迷惑千万降る雨の如く
※3,100文字
■立川寸志、通算1000人さまのお認めで、真打になります。
7/12(金) 清澄白河の江戸深川資料館ホールに落語を聞きに行った。
異様に長い名前の落語会である。それが……
「立川寸志、通算1000人さまのお認めで、真打になります。第二回深川の巻」
1000人の観客が真打昇進を認めると投票したら昇進するというパフォーマンスである。
今回は147名(私も投票)が真打昇進を認めた。
残り853名を目指して公演を続ける寸志さんである。
ちなみに立川流の真打昇進パフォーマンスは、二つ目が独自にいろいろ考える。
誰もがこの寸志さん方式をとるわけではない。
そしてそれは落語協会や落語芸術協会の昇進システムとは全く異なる。
細かい説明は控えるが、ご興味のある向きはググってください。
ちなみに、落語漫画「あかね噺」の落語世界は立川流がモデルである。
他の落語家が皆あの方式で昇進するわけではないのですよ。
落協や芸協の真打昇進システムを知って戸惑わないようにね。
……とBBAの老婆心。
■落語前に一風呂
落語会の前に辰巳湯で汗を流した。
ここは下町らしい良い銭湯である。
親子連れや老婦人がしみじみ湯に浸かっている。
庭で行水しているかのような露天風呂の趣向が楽しい。
(女湯はね。男湯は知りません)
お好きな向きには、もちろんサウナもある。
清澄白河に来ると寄らずにはいられない。
って、一向に本題に入らないな。
いや実は、今回は落語会の話ではない。
落語会に訪れた客の話である。
また、文句たらたら?
はい。
もんくたれぞう。
重箱の隅つつくの助。
毒を吐きます今日もまた。
いや、私とて落語会に関して毒を吐きたくはない。
悪いのは落語家でも主催者でもない。
ごく少数の不心得者が悪いのだが。
不心得者……と言うか……何と言えばいいのだろう?
■老紳士または迷惑ジジイ
まず大前提として、今回の会場は自由席だった。
自分で好きな席を選べた。
私は中央ブロック前から5~6列目あたり。
ブロック列の左端っこの席だった。
私の前列は老紳士一人。
その老人の一席開けた隣も老紳士一人。
つまり私の直前と斜め前に、それぞれ老紳士がいたわけだ。
紛らわしいので直前の紳士を〝前氏〟
斜めの紳士を〝斜氏〟と呼ぶ。
まんまだが。
開演後まず問題を起こしたのは、斜氏。
膝の上でスマホを点けたまま操作しているのだ。
スマートフォンは音を消せばいいというものではない。
「画面の光が他のお客様のご迷惑になります」
と開演前にアナウンスする会場もある。
この会場ではなかったが。
音を鳴らすなとの注意だけだった。
だからって、音が鳴らなきゃ操作していいってもんじゃない。
実際、高座を見る私の目に光がチラチラ差し込む。
非常に気になる。
前座が高座に上がれば消すだろう。
と思っても消さない。
さすがに落語に入れば消すだろう。
と思っても消さない。
これは、いよいよ注意しなければならないのか?
と思ってイライラする。
イライラしながら前座の落語を聞き、ジジイいや斜氏の行動を見る。
やはり一向に消す気配がない。
仕様がないから身を乗り出して肩を叩いて注意する。
前座が落語をやっているのだから小声で話さなければならない。
「すみません。消してください。光が眩しいんです!」
押し殺した声ながら、険悪な調子になってしまう。
それまで散々イライラしてきた鬱憤を小声に込めてしまう。
ジジイは「すみません」とスマホを消して鞄にしまった。
よかった!
けれど私のイライラが鎮まったわけではない。
何だか私は意地悪な小言ババアみたいじゃないか。
好きで注意をしたわけじゃないのに。
イライラして前座の落語も耳に入らない。
何をしに来たんだ私は?
