佐村河内氏と初音ミク

以前「人は音楽の向こうの「物語」を楽しんでいるのだろうと考えている。 そういう意味で、絶対音楽以外の全ての曲は劇伴曲なのだと思っている。」と書きました。

それを実感したのは佐村河内守氏事件です。

活躍していた「全聾の天才作曲家」が、その全聾という肩書きが嘘のみならず、ゴーストライターを雇って自作でもなかった、という事件です。

この事件について私は、リスナーは音楽を楽しむというより、「全聾の天才作曲家の物語」を楽しんでいたのではないかな、と思ったのです。
音楽はその物語の劇伴曲だった、ということです。

そういう点で、嘘つきでも佐村河内氏はエンターテイナーとしては成功したわけです。ゴールデンボンバーだって「エアバンド」なわけですから、嘘だって相手がわかっていれば事件になることはないわけです。少なくとも氏は「リスナーが何を求めているか」はわかっていたと言えます。

そのような「実存しなくても魅力的なキャラクター」という点で初音ミクを思い出すのです。
合成音声キャラクターは色々といますが、一般まで知名度があるのはやはり初音ミクです。
現実には存在しない初音ミクというキャラクターが、VOCALOIDという商品を超えた「物語」として消費されているように思えます。
おまけに、その「劇伴曲」はアマチュアによる創作で無限に増えていきます。しかも無料です。「物語」もリスナーの中で無限に増えていきます。
決して劣化しない、死ぬこともない、永遠に再生産される無敵のキャラクターです。
結果として、イベント「マジカルミライ」だけで、動いている金額は相当なもののはずです。

以上のことから、自分は趣味で作曲をしているだけの人間ですが、本来であれば、音楽を人に聞いてもらうためには、嘘でも現実にいなくてもいいので立ってるキャラクターと「物語」を演出する必要があると、考えています。


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