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歌詞が苦手な私の歌詞作成テクニック

歌詞を書くのが苦手です。
でも書かなくちゃいけない時もある。プロに頼むとお金かかるし。
そこで、歌詞を書くのが苦手な皆様と思いを共有したく、2024年1月25日に公開する新しい自作曲やプロの曲などを例にして、私の歌詞作成のネタをバラしたいと思います。

ポイント(1):「見える化」する

歌詞作成エクセルシート

こんな感じで、思いついた言葉をとにかくエクセルのシートに書き込んでいきます。そして採用したものに色をつけていきます。
赤と青の三角は、そのフレーズがポジティブかネガティブかを表しています。
グレーの列は母音を書き込みます。

韻を踏んだり、他のフレーズと合わせた文字は色を変えて見えるようにしておきます。

このような「見える化」すると、分析が進むし、思いつきの言葉も漏らさないので効率的です。

ポイント(2):韻を踏む

韻を踏んだ例(譜面として変なところがあるのはとある事情でご了承ください)

基本ですけれど、韻を踏むのはやはり効くと思います。
上の部分ですと、2回目のサビなのですが、

涙拭い【て】空を見上げ【て】
こと【ば】にすれ【ば】
届く【よ】
世界が変わる【よ】

「走るスカート」より

【 】の部分が合わせた箇所です。正確には韻を踏むのとは違う箇所があるかもしれませんが、とにかく文節の最後を重複して揃えるのは効きます。

ポイント(3):フレーズ頭の「ん、ハッ」

「走るスカート」より(譜面として変なところがあるのはとある事情でご了承ください)

【は】ためくスカート
【は】しり出した
想いは
【は】じけて声になる

「走るスカート」より

この部分、最初のサビです。
よく使われるテクニックなのですが、小節の頭に休符を入れてからメロディを始めています。
それを利用して、メロディの初めを「は」から始めると、「ん、ハッ!」という、和田アキコさん的なインパクトを狙えます。
この場合、その後のフレーズも「は」で始めることで、さらに印象を濃くすることを狙いました。

ポイント(4):韻踏み連続コンボ


「て」「よ」で締める例(譜面として変なところがあるのはとある事情でご了承ください)

涙拭い【て】 空を見上げ【て】
こと【ば】にすれ【ば】
届く【よ】
世界が変わる【よ】

「走るスカート」より

先ほども紹介したフレーズなのですが、「(っ)て」の連続で締めると、リズム感が出るのと、「よ」という連続して呼びかけで締めると印象が深まる気がします。
これらを組み合わせた連続コンボは効きそうな気がします
あとでUNISON SQUARE GARDEN「オリオンをなぞる」でプロの実例を示します。

ポイント(5):母音「あ」「い」「お」で締める

これは小室哲哉さんがやっていたことらしいのですが(彼が作詞家に依頼していたらしい)、フレーズを母音「あ」「い」「お」で締めるらしいです。
今回の曲では徹底していませんが、一応意識はしています。

またフレーズの最後の母音を揃えるだけでも印象が深まりそうです。

ずっと ずっと (うっお うっお)
隠してたけれど (あういえあええお)
ずっと 昔の (うっお うあいお)
僕の答えを (おうおおあえお)
また用意して (ああおおいいえ)
夢みたいなこの気も (うえいあいあおおいお)
千年に一回くらいのこの日を (えんえんいいっあいうあいおおおいお)
永遠にしたいこの日々を (えいえんいいあいおおいいお)
そう今も思ってるよ (おういあおおおっえうお)

サカナクション「忘れられないの」(山口一郎さん)

サカナクションの「忘れられないの」は、タイトル含めた曲を通してフレーズ末尾の母音がだいたい「お」「あ」で揃っています。特に上記のヴァース以降は「お」で徹底されています。(1箇所「え」があります)
受け手は意識しないので地味ですが、かなり効いているのではないでしょうか。

ポイント(6):メロディの印象を意識する

メロディの印象を識して歌詞をつけたいです。
今回の私の曲は、ポジティブなメロディフレーズにはポジティブな歌詞を、ネガティブなメロディフレーズにはネガティブな歌詞を素直に載せました。

例えば、臨時記号がつく箇所、この場合、私の曲の「くだけておちる」のフレーズなのですが、調に対して不安定な音の箇所に、特にネガティブな歌詞をのせるのは効くと思います。

臨時記号がつく音符にネガティブな歌詞をつける例
(譜面として変なところがあるのはとある事情でご了承ください)


