシャインとミズ・コットンがどんな顔をしているのか気になり、チラ見したのを覚えています。

初めて会った時の彼女は怒っていました。なんというか激オコです。喋らないというより「お前らなんかと喋ってやるもんか!」といったオーラを纏い、終始腕を組んで口をへの字にしていました。
そんな彼女を抱き寄せようとしたり、手や肩を撫でたりとしていたまるちゃん母の姿は見ていて安心する光景でした。

お父さんはその逆でまるちゃんと同じ様に腕を組み私達と同じ輪の中に座ろうとはせずちょっと離れた所に立ちミセス・サンシャインが話しかけると返答するというスタイルで、まるちゃん母が席を外すと席に着くといったまるちゃん母への拒絶の姿勢を隠さずに表す人でした。

なんとか初面会も終わり、その後の先生達だけのミーティングでミセス・サンシャインから言付けられたのは両親の希望する「話しかける。」とは真反対のものでした。
「う〜ん。たとえばあなたが庭でガーデニング中にウサギ(野生)が近くにいたとするでしょ。向こうはただ草を食べたいだけ。こっちはガーデニングに集中したい。まるちゃんにはそんな風に接してみて。返答が必要な時は必ずまるちゃんがはいいいえで答えられるように聞くこと。」と それだけでした。

そしてミセス・サンシャインとミズ・コットンは過去にも失語症の子を受け持った経験がある事を聞かされたのです。なんとそれが私の子供の同級生の子で確かに物静かな子ではあるけれど、決して静かな子ではないカモメ君の事でした。これにはびっくりしました。

この子が失語症になった原因は両親は不明としていたそうですが、ミセス・サンシャインの分析だと父親の厳格すぎるしつけにあると睨んでいたようです。その時も同じ様にまずはカモメ君に必要以上に私達は干渉しない事、言葉を発さなくても答えられる質問しかしないからプレッシャーを感じないでねと空気で伝える事をしたそうです。
そして優しく、ゆっくり、あとポイントに適当さを与えたそうです。

ミセス・サンシャインは「私はね、誰でもおしゃべりにさせちゃうからきっと大丈夫!あははは!」と明るく笑い、横でミズ・コットンが「確かに。」と笑顔で頷く光景に(あ、こりゃ大丈夫だ!)と感じました。

結果、前の幼稚園では一言も話さなかったまるちゃんですが、どんな魔法を使ったのかほんの数ヶ月後に私達がまるちゃんに言わなくてはいけなかった言葉の一覧がこちら…

ミセス・サンシャイン
「まるちゃん、おしゃべりじゃなくて食べる方にお口を使いましょうね。」

ミズ・コットン
「まるちゃん、先生同士のお話だからちょっと静かにしててね。」


「まるちゃん!静かに!」    

まるちゃんが予言通りおしゃべりに変貌してちょっと経ってから、親権争いの真っ最中だったまるちゃんの両親の関係はさらに亀裂が入り詳細は伏せますが、父親の方は私たちに探りを入れてくる様になったのです。そんな元夫の行動を知ったまるちゃん母は不安や焦りなどもあったのでしょうが、らしくない行動をとる様になりました。
ミセス・サンシャインにいかに自分のが子供達の親にふさわしいかを見せあい、競争し合うようになっていったのです。

言葉を発する事が出来ないとうちの園にやってきたまるちゃんですがようやく言葉を取り戻した矢先のこの親権争い。その中でまた別の課題が出てきたのです。
まるちゃんは家庭で両親に暴言を吐く様になっていたのです。そして園でも時々、先生達にも暴言を吐くようになっていました。
散々ミセス・サンシャインをあてにしてきた両親ですが、父親の方が「これでは静かだった時のがまだマシだった!」などと言い出したのです。
これを聞いた時、私は正直ムッとしましたが、その時ミセス・サンシャインは同調も反論もせずただ笑顔で黙っていました。
その後私達だけに「まるちゃんは怒りを出せるようになったのはとっても健康的な事!とっても喜ばしいこと!私は正直安心したのよ。」と言っていました。
もしこれをあのお父さんに伝えていたら火に油だっただろうなと思います。

