よいこの教育えほん「たかしくんと給付金」
「やったー!ついにとどいたぞ!」
新型コロナウィルス感染症緊急経済対策として閣議決定された特別定額給付金。
たかしくんのおうちにも、ついにそのお金が給付されました。
たかしくんは、10万円という見たこともない大金に大はしゃぎ。
「この10万円で、お菓子と、漫画と、ゲームと、それから防災のための備蓄と……いろんなものがたっくさん買えるぞ!」
たかしくんの貧相な脳みそはもう、下賤で低俗な妄想でいっぱいでした。
しかし、このお金は、安倍総理から生活のために賜った有難いお金。
私利私欲を満たすために使っていいのでしょうか?
……って、あれれ?
「あれっ? ぼくの10万円は?」
たいへん!
たかしくんが下劣で浅ましい皮算用をしているあいだに、給付金がきれいさっぱりなくなっているではありませんか!
「ど、どうしよう……ぼくの10万円が………」
さっきまで明るく笑顔だったたかしくんの表情は、みるみるうちにしょんぼり悲しくなってしまいました。
それにしても、一瞬のうちに10万円がなくなってしまうとは、いったいどういうことなのでしょう?
「お困りのようじゃな」
「わしの名前は、鮫噛 頭部血流三郎(さめがみ とうぶちながれさぶろう)。お金に詳しい博士じゃ」
困っているたかしくんの為に、鮫噛 頭部血流三郎(さめがみ とうぶちながれさぶろう)博士が来てくれました。
「えっ?」
鮫噛 頭部血流三郎(さめがみ とうぶちながれさぶろう)博士は、お金のことならなんでも教えてくれる優しい博士。
ちょっと頭にシュモクザメが噛みついているのが玉に瑕だけど、とっても頼れる博士です!
「いや……あれ、なに……え?」
たかしくんは、さっそく、消えた給付金について鮫噛 頭部血流三郎(さめがみ とうぶちながれさぶろう)博士に相談することにしました。
「いや、だから……え、ホント……なに? なんで?」
たかしくんの話を聞くと、鮫噛 頭部血流三郎(さめがみ とうぶちながれさぶろう)博士は一度深くうなずいてから、こう言いました。
「なるほどのう……事情はわかった。たかしくんの10万円のゆくえじゃが……」
「おめぇの生活費に全部消えたんだよ!!!!」
「人が生きるにはなぁ!! 金がかかんだよ!! 家賃、光熱費、食費、てめぇがこさえたチンケな借金……その他もろもろあわせたら、10万なんてアッという間にトぶに決まってんだろうが!!」
「ダボがっ!!!」
たいへん!
博士が頭に噛みついたシュモクザメを取り外して、勢いよく振りかぶりました!
シュモクザメは、別名ハンマーヘッドシャークとも言い、その名前の通り鈍器としてもたいへん優秀な
ゴッ………
…………
………
……
…
「う……う~ん……」
「はっ!」
たかしくんが目を覚ますと、あたりはもう夕暮れ時になっていました。
「うーん……いったいなんだったんだろう……」
さっきまでの不思議な出来事に、たかしくんの頭はまだぼんやりとしていました。
たかしくんが、ねぼけまなこで部屋の中を見回していると……
「ぼっ……ぼくの10万円!」
机の上には、なくしてしまったと思っていた10万円がちゃーんとあるではないですか。
「な~んだ、ちゃんとあるじゃん!」
きっと、たかしくんはいねむりでもして、悪い夢をみていたのでしょう。
「いっけない! もうすぐ本屋さんもゲーム屋さんも防災のための備蓄屋さんも閉まっちゃう!」
たかしくんは10万円を握りしめ、その下品で卑俗な欲望を満たすため、急いで部屋を出ていきました。
よかったね、たかしくん!
…………
………
……
…
おまけ:鮫噛 頭部血流三郎(さめがみ とうぶちながれさぶろう)博士の豆知識コーナー
「家計簿をつけても、失ったお金は2度と戻ってこないぞい!」
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