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カメラ片手に、プロの写真家と散歩した話〜中野編〜 第2話

この記事は何?

・写真を撮ることが好きな素人が、プロの写真家・和田剛さんと街を歩き、撮った写真を見ながらプロからアドバイスをもらい、カメラの腕を上げてしまおうという連載。

対象読者は?

・写真撮影が上手くなりたい!と思っているカメラ初心者。
・プロは何を考えて写真を撮っているのか興味がある人

撮影の概要

・【場所】中野駅北口エリア、サンプラザ、新井薬師、ブロードウェイ
・【日時】7月のとある晴れた日
・【天気】夏の青空

撮影場所の詳細

今回の撮影地は、以下のエリアを中心にお届けします。

・中野サンプラザ〜セントラルパーク周辺(赤枠エリア)
・新井薬師商店街周辺(青枠エリア)←今回はここです
・中野ブロードウェイ周辺(オレンジエリア)

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前回の記事はこちらから読めます。

モノの撮り方について考える

設楽:
今回は中野の青色のエリアです!
ここは新井薬師を中心に広がる地域で、新井薬師の商店街が中心ですね。中野というよりはむしろ、西武新宿線の新井薬師の方が近いのかな。このあたりを散策してみました。

和田:
この新井薬師の商店街エリアはなかなか楽しかったですね。楽しかったんですが、撮影はちょっと苦戦しました。ここは温故知新な雰囲気がとてもいいんですが、それを写真を通して伝えるのに苦労した、そんなエリアでしたね。
新しくて良いものもあったのですが、つい古くていいものに引っ張られてしまったのが反省点ですね。

設楽:
そうなんですか?全然そういう風には感じられなくて、今回もさすがだなーという写真ばかりなのですが……。個人的に和田さんの写真で気に入ってるのがこの一枚です。

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普通に、和菓子屋に陳列している和菓子を撮影しようとすると、この写真に写り込んでいるような、真ん中の斜めにかかる線を映らないような位置を探して撮りますよね。

でもこれってあえてこの線を入れて撮影してるじゃないですか。あと普通に和菓子を撮ろうとすると、手前のネームプレートにも和菓子にもピントを合わせるようにしますよね。

でもこれは、線を入れたりピントはちょっと奥にすることによって、ただの商品としての和菓子というのでなくて、ドラマ感があるというか……。これを撮っている時ってどんなことを意識してたんですか?

和田:
ディスプレイのものを撮る時は、どうしても柱とかガラスの継ぎ目みたいなものが入ってきますよね。だからディスプレイの商品を撮る時は、柱や継ぎ目のないアングルを探しながら撮る、これは正攻法ですが、そうやって撮影した写真はどうしても感動が薄れてくるんですよね。

話は変わりますが、僕がキューバに行った時に、経済封鎖でスーパーのディスプレイにほとんど物がない光景があったんですよ。本来ならたとえばトイレットペーパーがたくさんあるはずなのに、そこにトイレットペーパーが1,2個しかない。

その光景を見た時に、自分はトイレットペーパーというモノ自体を撮りたいのか?それともトイレットペーパーが無い状況を撮りたいのか?っていうことを考えたんですよね。つまりカメラで物体を撮りたいのか、それとも状況を撮りたいのか?どっちを撮りたいかによって、撮り方は変わってきますよね。

【ポイント】
物体を撮りたいのか? 状況を撮りたいのか?

設楽:
おーーこれはいい話ですね。物体か、状況か。

和田:
この場合だと「くず餅」を写したいならもっとくず餅の数があった方がいいし、手前の映り込みも無いほうがいいですよね。でもこの場合僕は、このビニールにかかった雫とか、ビニールのシワとか、そういうものも含めて雰囲気を撮りたかったんですよね。

どういう風にこれを撮るのか、という点は非常に難しいんだけれども、その状況を見た時に、逃げないようにそのままその状況を撮る、と言えばいいのでしょうか。映り込みを意識して撮ると、単なるくず餅の商品撮影になってしまう。そうじゃなくて、その状況を意識して撮る、というのがポイントですね。

ガラスに自分が写り込んでしまう

設楽:
この話の流れで和田さんに聞きたいことがあるのですが、私みたいな初心者がガラス越しに何かを撮影すると、こうなる場合が多いんですよね。わかります?自分が写っちゃってるんですよ(笑)。

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これはわざとやっているわけでなくて、技術がないからなんですが、ガラス越しに撮る時のコツがあったら教えてください。

和田:
2つ方法があって、1つ目はまず黒い服を着ることですね(笑)。でもそうすると次は肌の色、つまり手の甲とか顔の輪郭が写り込んでくるんですが、例えば体を斜めにして構えて撮れば、だいぶ映り込む面積が減りますよね。

もう一つは偏光フィルター(PLフィルター)と呼ばれるものを使って映り込みを撮る、という方法があります。

設楽:
フィルターを使うんですね。フィルターもこれはこれで奥深そうな話なので、また別の機会に色々教えてください。

何を拾って撮るか?

さて、話は変わりますが、商店街に戻って、途中でとても印象的な古い建物がありました。これはすごく印象的だったので、全面に写そうとして私は横位置でこんな風に撮影しました。

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でも和田さんの写真を見ると、同じ建物を縦位置で撮っているんですよね。こっちのほうが迫力出ますよね。看板が切れてても、下に写ってるお惣菜や手前の人物が入ってくることで生活感のある一枚になっています。

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和田:
設楽さんの写真を見ると、横位置で撮影しているんだけど、これは十七番地を写したいのか、商店街を写したいのか、何を撮りたいのかがぼやけてしまっているのが残念ですね。

設楽:
あーー確かにそうですね。自分は商店街を写したかったのではなくて、この十七番地を写したかったんですよ。

和田:
ここは道幅も狭いし、自分の持っているレンズだと横位置だと全面入らなかったので、この場合はあえてこういう縦位置に圧縮して、人が入っている構図にしました。もう一回見せると、人が入っていると入ってないのとでは、全然印象が違いませんか?

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設楽:
本当ですね。全然違います。今回もめちゃめちゃ勉強になりました。
(続く)

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【プロフィール】

和田 剛 | フォトグラファー
旅行と温泉が好き。
写真をまなぶ人のオンラインスクール「good! studio」主宰

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設楽幸生/Sachio Shitara
編集者。1975年東京生まれ。週末カメラ片手に飲み歩くのが趣味な、写真の素人。Twitterやってます。

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カメラのたのしみ方

東京都八王子市高尾山の麓出身。東京在住の編集者&ライター。ホッピー/ホルモン/マティーニ/アナログレコード/読書/DJ