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やっぱり紙が好き

【編集者:古屋淳二(虹霓社)】
昨日、「サービス運営会社変更のお知らせ」と題したメールが届いた。9月の閉店が伝えられていた電子書籍の出版サービス「パブー」が一転、運営会社を変更し、継続することになったお知らせだった。驚いた。驚いたのはその譲渡先だ。「4980円で紙の本を出版できるサービス MyISBN」などを提供する会社(デザインエッグ)だったからだ。しかも、今後のサービスとして、電子書籍だけでなく「紙の本の出版機能の提供(ISBNを付与)」や「Amazonでの紙の本の販売」も計画しているとのこと。

新運営会社のブログに面白い記事が掲載されている。タイトル「パブーの運営を引き継いだ理由」。それによれば、同社は電子書籍サービスを提供する会社を起業したわずか15日後に「パブー」が華々しく登場、(ここが面白いのだが)それゆえ逆に紙へシフト、その後も諦めずに出版サービスを模索したという。

多くの電子書籍で出版されている著者さんにインタビューを行ったところ「本当は紙の本を出したいけれども、紙は出版費用や在庫リスクが高すぎるからせめて電子書籍でも…」という消極的選択で出版をしていたことを知りました。

パブーの運営を引き継いだ理由

そうなのである。かくいうわたしも2010年のパブー登場に舞い上がった。これでリスクをかけずに出版ができると。早速、虹霓社名義で2冊を刊行した。同時期に有名写真家のiPadアプリ写真集の案件に携わったこともあり、電子書籍の時代が来ると思った。でも今思えば、まさに「紙ではリスクが高いからせめて電子書籍で」という想いであり、本当は「紙で本を作りたかった」。それがこの約10年で環境は激変した。同人誌市場の拡大等もあって印刷費は下がり、一人で紙の出版社を立ち上げる人が続出し、個人でも契約できる書籍の取次会社も登場した。わたしもついに一昨年、紙の本を刊行した。そして今回のパブーの「電子の閉店」と「紙の開店」。みんな「やっぱり紙が好き」なのだ。

パブーという有名サービスに紙の本の出版機能をつけることで「本を誰でも簡単に出版できるようにしたい!」という創業時からの想いが、世の中の常識として認知されるようになる大きなチャンスだと考えています。

パブーの運営を引き継いだ理由

みんなが本を出せる時代、ますます楽しみである。

2019-09-3 記

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