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カメラ片手に、プロの写真家と散歩した話〜上野編〜 第3話

この記事は何?

・写真を撮ることが好きな素人が、プロの写真家・和田剛さんと街を歩き、撮った写真を見ながらプロからアドバイスをもらい、カメラの腕を上げてしまおうという連載。

対象読者は?

・写真撮影が上手くなりたい!と思っているカメラ初心者。・プロは何を考えて写真を撮っているのか興味がある人

撮影の概要

・【場所】上野公園、不忍池
・【日時】8月のとある晴れた日
・【天気】夏の青空

撮影場所の詳細

今回の撮影地は、以下の緑色のエリアを中心にお届けします。

・国立西洋美術館周辺(赤色のエリア)
・東京都美術館、上野動物園周辺(青色のエリア)
・不忍池周辺(緑色のエリア)

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さて前回に引き続き今回も上野公園ですが、今回は不忍池エリアを中心にお届けしたいと思います。よろしくおねがいします。

不忍池の名物と言えば、蓮の花ですね。でも全然咲いてなかったんですが、どうやら花が咲くのは朝の時間帯らしいですね。ちょっと残念でした。

和田:
私は昔ベトナムに撮影に行ったことがあるんですが、ハノイの公園でベトナム人が体操やってるのを撮ったことがあるのですが、その時も蓮が咲いていたのが印象的でした。蓮はベトナムの国花ですし、象徴的な花なんですよ。

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設楽:
蓮の花は咲いてなかったですが、この大ぶりな葉っぱとか、ボートとか、観光客とか絵になりそうな素材が沢山ありましたね。この和田さんの撮影したボートの一枚なんかはシュールで好きです(笑)。

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すごいユーモアがあるんですが、これってどこがポイントなんですか?

和田:
これは、すごい「しつこさ」がありませんか?(笑)それを狙って撮りました。一つ残念なのは、もうちょっと白鳥が鋭角に入ってくると、さらに面白い写真になったと思いますが……。

設楽:
ありますねーー。しつこさがこのシュールな感じを生み出しているんですねー。僕もボートを撮ったんですが、こういう感じで余計な背景を入れちゃったんですよねー。だから主張がぼやけてしまった。

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手前に古めかしい池と白鳥ボートがあるのに、後ろは開発されて乱立するタワマン、みたいな上野の過去と現在を撮ろうとしたんですが、今ひとつでした。

和田:
設楽さんのこの一枚は、アプローチはとてもいいですね。僕の場合はユーモア狙いで撮りましたが、設楽さんのようなこのギャップを狙って撮るというアプローチはとてもいいと思います。だ今回ちょっと物足りないな、って思うのは空が多いからなんですね。

今回の写真を分割すると、3分の1が空で、3分の1が建物で、3分の1が池とスワンボートですよね?3分の1が空だと、どうしても人間は明るい方に目がいってしまうんですね。だからここまで明るい空が構図の中に入ってしまうと、そっちに引っ張られちゃうんですよ。それがもったいないですね。

設楽:
なるほどーー。そうなんですね。空が多すぎるのかーー。

和田:
この写真、構図をもう少し工夫すれば、たとえばブラジルの中国人街とか、乱開発された街みたいなイメージを作れると思うんですよね。

たとえば、ちょっとこの写真をこんな感じでトリミングすると、より設楽さんが伝えたいことを伝えられている写真になりませんか?

スクリーンショット 2021-10-10 6.57.38

設楽:
おーーーーー全然雰囲気がちがいますね!俄然こっちの方が僕が伝えたいことが伝わる構図になっています。

和田:
真ん中に一番大きなビルを持ってきて、左右に詰めてビルを入れることによって「まだ奥にビルが乱立しているのかな」と見る人に思わせるようにしてるのと、空を消したことによって、人の目が手前に来ますよね。

設楽:
はい、この構図の方が白鳥に目がいきますね(笑)。遠くのものと近いものの撮影のコツは、今回の連載で何度か聞きましたが、今回も勉強になります。

和田:
遠くのものと近いものを上手に取り入れるというのは、たとえばこういうのでも言えるんですよ。

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写真というのは平面芸術ですから、手前のものと奥のものを上手にいれることで立体感を出す。この技は昔から色々なカメラマンが色々な場面で使っていますよね。

設楽:
そもそも、こういう構図を意識的に撮ることができないのですが、順番として和田さんはこの写真を撮る時に、どういう段階を踏んで撮るんですか?

和田:
まず、手前の上側の木がありますよね?これを軸にして構図を決めます。そして決めたら、ボートが入ってくるのを待って撮ります。この場合もうちょとボートが内側に入ってきても良かったかな。
あとこの構図は、斜光だから良かったのもありますね。太陽が真上だとこんなに遠近は出ないと思います。

設楽:
光も関係してるんですね。ところで和田さん、今回の和田さんの写真はシュールというかユーモアに溢れたのが多くないですか?これとか(笑)。

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和田:
これはまた、この二人が日傘をさしているところがいいですよね。日傘の中の二人の距離感と、その雰囲気をぶち壊して入ってくる設楽さんという(笑)。

ところで設楽さんは、不忍池の蓮を中心とした構図は撮らなかったんですか?

設楽:
撮ったんですが、なんかこれも空が多すぎてイマイチなんですよ。ちょっと暗いのが残念です。

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和田:
いや、僕の蓮に対するイメージは、必ずしも太陽の下で明るいところで咲いているというよりも、ちょっと暗いところで咲く花、なので、この暗さはありだと思いますよ。蓮の「重さ」が出ていていいんじゃないですか。

設楽:
ありがとうございます。このエリアっていわゆる「蓮」、「池」、「寺」みたいなコテコテの写真が撮れたと思うんですが、和田さんの写真を見てるとそういうコテコテなのが全然無いんですが、これは意図しているんですか?(笑)たとえばこんな写真ばかりなので。

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スクリーンショット 2021-10-10 7.37.42

和田:
撮った写真を振り返ってみたんですが、設楽さんの言っているようないわゆる「コテコテ」な写真でいいのがなかったんですよね。それよりも色々な人達が、公園という場所でそれぞれ「夏を満喫している」感じを撮りたかったんですね。
海外の人も、カメラ好きも、友達同士で遊びに来た若者も、みんなそれぞれ楽しく夏を満喫している。それを撮りたかったんです。

設楽:
きれいな景色や風景を撮るのではなくて、「そのきれいな景色や風景を楽しんでいる人物を撮る」という手法はいいですね!僕もこれから正攻法で風景を撮りながら、こういう視点で写真に向き合っていきたいと思います。

上野編はこれで終わりです。今回もありがとうございました!

次回もよろしくおねがいしますー。(次回は今月末あたりにリリース予定です)

【プロフィール】

和田 剛 | フォトグラファー
旅行と温泉が好き。
写真をまなぶ人のオンラインスクール「good! studio」主宰

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設楽幸生/Sachio Shitara
編集者。1975年東京生まれ。週末カメラ片手に飲み歩くのが趣味な、写真の素人。Twitterやってます。

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カメラのたのしみ方

東京都八王子市高尾山の麓出身。東京在住の編集者&ライター。ホッピー/ホルモン/マティーニ/アナログレコード/読書/DJ