事程左様に落語会のスマホは罪深い。
と、まとめるにはまだ早い。
■頭グラグラ族
心を鎮めて高座を見ると目の前で前氏の頭が揺れている。
何と!!
この老紳士は頭グラグラ族だったのだ!!
説明しよう。
頭グラグラ族とは、頭を固定できない奴らである。
頭を右に傾けて高座を見ていたかと思いきや、すぐ左に傾ける。
殆ど数分おきに頭を右に左に動かすのだ。
これは意識的というより無意識に見えるのだ。
チック症のような一種の病気なのかも知れない。
だから「頭を動かさないでください」とは注意できない。
いや、注意してもいいのかな?
でも治るのは一時ですぐまたグラグラしそうな気がする。
後ろで高座を見る者は、頭に視界を遮られないよう同じペースで頭を左右に動かす羽目になる。
けれど数分おきにそれをされるからたまらない。
結局、頭グラグラを我慢して、高座が見えたり見えなかったりするままでいるしかない。
これはかなりにストレスである。
ずっと見えないなら見えないで諦めもつく。
なのに時々チラチラ見えるのだから忌々しいことこの上ない。
またしてもイライラして斜氏の方を見やれば、何と!
またスマホをいじってる……のではない。
スマホはきちんとしまっているが、頭が右に左に動いている。
何と!!
こやつも、頭グラグラ族だったのだ!!
頭が固定しているのはスマホをいじっている時だけらしい。
直後の席の人はいい迷惑だろうなあ。
つまり前の列の二人の紳士は共に頭グラグラ族。
メトロノームのように一定に頭が右に行ったり左に行ったり。
落語会ではよく遭遇する頭グラグラ族。
一体あれは何の疾患なのだろう?
心の底から疑問である。
■災難は終わらない
前座が終わって本日の主役、立川寸志さんが高座に上がる。
と、前氏がにわかに席を立った。
足音をたてて後方扉まで歩いて出て行った。
トイレに行ったらしい。
老人であるからして致し方ないだろう。
けれど。
前氏はトイレから戻るとまた足音をたてて元の席に戻って来たのだ。
ふつう落語の途中で席を立った場合、一席終わるまで後方席で控えているのが礼儀である。
他の客の迷惑にならないように。
会場によっては係員に一席終わるまで会場外で待つように言われる場合もある。
別に〝決まり〟ではなく単なる〝礼儀〟である。
だから、前氏が足音立てて元の席に戻ったのも看過する。
前氏は単に礼儀知らずなジジイなのだ。
それで終わると思いきや。
落語は続いているのに、またも前氏は席を離れて会場を出て行く。
そして、また足音をたてて元の席に戻るのだ。
腹具合が悪いのかも知れない。
体調不良には大いに同情する。
けれど!!
この会場は自由席なのだ。
後方席には充分に空きがある。
そんなに腹具合が悪くて頻繁にトイレに行くのなら、始めから後方扉の近くの席で待機していろ!!
などと思っているうちに二度目のトイレから戻って来たジジイいや前氏は、また安定の頭グラグラを始めるのであった。
幸いにもジジイのトイレはこの二回で済んだのであった。
これは〝幸いにも〟と言っていい事態なのかどうか?
完全に高座の寸志さんには見えていただろう。
全くもって失礼極まりない行為であった。
私にとっても散々な落語会だった。
それでも寸志さんの落語は面白かった。
帰宅してツイッターで愚痴ったところフォロワーさんから、
「だから私はいつも最前列です」
と返って来た。
なるほど。
彼女はいつも言っている。
最前列は邪魔する前の人はいない。
演者と目が合うことも実はあまりない。
落語家は上下を切る。
つまり左右を見て話すから、目の前の客とは目が合わないのだ。
確かに、それはそうなのだ。
実は私の好きな上手側5~6列目こそが、落語家と目が合いやすい位置である。
別にそれを狙っているわけじゃないけれど。
でも、やはり最前列は恥ずかしい。
なかなかむずかしいところである。
おお!
既に3,000文字を越えている。
長々と失礼しました。
どっとはらい。
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