のっぺらぼう
こんにちは。わたしね、顔がないの。
だってわたし、のっぺらぼうだからね。
わたしね、思ったの。
顔がないってことはね、表情が読まれないってことでしょ。
ってことはね。
ポーカー、めっちゃくちゃ強いんじゃない?
だってね、どんな手が来ても、表情に出ないんだよ。
だってわたし、のっぺらぼうだからね。
だからね、わたし、裏カジノってところに行こうと思ってね。
でも、どこにあるかわからないから。
おまわりさんに場所を聞こうと思って、うちの近くの交番に行ってね。
おまわりさーんって呼んでみたの。
そしたらね、おまわりさん
ギャーーーーーーッ!!!!
って。
叫びながら、うんこ漏らしてた。
助けてくれーーーーーーッ!!!!
って。
泣きながら、おしっこ漏らしてた。
だってわたし、のっぺらぼうだからね。
あ、くもん行かなきゃ。
おじちゃん、ばいばーい。
顔のない少女はそう言うと、元気よく公園の門を走り抜けていった。
そんな彼女の様子をほほえましく見送る俺。41歳。無職、童貞。ブランコに力なく座り、手にはワンカップ。
俺こそが、この社会における、のっぺらぼうなのかもしれない。
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