しかし、常にそれが正しいとは限りません。
例えば、宇多田ヒカルさんの「Keep Tryin'」は、歌詞は超ポジティブなのだけれど、それに対してトラックの雰囲気はとても暗く、そのギャップが不思議な感覚を生み出しています。
逆にハッピーなメロディに暗い歌詞もありです。日本人に対しては昔からこれらのテクニックが効果的なように思えます。


また、さよならポニーテールの「世界と魔法と彼の気まぐれ」(作詞:ふっくん)の序盤では、メロディの最後が下るフレーズでは女の子の心情、上がるフレーズでは男の子の行動を載せて、主人公の女の子が男の子に振り回される物語を説明しています。

これらのように、メロディの印象に対し歌詞をどう載せるかについては、様々な手法があると思います。普段から音楽を聞くときはそんなところにも気をつけるようにしています。

さらに、サビパートは最後の落ち着くところまでに、盛り上がりの絶頂に至る部分、「キメフレーズ」があることが多いと考えています。

オリオンをなぞる こんな深い夜
つながりたい 離されたい
つまり半信半疑 あっちこっち

UNISON SQUARE GARDEN「オリオンをなぞる」(田淵智也さん)

上記はUNISON SQUARE GARDENの「オリオンをなぞる」の1回目のサビの頭なのですが、「つまり半信半疑あっちこっち」の部分が、私が考える「キメフレーズ」にあたります。
ここで、
「 【はん】しん 【はん】ぎ あ【っち】 こ【っち】」
と、韻及び頭を揃える連続コンボ技が決まっていることが、とても効果的なのだと思います。ちなみにその前のフレーズも韻を踏んでいます。


ポイント(7):ダブルミーイング、暗喩

歌詞に二重の意味を込めたりするのはやります。
今回の曲ですと、

はためくスカート
走り出した
想いは

「走るスカート」より

の「走り出した」なのですが、上の「はためくスカート」と「想いは」の両方にかかっています。つまり、
「はためくスカート(を履いた女の子が)走り出した」
「想いが走り出した」
の両方の意味があります。

他には、特にえっちな意味を込めるのに使います。暗喩ですね。

命のかけらが爆ぜたら
愛の雫が君を強く満たすよ
僕は君のものだよ
世界が終わっても
この手を離さない

「小さな死」より

この曲は、エロスを裏テーマにしています。そういうふうには聞こえないように作ったつもりです。
プロもよくやりますよね。FLIPPER'S GUITAR「GROOVE TUBE」とか、なんとなくエロいです。

僕の特別なバナナ だらしなく甘い色を塗ろう

FLIPPER'S GUITAR「GROOVE TUBE」(DOUBLE KNOCKOUT CORPORATION)

ダイレクトだと下品になるじゃないですか。なので遠回しに。
聞き手に、「もしかしてこういう意味もあるのかな?」と思われるくらいでちょうど良い場合もあるということです。

逆にインパクトのあるダブルミーイングのプロの例を挙げると、T.M.Revolutionの「HOT LIMIT」です。

ほんものの恋は やれ爽快

「HOT LIMIT」T.M.Revolution(井上秋緒さん)

など、笑っちゃうくらいのもはや駄洒落と言えるようなダブルミーイングの力押しが忘れられないです。
インパクトが大きすぎて、一度歌詞を読むと、そうでないはずの他の箇所もそう連想してしまいます。

ポイント(8):意味がわからないけれどすごい

自分にはとてもたどり着けないのですが、意味わからないけれどすごい歌詞ってありますよね。

羊の夜をビールで洗う
冷たい痛い壁にもたれてるよ
ちゃかしてるスプーキー
みだらで甘い 悪の歌

「ルナルナ」スピッツ(草野マサムネさん)

本当に歌詞の意味がわからないんですけど、何か心に来るものがあります。
「羊の夜をビールで洗う」なんてよく思いつくな、と思います。

夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれにさまよう
青空にのこされた
私の心は夏模様

「少年時代」井上陽水さん

「風あざみ」って何だー!?と叫びたくなりますが、本当に意味がない造語らしいです。
しかし、これで一気に歌詞世界に引き込まれてしまい、意味なんて忘却の彼方へ行ってしまいます。
落ち着いて考えてみるとすごい歌詞なのです。

この2例とも、曲の頭(「ルナルナ」は2番)で、この「意味不明ワード」を持ってきています。

意味がなくても心に伝わるものがある、それを特に冒頭で決めることで、歌詞世界に一気に引き込む、これが作詞テクニックの究極なのではないかと思うのですが、私にはまだまだたどり着けません。(前述のUNISON SQUARE GARDENもそこに長けていると思います)


以上、こんなことを考えて作詞をしています。
他にもいろいろなテクニックがあると思います。
今後も研究していきたいです。


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