両親がそれぞれの家でどの様にまるちゃんと接していたのかはわかりませんが、園にいる時は私たちは結構厳しく、ハッキリとそれはいけない事と注意をしました。はじめはバツの悪そうな顔をしていましたが徐々にそんな事も減り、不思議な事に代わりに私達と一緒に遊んだりジョークを言い合ったりと距離がグッと縮まり、笑顔で過ごせる時間が増えたのです。

次の年には別の園に行く事を知らされていたまるちゃんはもうここには戻ってこないというのをちゃんと理解していました。

今でも忘れないのが登園最後の日の帰りの会。その時に、私の膝に座りたいと申し出た事のなかったまるちゃんがお父さんが迎えに来るまでずっと座っていた事です。
私の膝に座りながらどんな事を考えていたのかなと思うとちょっとどころじゃなく切なくなります。      

私生活が慌しかったまるちゃん。せめて幼稚園、私達だけは変わらず向かい入れてあげたいと強くねがいましたが、両親の意向でまた別の教育に力を入れた幼稚園に移っていきました。
一緒にいられた時間は短かったけど、今でもまるちゃんの毎日が笑顔で溢れていますようにと願っています。



マグマちゃんの場合


マグマちゃんは出産時から色々あり3ヶ月ほど入院生活を送っていました。その後も手術や投薬とたくさんの経験をしてきました。
その都度保護者である両親は肝の冷える思いをしてきたのでしょう。
「痛い!」「ママ!パパ!助けて!」「嫌ーーー!!」と、泣き叫ぶ姿をマグマちゃんの両親は何度も見てきたのです。

その背景からも気持ちは痛い程に理解できます

マグマちゃんの両親は基本マグマちゃんが拒否したものは全て取り除きます。
マグマちゃんが「これ食べたくない!」「この服嫌い!」「寝るの嫌!」「あれが欲しい!」「もっと遊びたい!」と言ったら全て彼女の思うままに毎日が進んでいくのです。マグマちゃんが家族のリーダーシップをとるという状態が自然と出来上がったのです。
そのように育った子がどうなるかきっと想像がつくでしょう。そうです。俗に言う絵に描いたようなわがまま娘の出来上がりです。

ですが今回のお話はそんな簡単なことではなく、彼女はただのわがまま放題に見える中にも毎日毎秒SOSを送っていたのです。たった5年しか生きていない小さな子供に全ての選択権を与えるのは酷な事です。

園が始まってすぐの頃はそれはそれはマグマちゃんも先生達もクラスの子達も皆んなマグマちゃんの圧倒的なパワーに影響され大っ変でした。

今までなんでも自分の欲しいもの、したい事だけしてこれた毎日。そしてそれを受け入れてきた両親のもとで過ごしてきたマグマちゃん。
それが自分より小さな子に時間と手をかける先生達や規則という自分の意見より優先される世界に放り出され、自分と同じような背丈の人間と過ごすということがマグマちゃんにとってどれほど大変な環境の変化か想像に難しくないと思います。

始めの数ヶ月は、マグマちゃんが泣き叫ぶたびにその声に耳を傾け、メモをとるミセス・サンシャインの姿がありました。
そのメモ帳にはこんな言葉が並んでいます。
これは嫌!でもどうしたいのか自分でもわからない!泣
ルールがたくさんで自分のしたい事出来ないから幼稚園嫌い!怒
上記の言葉からミセス・サンシャインはマグマちゃんにはリーダーシップをとってあげる大人が必要な事、嫌な事でもやらなくてはいけない時がある事をお手伝いをさせる事で学ばせようと決めたのです。

そしてこの「どうしたいのか自分でもわからない!泣」はマグマちゃんのSOSであるとミセス・サンシャインは言いました。

それともう一つ、NOと言われた事のないマグマちゃんはNOと言われる事=拒絶ととらえてしまい、「私の事が嫌いなんだー!泣怒」となってしまうのです。これは精神的に不健康だそうで、例えば友達が「今は遊びたくない。」「今は手をつなぎたくない。」「今私がこれで遊んでるから貸せない。」が全て私の事が嫌いだからだ!に変換されてしまうのです。そしてそれらを力尽くで手に入れようとする所がマグマちゃんには見受けられたのです。

そしてマグマちゃんは現在5歳にして「私は可愛くない。」や「このジャケット、スノーパンツは太って見えるから嫌。」と容姿をとても気にするのです。これにはミセス・サンシャインもかなり慎重に見守っています。

ミセス・サンシャイン(時には私達アシスタントも一緒に。)はこの2年間、何度も何度もマグマちゃんの両親と面談を重ねてきました。薄々感じていましたが今年に入り明白になったことは、パパはマグマちゃんを旅立たせる準備や心構えができているけれど、ママがマグマちゃんにしがみつき、園に通わせるという状況にですら対応できず、子離れ出来ていない状態であることが見えてきたのです。

あまり健康的な表現ではありませんが、マグマ母と話していると娘をいつまでもかわいそうなマグマでいさせたいという印象を受けます。

マグマ母が話すマグマちゃん情報には現在のマグマちゃんがあまり出てこないのです。そしてどれだけ出生時に大変だったか、どれだけの医療トラウマをおっているかという事。健康に生まれた子との違い。どれだけの事ができるよりも出来ない事。

マグマちゃんのお母さんは誰のことも信じていないのではないかと思います。他人である先生達が我が娘を理解できるはずがない、マグマにはこれもあれもハードルが高すぎ、できるはずない。
これじゃマグマちゃん苦しくなっちゃいます。

でも、マグマ母の気持ちはさっきも言いましたが同じ親として痛い程わかります。

ミセス・サンシャインは時には親にとって耳の痛くなるような事も子供のためなら!とズバッと言ってのけるのですが去年と今年はミセス・サンシャインは本当にマグマちゃんの両親と面談を重ねたくさんの時間と労力を費やしてきました。
マグマ両親にとっても大変だったと思います。自分で気が付いていないことを指摘されて素直に聞き入れるのはミセス・サンシャインとミズ・コットンぐらいでしょう。私だったら「たかが2年しか私の子供の事知らないのに大きな口をきくな!」となるでしょう。

ですがプロはプロですよ。経験値が違いますし、何より一歩引いたところから子供を中心にしてその家族を見ています。

今のマグマちゃんはどうしているかというと本当に少しずつですが集団生活に対応できるようになってきました。

このマグマちゃんを通じて子どものトラウマを研究している専門家の方と面談した時に教えてもらった言葉があります。「正す前に、その子と繋がる。」これ保育士の私の座右の銘になりました。

マグマちゃんの大爆発が始まるとこの「正す前に、その子と繋がる。」を心がけながら接するようにしています。マグマちゃんも少しずつですが「出来ない!」「嫌!」から「嫌だけど…!」と語尾に…がつくようになってきました。繋がりが出来てきた証拠かなと思ってます。

私達が一緒に居られるのはあと1年ですが、そこで思いっきり心込めて毎日を過ごしていきたいと思ってます。


ついにこの季節がきました。こちらでは7月がお別れのシーズンです。
我が子同然のように愛情を注いできた子ども達とお別れの季節です。
ビー玉君、てふ子ちゃん、大御所歌手は小学生に。のれん君、サンダルちゃんは他の園に行く事が決まっています。
毎年切り替えるのに時間が必要です。
同じく教育現場で働いている友人の口癖、Heart work is Hard work。
すべてのHeart workerのみなさん毎日ありがとうございます。そして本当にお疲れ様です!
※お疲れ様は目上の人には使ってはいけないと言われますけど、労(ねぎら)いってとても美しいことだと思うので失礼を承知で…。


読んでくださりありがとうございました!


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